2021年2月25日(木)に帝国ホテルで行われた「第28回読売演劇大賞贈賞式」。本レポートでは「最優秀演出家賞」を受賞した藤田俊太郎のスピーチを紹介する。藤田は、『天保十二年のシェイクスピア』『NINE』『VIOLET』の3作における演出を高く評価され、選出された。
藤田は、蜷川幸雄の演出助手を務めながらその手腕を磨き、2015年に『The Beautiful Game』の演出で「杉村春子賞」(第22回)、2017年に『ジャージー・ボーイズ』の演出で「優秀演出家賞」(第24回)を受賞。「最優秀演出家賞」を受賞するのは、これが初めて。
脚本と音楽を読み解く力と、得意とする立体的な創作で、井上ひさしの戯曲と2つの新作ミュージカルを演出。「どう生きるか」を観客に問いかける3作で、コロナ禍でも演劇の力を示し続けた。また、『天保十二年のシェイクスピア』『NINE』は優秀作品賞を受賞している。
トロフィーを手にした藤田は、優秀作品賞の受賞に触れ、「この賞はカンパニーメンバー全員と一緒にいただいたものです。コロナ禍でこの授賞式への出席はままなりませんでしたが、カンパニー一同を代表して、皆様に熱く御礼申し上げます」と挨拶。
中止・延期が相次いだ2020年。藤田が関わる作品についても、104公演が休止になったが、「たくさんの人がつらい思いをした昨年、それでも前を向いて、大切なカンパニーの仲間たちと無我夢中で作品作りに励みました。上演や配信を待っていてくださる大切なお客様がいらっしゃったからこそ、明けない夜はない、劇場に光はあるのだと信じることができました。緊急事態舞台芸術ネットワークを始め、演劇に携わるたくさんの方に助けられ、支えられ、無事に上演をすることができました」と感謝の意を示した。
また、昨年6月以降、多くの作品を観劇する機会に恵まれたそうで、「どの作品も力強いエネルギーに溢れていました。このような厳しい状況の中でも、新しくて力強いエネルギーを持った作品がたくさん誕生していることを実感しております」と振り返り、「これからも私が最も愛する世界で、演出を通して希望の言葉を発信していきたいと思っております。それが、このような素晴らしい賞をいただいたことへの感謝に繋がると思っています」と、力強い言葉でスピーチを締めくくった。
藤田は、昨年手掛けた作品のうち、再演を除くすべてが受賞の対象作となった。台本、音楽、そして俳優との対話を深め、藤田は今後も真摯に追求した作品を見せ続けてくれることだろう。
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