『江戸川乱歩・作/日記帳』伊万里有インタビュー!心の動きにまかせた「読奏劇」

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約1年ぶりに再始動した『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』。11月6日(土)の配信には、伊万里有が登場する。エンタステージは、著作権が消失した国内外の名作小説・童話を題材に、音楽のMusic Videoのような演出を施した配信特化型朗読劇の撮影現場に密着してきた。本記事では、収録を終えた時の伊万里の声をインタビューとしてお届けする。

シリーズコンセプトに「自分と似ている」とシンパシーを感じたという伊万里。監督の描きたい“新解釈”についても、“素材”としてカメラの前に立ちながら、自らも作品の解釈を深めるためのアイデアを出すなど、作り手とのセッションを楽しんでいるように見えた。「読奏劇」に取り組む中で、伊万里はどんなことを感じていたのか?話を聞いた。

――撮影を終えて、いかがでしたか?

いい作品になったんじゃないかなと手応えがありました。早く観たいですね。出演のお話をいただいた時、プロデューサーも監督も以前からお世話になっている方だったので、僕が自分で直接お話を伺ったんですよ。先に音声版をやらせていただきましたが、耳から聞いた物語を、改めて目で見るというのは、あるようでなかった気がして。実際、撮影をしてみて、新しいことをやっていると思った感覚は間違っていなかったなと思いました。

――「読奏劇」は、昨年のコロナ禍で誕生した企画なのですが、他の方の作品はご覧になりましたか?

はい。それぞれ拝見しました。1年前にやってた役者仲間から「大変だよ~」という話も聞かされていました(笑)。だから、撮影前はめっちゃ身構えていたんですよ。撮影前日も、寝る前に「もう一回読んでおこう」と思って本を手に取ったんですけど・・・。

この話、読み進めるとどこか怖さが漂ってくるじゃないですか(笑)。だから、なんか怖くなってきちゃって「小細工しないで、その場の空気感でやったれ!」と腹をくくってスタジオで読み始めてみたら、想像よりも僕の肌感覚に合う現場で、ものすごくやりやすかったです。

――いい意味で、すごくライブ感を感じました。

撮影の前に、「読みながら、時々視線をどこかへやってほしい」と言われたので、本に目を落とすばかりにならないようにしようと意識していたんですが、途中から、あんまり見せよう見せようと思わない方がいいなと思って、その時の感覚で動いていたのが、ライブ感につながったのかも。エチュードともまた違うんですが、心の動きにまかせて余計なことはしないでおこうした結果です。

――聞いていたよりは、大変ではなかったですか(笑)?

一つだけ・・・椅子がね、揺れるんですよ。ピッタリしたスーツを用意していただいたので、お腹が出ないようにするのに必死でした。それがすごい集中力につながったのかもしれない。あとは、目が良くて良かったと思いました。照明に当たるとね、文字が見えないんです。朗読なのに読めない(笑)。それくらいかな?

――この「日記帳」は江戸川乱歩作品ですが、ご存知でしたか?

いえ、この「日記帳」は今回初めて触れました。今、内容をすべて知った状態だから言えることだと思うんですけど、このタイトルからはたどり着かない結末を迎えるお話ですよね。最初に読んだ時「そっちに行くか?!」って驚きましたもん。

それから、一回目に読んだ時と、二回目に読んだ時に見える景色が全然違うこともおもしろい点ですね。そういう意味では、先にやらせていただいていた音声版の「読奏劇」の時とは違う形で作品に引き込まれていく感じがしました。映像としてもやらせていただけて良かったです。

――「音声版」はどのような感覚でしたか?

スタジオで声だけを録るというのは、めちゃくちゃ不思議な感覚でした。今までで一番難しかった・・・難しいを通り越して、苦手なのかもしれないと思っちゃうくらいでした。声優さんはすごい!って改めて思いましたね。音だけですべてを伝えなければいけないという意識を一番に持っていたんですけど、があるから、今振り返ると、音を録るあの空間が自分の部屋みたいになれば、一番よかったのかなと思いました。それにしても不思議な経験でした。

――映像版になることで、伊万里さんの声の良さと、俳優さんとして放つ魅力を改めて感じることができました。

それはおちゃらけちゃうところも含めて(笑)?声のお芝居にも興味はあるにはあるんですけど、畑が違うというか、やはり自分は動いてなんぼだと思っていたので、そう言っていただけて何よりです。同じ作品を声だけの芝居と、映像の芝居として経験できたことで、表現の多面性を感じることができて、いい経験をさせてもらいました。

――今回、監督からは「兄」として読んでほしいというオーダーがあったと聞きました。

そのオーダーをいただいて、「弟を亡くした」という経験をした「兄」の心を、すごく考えましたね。「兄」は、弟の書斎で見つけた“日記帳”を読むという選択をするわけですが、人間、誰しも人の心を知りたいという欲求を持っていると思うんです。人間に本来備わっているものとして。

ぶっちゃけ、兄って弟に対してはたいてい上目線だと思うんです(笑)。書かれているわけではないですが、もしかしたらこの「兄」はプライドが高い男かもしれないし、理屈屋かもしれないし、兄自身の心にも秘めたる想いがあったかもしれない。この「兄」の選択をしっくりくるように表現するには・・・そう追求するのも、エンターテインメントだなと思いました。

――今回のラストシーンは、言葉では描かれていない監督の“解釈”として演出されています。この部分については?

