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KAAT2019年ラインアップ発表会レポート「劇場は、劇的なるものと出会う場所」

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2019年2月6日(水)に、KAAT神奈川芸術劇場の2019年度ラインアップ発表会が開催された。芸術監督である演出家・白井晃の進行のもと、各演目の主軸を担うアーティストらが登壇。「演劇」関連からは白井のほか、長塚圭史、多田淳之介、松井周、森雪之丞、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、杉原邦生。「美術・キッズプログラム・ダンス」関連より、小金沢健人、渡邉尚、山本卓卓、山田うん。2019年への意気込みをそれぞれ語った。

“東京から近くて少し遠い”KAATという劇場で白井が目指すのは、「アートが複合的である劇場」。“公共劇場の役割とは何か”ということを非常に考えるようになったそうで、「できるだけ、劇場という場所が、劇的なるものを創造し、劇的なるものと出会う場所であるということを考え、今年のラインナップを決めました。特に表現の幅を広げて、できるだけ幅の広い演目・アートをプログラムできたらという思いです」と語った。

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以下、時系列でKAAT2019年のラインアップを紹介する。

◆白井晃演出作品 連続上演企画
『春のめざめ』
2017年に大反響を巻き起こした、“思春期の生と性”を扱った作品が2019年春、新メンバーを加え再演決定。
【日程】4月13日(土)~4月29日(月・祝) 大スタジオ
【原作】フランク・ヴェデキント
【翻訳】酒寄進一【音楽】降谷建志
【構成・演出】白井晃
【出演】伊藤健太郎、岡本夏美、栗原類、ほか

KAAT EXITIBITION 2019
『小金沢健人展 Naked Theatre -裸の劇場-』
世界的に活躍する美術作家・小金沢健人の大規模個展。劇場の持つ構造を最大限活用し今までにない劇場と美術の融合を目指す。
【日程】4月14日(日)~5月6日(月・休) 中スタジオ

◆小金沢健人コメント
白井晃さんの『華氏451』だけを観たような、劇場にうとい者ですが、KAATはそんな門外漢にも門戸を開いてくれました。素人からすると、“劇場”そのものがおもしろい。“劇場”から“舞台”も“演劇”も“芝居”もとっぱらって、劇場をどう演出するか。裸の劇場のポテンシャルを、時間と空間を使って演出したいです。

KAATキッズ・プログラム2019
『KAATキッズ・サマー・パーティー2019 in KAAT高原キャンプ場』
昨夏大好評だった、0歳から親子で楽しめるイベントを再び開催。劇場の中に雨が降ったり、虹が出たり・・・劇場がキャンプ場に変化する!
【日程】5月3日(金・祝)~5月6日(月・休) 大スタジオ

白井晃演出作品 連続上演企画
『恐るべき子供たち』
愛情と憎悪、そして嫉妬に満ちた、思春期の姉弟の歪んだ関係を描いた名作を、演出・白井晃×上演台本・ノゾエ征爾の初タッグにより舞台化。
【日程】5月中旬 大スタジオ
【原作】ジャン・コクトー
【上演台本】ノゾエ征爾
【演出】白井晃
【出演】南沢奈央、柾木玲弥、松岡広大、ほか

KAAT×地点 共同制作第9弾
地点『シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!』
【日程】5月27日(月)~6月2日(日)、7月13日(土)~7月16日(火) 中スタジオ
【テキスト】アントン・チェーホフ
【演出】三浦基
【出演】安部聡子、石田大、小河原康二、窪田史恵、小林洋平、田中祐気、三浦基(映像出演)

◆三浦基(地点)映像コメント
チェーホフの短編小説「シベリアの旅」から立ち上げます。同じくチェーホフの戯曲『三人姉妹』の台詞「モスクワへ!」をもじって「シベリアへ!」というタイトルにしました。チェーホフにとっての理想郷はシベリアなのか、モスクワなのか、ということを考えます。明るく、コント風に描けたらと思います。

