2020年10月21日(水)から上演される、恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』。俳優の“言葉”と、アニメーション、音楽を有機的にリンクさせ、舞台だからこそ実現される特別な体験を目指し、2018年にラブストーリーの朗読劇シリーズとして始まった《恋を読む》シリーズの第3弾では、映画『君の名は。』で話題をさらった新海誠監督の美しくも切ないアニメーションの金字塔『秒速5センチメートル』を朗読劇として初めて舞台化する。
互いに惹かれ合いながらもすれ違い、結ばれることのない運命の男女の切ない恋を描いたこの傑作ラブストーリーを朗読劇で描いていく。今回、本作で遠野貴樹役を演じる海宝直人、黒羽麻璃央にインタビューし、本作の魅力や初対面だというお互いの印象などを聞いた。
――出演が決まった時のお気持ちと、本作の印象を教えてください。
海宝:モノローグが多い作品で、内面が繊細に描かれているんですけど、言葉でというよりは空気感で伝えているのかなと思い魅力的だなと思いました。それを朗読劇としてどうやって伝えていくんだろうと興味深くて、とても楽しみでした。
黒羽:『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2019年)に2度出演し、恋を読むシリーズへの参加はこれが3度目なんですが、恋を読むシリーズにぴったりの作品だと思いますし、新海監督の映画の中でも生身の人間が演じるにはぴったりの作品なんじゃないかなと思います。そんな作品で遠野貴樹を演じることが出来て非常に楽しみです。
――お二人は初対面ということですがお互いのご印象は?
黒羽:(取材時が)初めてましてなんですけど、とある先輩から「海宝さんと似てるね」と言われることがあって・・・。
海宝:光栄です。
黒羽:古川雄大くんから「似てる」って食事の場などで言われて、僕は嬉しいなと思って生きてきたんですけど。
海宝:(笑)。僕は、お名前がすごいかっこいいなと思っていました(笑)。実際お会いしたらとても気さくで。あと、声がすごく素敵ですね。今回は共演とは違いますが、同じ作品でご一緒できて嬉しいです。ちなみに公演中止になってしまって残念だったのですが、ミュージカル『エリザベート』をすごく楽しみにしていたんです。いつの日か拝見できるのを楽しみにしています。
黒羽:ありがとうございます。いつの日か!実は先ほどspiくんとばったり会って「今日海宝さんと一緒なんです」って言ったら「海宝くんはレベルが違うよね」「次元が違うよね」って言ってて。
海宝:いやいや・・・、会ったら喧嘩しかしてないんだけど(笑)。
黒羽:(笑)。なので、お会いできて本当に僕も嬉しいです。同じ役でも一緒に組む方が違うので、それぞれのチームで違う色を出していけたらいいですよね。
海宝:そうですね。それぞれのチームで作っていくということで、声優さんやミュージカルでも違う演出家の方を経験されていたり、チーム毎に個性の違う方々がいらっしゃるので、やるのも楽しみですし、個人的には他の組の回を見られるのもすごく楽しみです。
――お二人は、演じる遠野貴樹をどんな人物と捉えていらっしゃいますか?
海宝:非常に繊細なキャラクターという印象です。特に、朗読劇においては言葉が多い人物ではないので、どうやってキャラクターとして膨らませていけるかなと・・・。黒羽さんは以前にこのシリーズを経験していらっしゃるのでぜひその部分をお伺いしたいですね。朗読劇っていろんなスタイルがあるから、このシリーズでは演出も含めてどのように作り上げていくのが良いのか、お伺いしたいです。
黒羽:前回は動きが多かったかなと思います。朗読劇の距離感も演出していただいていて、心の距離が近づけばどんどん身体的にも近づいたり。
キャラクターとしては、貴樹というか・・・男の方が初恋に関してとか未練たらたらになりがちなのかなと思いました(笑)。女性の方がさっぱりと切り替えていけるのかなと。フィクションの世界だと紆余曲折を経て初恋が実ってハッピーエンドという方を観ることが多くて、それはすごく感動的で素晴らしいんですけど、今作では初恋が実らずに終わるという・・・現実だとそういうことの方が多いと思うのですごいリアルで心に響くなと思いました。
海宝:ズルさも含めて、生々しいと言うかリアルで良いですよね。第二話で引っ越した後のお話も、女性から見ると「はっきりしろよ!」ってイライラしちゃうところも描写されているのがリアルで。それを生身の人間が読むからこそ生まれる温度感と言うものを伝えていけたら良いなと思います。
――新型コロナウイルスの影響でオンライン配信や朗読劇など、演劇でさまざまな広がりを見せてますがこの状況をお二人はどのように見られていますか?