監督とは何回もご一緒させているのですが、僕のことをよく分かって作ってくださっているんだなと改めて感じました。これ、音声版ではできない作り込み方ですよね。演じていてもすごく楽しかった。映像のいいところがちゃんと形になるだろうなと思いました。

監督の“新解釈”も、作品が書かれてから50年経っているからこそ、注がれる新しいアイデアだと思うし。僕も、最初に「こうします」と聞かされた時は、「えっ、そうくる?!」って驚いたんですけど、確かに、文字に綴られた世界の外を考えたら、ああいうゴールもあるのではないかなと。

――伊万里さんからも、ご提案されているところもありましたよね。

「ウィスキー」のことですね。サイドボードに小道具として用意されていたんですけど、「兄」があれを「飲むのか」。また、飲むとしたら「どう飲むのか」。そこもストーリー性を考えながらやることで、より物語が深く見えるのではと思ったんです。

でも、映像作品はあくまでも僕は素材。その素材をどう調理してくださって、どんな味になっているのか、すごく楽しみです。出来上がらないと、意図したことが伝わっているのか分からないし、何より観ていただく方々がいて、成立するものなので。

――この企画は、配信を視聴者の方と一緒にご本人が観る、というのも一つの特長になっているんですが。

お客さんと同時に見るっていう経験は、今までないかもしれないなあ。これ、事前の確認とかみんなどうしてました?

――もちろん事前にご本人がチェックしてくださる場合もありますし、マネージャーさんが確認して、ご本人は配信で初見という方もいらっしゃいました。

じゃあ、僕も初見にしよう。プロデューサーを信頼して(笑)。クオリティは間違いないと、作ってくださる皆さんを信じているので。

――伊万里さんは、ご自身でいろんなことを決めて切り開いていらっしゃっていきますね。

そうですね。自分で決めていくというのは、大変な部分もありますけど、やりたいことを自分で責任を持って実現まで持っていけるのがいいところかなと思っています。この半年間、怖いくらい実現しかしていないんですよ。今の時代に合った動き方をしているだけなんです。何でも屋さんです(笑)。

コロナ禍でみんな痛感したと思うんですが、僕らの仕事って保障されていないんです。ずっと勝ち続けられればいいけれど、勝ち続けられなかった時どうなるのか。夢と言えるのは何歳までか。でも、夢を実現したら自分でそういう場所を作ればいい。もしかしたら、俳優という枠組みではないと言われるのかもしれないけれど、俳優はこうであるという定義もないですから。

――この「読奏劇」も、コロナ禍で表現の可能性を探った作品です。

プロデューサーさんとはもともと音楽の方面で出会ったんですが、大変な状況の中で新しいことを生み出されたことに、そうあるべきだなと感動しました。僕もブランドをやったりしていますけど、他のジャンルのことももっとやっていきたいですし。何よりも好きだなと思ったら「やりたいです!」ってすぐ言いますし。人材育成とかも興味があります。生き方を変えることを恐れず、変わっていかないとって思ってます。

――そんな伊万里さんにとって、この作品はどんな位置づけになりそうですか?

このシリーズのコンセプト、自分と似ているなと思うところが多くて。共感したこと、「こうしたい」と思ったことを、今の伊万里有として表現しつくせたかなと思います。「日記帳」というおもしろい話も知ることができましたし。自分の知らない世界なんて、この世に数え切れないくらいあるんですよ。一つの運命的なものだったと言えると思います。

「本を読む」上でも、電子化が進んでいる今、形としての「本」も必要かということも問われる時代です。でも、やっぱり紙の本に触れるから分かることもある。皆さんも、これを観て、自分の目で読みたいなと思ったら、電子書籍で読むのもよし。紙の質感を味わいたいなと思ったらアナログな本を買うのもよし。

僕がこの「読奏劇」に出ることで、僕を応援してくれている皆さんに、この「日記帳」はもちろんほかの出演者の方が読む世界にも興味を広げて、自分の知らない世界にどんどん触れていってもらえたらいいなと思います。そういったことを楽しめるのもシリーズ作品の良さだと思うので。今、いいこと言った(笑)。

『Dream Stage -読奏劇-』配信概要
【出演者】伊万里有/梅津瑞樹/櫻井圭登/田村心
※50音順

【チケット販売】
イマチケ:https://ima-ticket.com/dreamstage02
チケット代:各回3,000円(税込)
※アーカイブ配信あり

#09 櫻井圭登_朗読『新美南吉・作/手袋を買いに』
配信日:10月23日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/301

#10 伊万里有_朗読『江戸川乱歩・作/日記帳』
配信日:11月6日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/302

#11 梅津瑞樹『太宰治 作/猿ヶ島』
配信日:12月20日(月)21:00~
チケット:https://ima-ticket.com/event/310

田村心『芥川龍之介 作/杜子春』
配信日:未定(後日発表)

<Twitter>
【読奏劇 公式】https://twitter.com/dokusogeki
【企画制作・ドリームライン公式】@dreamline_inc
<YouTube>
【ドリームライン公式】
https://www.youtube.com/c/Dreamlineinc

※2020年「読奏劇」ダイジェスト&予告
※音声版・読奏劇「読奏劇×ListenGo」試聴音源
各種コンテンツ公開中

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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