シアターコクーン芸術監督に就任した松尾スズキが企画した「COCOON Movie!!芸術監督名作選」の舞台挨拶が、2020年10月6日(火)に行われ、松尾と大竹しのぶ、宮沢りえ、小池徹平が出席した。
今回の企画は、シアターコクーンの過去作品の収録映像を蔵出しして上映するもの。松尾がこの20年間にシアターコクーンで上演した作品の中から3作品、そして初代・芸術監督である串田和美、二代目・芸術監督である蜷川幸雄作品からそれぞれ1作品ずつが上映されるほか、松尾がプロデュースした二人芝居『命、ギガ長ス』と、その製作過程を辿ったドキュメンタリー『ノンフィクションW 松尾スズキ 人生、まだ途中也』もセット上映される。
松尾は今回の企画開催にあたり、「昔の演劇は改めて観ることができないのは当たり前のことでしたが、今は立派なカメラや音声技術があって、それを放映できます。でも、視聴者の方はそれをテレビやパソコンで観ることになるんですよね。もっと大きなところでやったものは大きなところで観たいんじゃないかなと思って、どうせならコクーンという劇場が空いている時間を使って上映できたらいいなという思いがありました」と企画意図を説明。これを受けて、宮沢も「私も観たいと思いました。自分が出た作品もそうですが、過去に見逃した作品はもう観れることがないというのが演劇だと思っていたので、こんな大画面で、臨場感が体験できるというのは、私もぜひ観たい」と声をあげた。
今回、放映される作品は全6作品。その中で、松尾が演出を務めた『女教師は二度抱かれた』に出演した大竹は、「とにかく阿部さんをはじめとした『大人計画』の方のお芝居がびっくりだった」と当時を振り返る。さらに、「『大人計画』の方は、舞台ではあんなに思い切ったことをするのに、普段は喋らなくて、大人しくて、恥ずかしがり屋で・・・。私の誕生日(が稽古期間中)だったんですけど、ハッピーバースデーとかあるのかと思ったら、何にもなく終わっちゃった。やっぱりそうなんだって」とぼやいて笑わせた。
蜷川幸雄演出の『下谷万年町物語』に出演した宮沢は、「それまでも何度かご一緒できる機会があったんですが、飛び込むことができなくて・・・この作品で改めて(オファーを)いただいて、ここで飛び込まないとダメになると思った」と強い思いを持って臨んだ作品だと明かす。稽古中は「希望と絶望のシーソーに乗っているような毎日」だったと振り返り、「毎日立てないくらい(大変)だったけれども、その中に喜びと感動がありました。その時に水の中から持って登場したサフランの花は、今でも楽屋に飾ります」と語った。
『キレイ‐神様と待ち合わせした女‐』に出演した小池は、「とにかく松尾さんと一緒にやりたかった」と「松尾さんが歌って欲しいというので、アカペラで松尾さんの前でWaTの歌をひとりで」歌ってアピールしたと告白。切望しての出演だっただけに「最高の時間だった」というが、「ただ、皆川(猿時)さんに唾をかけられるシーンがあって、皆川さんの唾を毎日浴びていたら、(公演の)後半は舞台からはけるたびに吐きに行っていました」と意外な苦労も明かした。
また、大竹、宮沢、小池をキャスティングしてどんな舞台を作りたいかという質問を受けた松尾は、「皆さん、力がある方なので、美術なしの素舞台でいきます。3人が無人島に流れ着いて、一つの食パンを奪い合う。誰が奪うのかという作品にしましょう」と想像を膨らませ、会場を盛り上げた。
「COCOON Movie!!芸術監督名作選」は、10月11日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンで上映中。
【公式サイト】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/20_cocoonmovie/
(取材・文・撮影/嶋田真己)