海宝:こういう事態になったからこそ新しい試みが行われて、朗読もコンサートも、配信もそうですけど、新しい形の演劇みたいなものが試されて生まれているのがすごく面白いなと感じています。演劇やエンターテインメントって、今に限らず昔からいろんな経験を経て新しいものが生まれ広がっていったものだと思うので、残念ながら公演中止になってしまうなどのネガティブな面もありますが、ポジティブに捉えて新しいことに挑戦してそれに参加していけるのは幸せなことでもあるなと思います。
黒羽:こういうことがあって、一致団結感が増したなと思うようになりました。舞台で活動している皆さんが“演劇を救おう”と思いを持って、今までにない協力体制になっているんじゃないかなって。役者もそうですけど、制作会社の方やスタッフの方々、“舞台の灯を消さないぞ”という思いが再認識できて嬉しかったです。改めてみんな舞台を愛する人間たちなんだ!って感じることが出来ました。
――今回の公演も、演劇を愛する方々に広く届くとよいですね。最後に、公演を心待ちにしている皆さんへメッセージをお願いします。
海宝:全く同じ経験でないにしても、みんながそれぞれ甘酸っぱく、忘れられない思いを経験していると思うので共感していただける内容になっていると思います。こういうご時勢の中で集まって飲み会をしたり、僕らで言うと終演後にご飯に行って話をしたりということがなくなって、人とコミュニケーションをとる機会が減ってしまっていますが、作品を通して思いを共有したり、物語を追いながら共感したり、そういうことを感じるだけで癒されるのではないかなと思います。そんな公演にできるようにがんばりたいと思います。
黒羽:『秒速5センチメートル』は携帯があまり使われていない時代から始まって、手紙でやり取りをしたり、楽曲で昔を感じられる要素があるのでその懐かしい思いを観てくださった方に共有できればと思っています。フィクションじゃない・・・本当に誰かの実体験をもとに書かれているのかなというくらいのリアルさがあるのでそういうところを感じていただけたら嬉しいです。
公演情報
恋を読むvol.3『秒速5センチメートル』
2020年10月21日(水)~10月25日(日) ヒューリックホール東京
【原作】新海 誠
【脚本・演出】三浦直之(ロロ)
【出演※出演日順】
入野自由×桜井玲香×田村芽実
海宝直人×妃海風×山崎紘菜
前山剛久×鬼頭明里×尾崎由香
梶裕貴×福原遥×佐倉綾音
黒羽麻璃央×内田真礼×生駒里奈
(全日程出演)篠崎大悟(ロロ)、森本 華(ロロ)
【公式サイト】https://www.tohostage.com/5cm/
【公式Twitter】@koiwoyomu_stage
スカパー!オンデマンドで生配信も決定!
<海宝直人>
スタイリスト:橘 昌吾/shogo tachibana
ヘアメイク:三輪昌子/masako miwa
衣裳協力なし
<黒羽麻璃央>
スタイリスト:小渕竜哉/Obuchi Ryuya
ヘアメイク:Ayane(Lomalia)
衣裳協力:MR.OLIVE(WALK IN CLOSET代官山 03-3463-5901)
(取材・文/エンタステージ編集部 3号、撮影/嶋田真己)