『ゴドーを待ちながら』
『カルメギ』で韓国で最も権威のある東亜演劇賞演出賞を受賞し、海外からも注目を集める多田淳之介がベケットの名作に挑む。ただただゴドーという人物を待ち続けるだけの二人という不条理を、2バージョンで上演。
【日程】6月中旬 大スタジオ
【原作】サミュエル・ベケット
【翻訳】岡室美奈子
【演出】多田淳之介

◆多田淳之介コメント
「ベケットの作品は一昨年にも上演していますが、不条理の持つ力は必要。会陰劇を相対化して書いている。演劇の取り扱い方にシンパシーを感じます。劇場の中で起きていることを楽しみ、劇場でやるからこそおもしろい。今回は年代でわけて2ver.を上演予定です。一つは「えらい待ったなあ」という世代の人たち、もう一つは「これから待つんだろうなあ」という世代の人たちです。“待つ”ことは不毛だけれど、可能性があるおもしろさ。スマホなどで連絡が簡単にとれ、待たなくなっている時代にこそ観てほしいです。

『ビビを見た!』
衝撃的なストーリーと色彩感でカリスマ的人気を誇る絵本「ビビを見た!」を松井周が注目の俳優陣で舞台化。
【日程】7月上旬 大スタジオ
【原作】大海赫
【上演台本・演出】松井周
【出演】岡山天音、石橋静河、樹里咲穂、久ヶ沢徹、瑛蓮、師岡広明

◆松井周コメント
子どもの時に読んだらきっとトラウマになっている絵本。盲目の少年が7時間だけ目が見えるようになる代わりに、他のすべての人が盲目になるという週末世界の話。一人だけ目が見える世界で、ビビという女の子と出会う・・・。日本人が現代、同じ方向にワーッと流れていく様子を舞台に乗せられないかと考えて、この作品を選びました。絵本なのに「キッズプログラム」ではないのは、子どもには残酷すぎるから(笑)。キャストの二人は絵本を読んで想像していたようにぴったりです。全員が見えなくなった世界をどう表現するかにこだわりたい。できるだけアナログな作品にしたいなと思います。

KAATキッズ・プログラム2019
『グレーテルとヘンゼル』
昨年のキッズ・プログラムで話題となった、あの有名なグリム童話とはちょっぴり違う二人芝居で。KAATを皮切りに全国7劇場を巡演予定。
【日程】7月下旬 大スタジオ
【脚本】スザンヌ・ルボー
【演出】ジェルヴェ・ゴドロ
【出演】土居志央梨、小日向星一

KAATキッズ・プログラム2019 海外招聘作品
『Loo』ほかもう一本交渉中
スペイン・バレンシア地方の熱い風と、海、大自然のイマジネーションあふれる美しい作品。30分ほどのノンバーバル舞台で、コルクをうまく使った幻想的な世界を造り上げる。
【日程】7月27日(土)・7月28日(日) 大スタジオ

KAATキッズ・プログラム2019
『二分間の冒険』
日本屈指のファンタジー小説を気鋭の演出家・山本卓卓が舞台化。小学6年生の悟が、校庭でふしぎな黒ネコに出会った時から始まる、長い長い“二分間”の大冒険。
【日程】8月中旬 大スタジオ
【原作】岡田淳
【上演台本・演出】山本卓卓(範宙遊泳)
【出演】百瀬朔、佐野瑞稀、下川恭平、亀上空花、小林那優、若松武史

◆山本卓卓コメント
この作品は、ファンタジー小説の定型であり、王道。そこに恋愛や、友情や、老いや、若さがあり、豊かなものになっています。実際の出演者も小学生で、オーディションで選びました。こちらが何か指示をしても「はい」と言わずに眉をひそめているような子を選びました。松井さんは「できるだけアナログで」と言いましたが、僕はできるだけデジタルにしたいです。けれども、演劇でデジタルをやるとアナログになりますので、「アナログじゃん!」とツッコんでいただければ。

