2021年7月6日(火)東京・世田谷パブリックシアターにて気鋭の劇作家ワジディ・ムワワド作“「約束の血」4部作”シリーズ中でも集大成と言える大作『森 フォレ』が開幕した。
ムワワド作の代表作である“「約束の血」4部作”は家族をテーマに扱った作品群で、その中の一作が2006年に創られた本作。演出は『炎 アンサンディ』、『岸 リトラル』を数多くの演劇賞受賞へと導いた上村聡史が務める。
出演は成河、瀧本美織のほか栗田桃子、前田亜季、岡本玲、松岡依都美、亀田佳明、小柳友、大鷹明良、そして岡本健一、麻実れいら。このほど初日を迎えた上村とキャストからコメントが届いている。
コメント紹介
◆上村聡史(演出)
十年前にこの戯曲に惹かれ、そしてその間に高い壁であることを理解しながらも、改めて今日ワジディ・ムワワドという作家の凄さを再認識し、自分が目指したかった演劇は間違いでなかったことを劇場に集った全ての方々が証明してくれた、そのような初日でした。
それは、11人の出演者たちをはじめとするカンパニーの皆 が、この状況下、勇気を振り絞って劇場にご来場されたお客さまとともに 140 年もの時間を旅し、世界に押し潰された声を、自分自身で押し潰してしまった声を、共に血の滲む思いで掬い上げ、劇場が怒りと喜びで一体化できたこと、このことに尽きます。
決して「楽しい芝居」というシンプルな言葉では表せない作品ですが、この混迷の今だからこそ、『森』の中にうごめく声たちが、皆さんの心を解放してくれると思います。ぜひ、劇場で体験いただけたら何よりです。
◆成河
幕が開くまでは、お客様はこの物語をどのように感じてくれるのだろうかと不安を感じていました。 でも今日初日の 公演で、お客様 が素直にこの物語を受 け止め、ついてきてくださったおかげで、 演じている僕自身もよりこの物語への理解度が高まるという、貴重で稀有な体験をしました。
上村さんにはずっと見えていたであろうロジックのおかげで、この戯曲に立ち向かうことができました。上村さんが与えてくれた武器を手に、最後の最後まで感覚を研ぎ澄ませて、この舞台を務めたいと思います。
◆瀧本美織
個人的には舞台が三年ぶりでして、世の状況も相まってお客様の温かい拍手と表情に心から感動しました。劇場に赴き、壮大な旅を共にしていただいたことに 感謝致します。諦めずルーという役に立ち向かってきて良かったと思えた瞬間でした。
また、上村さん、スタッフさん、素晴らしい先輩方と今作で出逢えて幸せです。魂を込めてルーを生き抜きたいと思います。
◆栗田桃子
なかなか
落ち着かない状況の中で、無事に初日を迎えることが出来たこと、 そして何よりも劇場まで足を運んで、観てくださったお客様に感謝の気持ちでいっぱいです。 ありがとうござい
ました。生の舞台だからこそ伝えられるものがあると思います。劇場は、感染対策を万全に期してお客様をお待ちしています一人でも多くの方に観て いただ きたいです。ぜひ、観にいらしてください。
◆前田 亜季
幕が開き、お客様と共にエネルギーの交換をしながら熱量が上がっていく体感がありました。板の上でも、袖で舞台を見つめている時も、心に突き刺さる言葉が沢山あります。そして舞台上でそれぞれの役として生き、バトンを渡し繋いでいく事にも心震える初日でした。
全てを理解するというのは難しい芝居なのかもしれませんが、その瞬間の光、言葉など、ハッとするような美しさのある作品だと思います。心に引っかかる瞬間があると嬉しいです。劇場に足を運んでくださったお客様に心から感謝します。日々深めて進んでいけるよう、毎日精一杯やりたいと思います。
◆岡本 玲
初日を終えて、やっとこういう作品だったんだと全貌が見えました。すごく良い緊張感をもって観てくださる空気が伝わってきて、もっとこの作品空間をお客さまの方に広げていけるよう
に・・・と、お客さまへの感謝の思いで動かされた部分が大きかったです。
