『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.2-(通称:ヒプステ)が、2020年8月19(水)に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて閉幕した。音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』の舞台化第 2 弾となる本作。初日前に行われた公開ゲネプロより、オフィシャル写真と共に公演を振り返る。
本作は、もともと今年5月に公演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止、その後8月に再度上演が決定した。劇場では、出演者も透明なマウスガードを着用しているほか、様々な感染症対策を行って上演、ニコ生では日替わり企画を設けながら全公演がライブ配信された。
今回、シブヤ・ディビジョン“Fling Posse(フリング ポッセ)”、シンジュク・ディビジョン“麻天狼(まてんろう)”が初登場。さらに、舞台オリジナルオリジナルキャラクターとなるアサクサ・ディビジョン“鬼瓦ボンバーズ”が参戦した。
「track.1」でも冒頭から爆発的パワーを見せつけたが、「track.2」も有無を言わせぬ圧倒的幕開けで観客をヒプステの世界に引っ張り込む。劇場では、観客にフェイスガード着用が推奨されていたが(来場者には公演ロゴ入りのヒプノシスSPフェイスガードを配布)、フェイスガードと皮膚の間で空気が震えて、バイブスを倍増させる不思議な効果が発生していた(まるで映画館の4DX体験)。
第2弾の物語は、ハイレベルな技術で作品を盛り上げるディビジョン・ダンス・バトル“D.D.B”のヒューマンビートボックスのパフォーマンス(Toyotakaが担当)&ハンドサインレクチャーから、怒涛のオープニングへ突入。男たちのもつれ合う情に過去の記憶が介入していく。
今作でも、映像を使った刺激的な映像演出は健在だった。ステージ上だけでなく、左右の壁面までも使ったプロジェクションマッピングでリリックを視神経に叩きつけ、H歴の世界に劇場を飲み込む。光るスーツによるダンスアクトはもちろん、LEDパネルの使い方もパワーアップ!さらに「track.1」へのオマージュも盛り込まれており、シリーズを通して楽しめる演出になっていた。
なんと言っても、ヒプステは“掴み”がすごい。LEDパネルに映し出されるキャラクタービジュアルが演じる役者と重なって舞台に姿を表す瞬間は、まさに「2.5次元」の醍醐味の極み。
物語の中心に描かれるのは、伝説のチーム“The Dirty Dawg”の元メンバーであり、“Fling Posse”の飴村乱数(世古口凌)と“麻天狼”の神宮寺寂雷(鮎川太陽)の因縁。世古口は、乱数のキュートな立ち居振る舞いに隠した毒々しさを舞台上で存分に振り撒く。そんなの、お姉さんたちイチコロだし。鮎川は寂雷の声が持つ低音の魅力を自らの声で見事に表現。長髪を振り乱しながら苦悶する姿は、神々しさすらあった。
“Fling Posse”は、ポップさが際立ったチームだ。リーダーでファッションデザイナーの乱数の掴みどころのなさを始め、乱数の“嘘”をおもしろがる作家・夢野幻太郎(前山剛久)、ギャンブラー精神でトラブルを引き起こす有栖川帝統(滝澤諒)と、コントのような可笑しみと不穏な空気を併せ持って、物語を動かしていく。前山と滝澤が生み出す軽妙な距離感は、これぞポッセ!と言いたくなる感じで絶妙だ。
一方、“麻天狼”は有能な医者である寂雷と、スーツジャケットを着ると豹変するホスト・伊弉冉一二三(荒木宏文)、悲観主義者でネガティブなサラリーマン・観音坂独歩(宮城紘大)という構成。大人の付き合いも上手で仲の良いチーム感に、人間味を感じる。幼馴染でもある一二三と独歩の関係性を、荒木と宮城は台詞のない場面や引っ込んだ袖中の先でもしっかりと表現していた。
そして、ヒプステで秀逸なのがオリジナル・ディビジョンの描き方。「track.1」でも、謎多き原作の物語と舞台を繋ぐ上で、アカバネ・ディビジョン“North Bastard”の存在が非常に効いていた。今回登場するアサクサ・ディビジョン“鬼瓦ボンバーズ”にも、開幕前から期待する声が多かった。
もちろん、期待は裏切らない。地元の人からも頼られる大工の親分・鬼灯甚八(加藤良輔)、能天気な酒屋店主・駒形正宗(和田秦右)、そば屋の料理人・影向道四郎(結城伽寿也)の3人で構成された“鬼瓦ボンバーズ”の義理堅く粋な人柄に、思わずほろりとする。セイヤ!ソイヤ!アサクサ!
そんな彼らのある勘違いから、心を通わせることになる“麻天狼”の面々。お酒を酌み交わし、寂雷が大変なことになったりしながら、互いをリスペクトして親交を深めていく。一方、トラブルメーカーの帝統がやらかしてしまった出来事から“鬼瓦ボンバーズ”とラップバトルをすることになる“Fling Posse”。おもしろがっていた乱数だが、甚八の口から寂雷の名前を聞いた途端、態度を豹変させ・・・。
ちなみに、オリジナル・ディビジョンの面々が持っているヒプノシスマイクの形状に舞台美術の気合を感じて、毎回注目してしまう。そして、ライブパートの楽しさは言わずもがなだろう。原作の世界観に沿いながら、ヒプステならではの色も出てきた音楽も秀逸だ。
音楽原作キャラクターラッププロジェクトとして2017年9月にスタートした「ヒプノシスマイク」は、ドラマCDにはじまり、2019年1月に公式コミカライズ化、2019年11月に舞台化、2020年3月にアプリゲーム化、そして2020年10月からはTVアニメの放送も控えている。
動き出すキャラクターたちの関係性。それは、舞台のストーリーにも巧みに取り込まれている。舞台に先に触れた方はもっと情報を深堀りしたくなるだろうし、原作を知って観た方は舞台だからこそ生まれる生々しい感情に心揺さぶられたのでは。こうしたメディアミックス展開を並行して追うことができるのも、このプロジェクトが多くの人が興をそそられる理由なのかもしれない。
ヒプステは、オオサカ・ディビジョンとナゴヤ・ディビジョンが登場する第3弾の上演が早くも10月に決定している。「Don’t pass the mic!」と見せつけたシブヤ・シンジュクの両ディビジョンから、どのようにマイクを奪うのか。今後の展開からも目が離せない。アーイ!
なお、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.2-では公演の模様を収録したBlu-ray&DVDの発売のほかビジュアルブックの製作も決定している。詳細は、以下のとおり。
Blu-ray&DVD
【発売日】2021年2月3日(水)
【価格】
<初回限定版>Blu-ray:11,800円+税/DVD:10,800円+税
<通常版>Blu-ray:8,800円+税/DVD:7,800円+税
【早期予約特典】アナザーカットブロマイド9枚セット
※ビジュアルブック早期特典とは異なる
ビジュアルブック
【発売日】2021年2月3日(水)
【価格】4,000円+税
【早期予約特典】撮り下ろしブロマイド9枚セット
※Blu-ray&DVD早期予約特典とは異なる
【公式情報】https://db.enterstage.jp/archives/156
(C)『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage 製作委員会
(取材・文/エンタステージ編集部 1号、写真/オフィシャル提供)