新作ミュージカル『怪人と探偵』
中川晃教、加藤和樹、大原櫻子とミュージカル俳優たちを迎え、作詞家の森雪之丞と白井晃がタッグを組んだ新作ミュージカルを上演。大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎が華麗に対決する江戸川乱歩の作品を日本オリジナルミュージカルに仕上げる。
【日程】9月14日(土)~9月29日(日) ホール
【原案】江戸川乱歩
【脚本・作詞・楽曲プロデュース】森雪之丞
【テーマ音楽】東京スカパラダイスオーケストラ
【作曲】杉本雄治(WEAVER)
【演出】白井晃
【出演】中川晃教、加藤和樹、大原櫻子、ほか

◆森雪之丞コメント
15年くらい前から演劇の世界にも入れていただき幸せです。しかし、ミュージカルは輸入品が多く、それは音楽でいえばカヴァー。そろそろ日本独特なものを創れないかと構想し、誰にも頼まれないのに第一稿を書き上げてから4年が経ちました。僕は作詞家ですから、ミュージカルは音楽だと思っています。台詞では言えないことを歌にするということを武器に、僕のポップな部分を、白井さんがどんなアートな世界にしてくれるのか。日本のオリジナルミュージカルの歴史が始まった、と言われる作品にしたいです。

KAAT DANCE SERIES 2019 日仏コラボレーションプロジェクト
頭と口×Defracto『妖怪ケマメ:L’esprit des haricots poilus』
ダンス、ジャグリング、サーカスの垣根を越え各界から注目を集めるカンパニー「頭と口」の日仏国際共同製作による新作上演。KAATで初演後は、世界ツアーも決まっている。
【日程】10月 大スタジオ

◆渡邉尚コメント
ジャグリングとは、ヨーロッパの現代サーカスの中でもいま一番熱いジャンル。普遍性があり、日本ではケン玉、お手玉、なわとび、ケマリなどジャグリングの要素があります。そして、今回コラボするギヨームは、こんなに良いジャグラーは観たことがないなと思うパフォーマーです。この作品のための新しいジャグリング文化を創りたいですね。

KAAT DANCE SERIES 2019 韓国国立劇場×テロ・サーリネン
『VORTEX』
フィンランドを代表する振付家テロ・サーリネンが、韓国の名門・韓国国立舞踊団の委嘱により振付した代表作を日本初上演。非常に技術が高く、世界中をまわっている作品の招聘公演となる。
【日程】10月 ホール
【作品制作&出演】韓国国立劇場舞踊団
【振付】テロ・サーリネン

『ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~』(仮)
【日程】11月 ホール
【作・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ

◆ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント
僕はカフカや別役実さんの作品が好きだけれど、お客さんは「難しい」とおよび腰になるかもしれません。でもずっとやりたかったので、KAATから話をいただいてまんまと上演することに(笑)。KAATは自由度が高い劇場です。客席の形状も非常にいろんなことができる、なかなかない空間。フリースペースではなく劇場でここまで改造できる場所はありません。すごく間口が広いものをやるつもりはありませんが、僕がやるとそこそこ間口が広いものになるでしょう。おもしろいものにします。

KAAT・KUNIO共同製作
KUNIO15『グリークス』
『オイディプスREXXX』で初めてギリシャ悲劇に挑戦した杉原邦生が、今回は長編戯曲『グリークス』全三部を連続上演。普通に上演すれば9時間ほどかかる巨大な作品に挑む。
【11月】大スタジオ
【演出・美術】杉原邦生
【翻訳】小澤英実