前情報でちょっと難しそう な作 品かもと思う方も、劇場に来て生でこの作品を感じてもらえたら、きっと自分の人生が 、家族など 大切なものと結びつく何かが 見つかると思うので、ぜひ怖がらずに観に来ていただけたら心から嬉しいです。
◆松岡依都美
カーテンコールでお客様がスタンディングオベーションをしてくださって、 こちらが感動してしまいました。皆さん凄い集中力で 観てくれていて、 お客様のリアクションでこちら側ものってくる感じがありました。
客席からエネルギーを感じて、やっぱり演劇はお客様が入って完成するんだと再確認させてもらいました。観ていて色々な感情が出てくる作品だと思うので、こういう世の中だからこそ、 この作品を観て色々な気持ちを発散してもらえたら良いなと思います。
◆亀田佳明
外出にリスクを伴う中、劇場にいらして下さいましたこと感謝申し上げます。緊張の初日でしたがお客様の集中力に支えられ、その反応や空気に気付かされることが多くあり、作品を共有している喜びを感じました。役を通して、人間の心根の深さ、不確かさを考え続けています。少しでも深部に触れることができたらと思います。
◆小柳友
こんなに喜びに満ちた笑顔でおつかれさま!と言えたのは想像以上で、皆で乗り越えることができて良かったと、本当に思いました。初日のお客さまの優しさはもちろん、スタッフの方々の感染対策のおかげで舞台に立てたから こそ、 スタンディングオベーションをいただけたのだと思います 。コロナ禍で心が本当に疲れていく今だからこそ、皆さんに作品でメッセージを届けたいです。
◆大鷹明良
この舞台をお客様と一緒にできたということは、お客様と一緒に3時間強、 140年にわたる旅をしたな、という感覚です。非常に素晴らしいお客様たちで、本当に安心して舞台に立てました。
このコロナ禍でこれだけのお客さんに来ていただ き、そして真剣に観ていただ いて、僕ら もそれに応えることができて本当に良かったと思います。明日以降いらっしゃる お客様も、ぜひ一緒に旅をしましょう。
◆岡本健一
壮絶な状況の中、懸命に生きる登場人物たちが織り成す家族・友人たちとの絆の強さに、 自分自身がもっと懸命に生きなければいけないなと感じさせられました。
ワジディ・ムワワドが紡ぎだす独自の世界観と、美しい言葉の中には、これからの世界を築いていく若い世代への痛烈なメッセージが込められています。言葉では伝えきれないこの世界観を、ぜひ皆様にも体感していただきたいです。劇場では、物語の世界にすぐ浸っていただけるような環境を作り上げています。 キャスト・スタッフ共に万全を期しています。ぜひ、『森フォレ』の世界にお越しください。
◆麻実れい
お客様が、この物語の時空を超える長い旅を私たちと共に過ごしてくださったことを実感 いた しました。カーテンコールでスタンディングオベーションをいただけたことにも感動しました。
この壮大な物語を千秋楽まで演じ遂げられるよう、努めたいと思います。豊かな、素晴らしい作品に出会えたこと、素晴らしい仲間たちと演出家に出会えたことに感謝しています。幸せです。
『森 フォレ』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2021年7月6日(火)~7月24日(土) 世田谷パブリックシアター
【名古屋公演】202年7月28日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
【兵庫公演】2021年8月7月(土)・8月8日(日・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
キャスト・スタッフ
【出演】
成河 瀧本美織 /
栗田桃子 前田亜季 岡本玲 松岡依都美 / 亀田佳明 小柳友 大鷹明良 /
岡本健一 麻実れい
【作】ワジディ・ムワワド
【翻訳】藤井慎太郎
【演出】上村聡史
【公式サイト】https://setagaya-pt.jp/performances/202107mori.html
(『森 フォレ』撮影/細野晋司)