俳優の黒木瞳が企画・演出を手がけた舞台『甘くない話~ノン・ドサージュ~』(以下、『甘くない話』)。2021年11月7日(日)に日経ホールにて東京公演の千秋楽を迎え、11月13日(土)には大阪・松下IMPホールで昼夜2公演を予定している。黒木は近年、映画監督としても活動しているが、本格的な舞台の演出はこれが初。村井良大を主演に迎え、「人の痛みを知り、優しい気持ちになれるような愛が溢れた舞台を」という黒木の思いを物語に込めた。
『甘くない話』は、料理家・蘭子の死の真相に迫る、謎解きヒューマンエンターテインメント。黒木が企画し、西田征史と吉崎崇二が脚本を担当した。キッチンスタジオでアナフィラキシーショックを起こして亡くなった蘭子。その死からちょうど1年後の2021年12月26日、赤い招待状を受け取った6人の人物が蘭子のキッチンスタジオに集まってきた。いずれも蘭子殺害の疑いがかけられる6人の登場人物は、それぞれが人に知られたくない秘密を抱えている。そもそも蘭子の死は事件だったのか、事故だったのか。殺されたとすれば、犯人はこの中に──?
出演は、村井のほか、高崎翔太、馬場良馬、西野太盛、蘭乃はな、市川九團次、そして遊佐航。物語の進行とともに登場人物の個性が解き放たれ、またその印象も変化していく。テンポの良い会話の応酬が心地よく、様々な舞台で活躍が目覚しい村井や高崎、馬場、歌舞伎俳優である市川や、元宝塚歌劇団の蘭乃など、バックボーンの違う俳優たちのケミストリーが楽しい。個々の俳優の新たな一面も垣間見られる、キャスティングの妙にも唸る。
ストレートプレイだが劇中歌もある。いずれも黒木が作詞を手掛けた。振付は「ラッキィさんしか思いつかなかった」という黒木の提案によりラッキィ池田に依頼。そんな歌唱シーンも見どころのひとつだ。細部までこだわりぬいた、舞台美術、プロジェクションマッピングにも注目したい。
謎解きの要素とエンターテインメント、シリアスさと笑いのバランスが絶妙なバランスで混ざり合い、歌と踊りも含まれる贅沢な舞台は、タイトルどおり切ない苦みも残るが、それ以上に心が温もる。見終わったあとは、きっとノン・ドサージュ(糖分を補わずに醸造した)のシャンパーニュが飲みたくなるはずだ。なお、劇中で小道具として使われているシャンパーニュは実際に黒木が愛飲している銘柄だという。
『甘くない話~ノン・ドサージュ~』大阪公演は、11月13日(土)に大阪・松下IMPホールにて。上演時間は1時間40分を予定。
『甘くない話 ~ノン・ドサージュ~』公演情報
スタッフ・キャスト
【企画・演出】黒木瞳
【脚本】西田征史 吉﨑崇二
【振付】ラッキィ池田
【出演】
村井良大/高崎翔太 馬場良馬 西野太盛 遊佐航 蘭乃はな/市川九團次
【東京公演】2021年11月3日(水)~11月7日(日) 日経ホール ※終了
【大阪公演】2021年11月13日(土) 松下IMPホール
【公式サイト】http://www.zen-a.co.jp/amakunai/