◆杉原邦生コメント
蜷川幸雄さんの『グリークス』を観た時に「こんなに長いものがあるんだ!長くても見続けられる(面白い)んだ!」と思い、劇団を立ち上げた時から「やろう!」と決めていました。これまでも8.5時間、6時間、5.5時間と、長い作品を上演してきています。今回も長いですが、新訳で、瑞々しく、堅苦しくない作品にする予定です。

『常陸坊海尊』
【日程】12月 ホール
【作】秋元松代
【演出】長塚圭史

◆長塚圭史コメント
(この作品に)あまりに惹かれてしまったので「やる」という決断はしてしまったのですが、大変なものを引いてしまったなと(笑)。なかなか奇妙なお話で、源義経が死んだ平泉の戦いで戦っていった常陸坊海尊という僧兵が現代まで生き続けた、という、ちょっと奇妙な構成になっています。この戯曲は、秋元松代さんの素晴らしい文体と、日本にある民間伝承などの数々の不思議をとても見事に汲み取って現代劇に仕上げた作品。“命”というもの、人間の“霊”というものが知らず知らずのうちに繋がっていく力強い物語が詰まっている作品です。

KAAT DANCE SERIES 2019
『NIPPON・CHA!CHA!CHA!』
振付家・ダンサー山田うんが演劇に初挑戦。如月小春没後20年の2020年に、「ダンス版」「演劇版」の2本を同時上演する。物語は、高度成長期の日本で、オリンピックを目指してマラソンランナーになり走る男を描く。
【上演時期】2020年1月 大スタジオ
【作】如月小春
【振付・演出】山田うん

◆山田うんコメント
バブルが起こった30年前、高度経済成長のカルガリーオリンピック(1988年)を描いた本作の時代に共感し、この作品を「ダンスでやりたい」という気持ちと「しっかり演劇としてやりたい」という思いがわいてきました。私は山一証券に入社して、倒産を体験しています。バブルを全力で感じて、全力で失いました。身をもって知っているバブルの時の希望と絶望を身体(ダンス)で体現することと、如月さんの戯曲での両方で上演し、同時に味わえたらと思います。

『アルトゥロ・ウイの興隆』
ヒトラーをシカゴのギャング団のボスになぞらえた寓話劇を、ショースタイルの音楽劇として白井晃が再構築。
【上演時期】2020年1月 ホール
【作】ベルトルト・ブレヒト
【演出】白井晃

◆白井晃コメント
毎年ブレヒトを上演したい。ヒトラーはやはりこの時代にやりたい。独裁者が時代に登場するのは、求める群衆がいるから。そのことを、できればソウルミュージックやファンキーミュージックなど音楽劇で表現します。

国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2020
【上演時期】2020年2月8日(土)~2月16日(日) KAAT神奈川芸術劇場ほか ※予定

<シリーズ企画>
「SHIRAI’s CAFE」(不定期開催/入場無料/事前申込不要)
2017年夏より始まったシリーズ企画「SHIRAI’s CAFE」。自身も音楽に親しむ芸術監督・白井晃が、ゆかりのある音楽家をゲストに迎え、ゲストの演奏とトーク、白井自身の歌もはさみながら、リラックスした雰囲気で楽しむ無料イベント。

◆提携公演
地点『三人姉妹』(7月)
快快『新作』(9月)
庭劇団ペ二ノ『笑顔の砦』(9月)
Baobab『ジャングル・コンクリート・ジャングル』(12月)
DULL-COLORED POP『マクベス(仮))』(12月)
別冊「根本宗子」『そのバレリーナの公演はあの子のものじゃないのです。(English ver.)』+新作公演(2020年1月)
カンパニー・デラシネラ『どこまでも世界(仮)』(2020年2月〜3月)
OrganWorks『HOMO』(2020年3月)
笠井叡『-DUOの會-』(2020年3月)

<その他主催公演>
劇団四季 ミュージカル『パリのアメリカ人』
【上演時期】3月19日(火)~8月11日(日)

(取材・文・撮影/河野桃子)

(文/エンタステージ編集部)

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