刺激的なギャングの世界で草なぎ剛が熱唱&熱演!『アルトゥロ・ウイの興隆』ゲネプロレポート

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2020年1月11日(土)にKAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アルトゥロ・ウイの興隆』が神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場にて開幕。初日前日に囲み会見と公開ゲネプロが行われ、草なぎ剛と演出の白井晃が登壇した。

KAATではこれまでもドイツ演劇の巨匠ベルトルト・ブレヒトの作品として『マハゴニー市の興亡』『三文オペラ』『マン イスト マン』などが上演されてきたが、今作の原作はドイツ語での原題が『アルトゥロ・ウイの抑えることのできた興隆』となっている作品で、ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いた問題作。

『アルトゥロ・ウイの興隆』

主演としてシカゴのギャング団のボス、アルトゥロ・ウイ役に草なぎを迎え、ジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成されたファンクミュージックを、ファンクバンドのオーサカ=モノレールが生演奏で散りばめる斬新な演出を用いることで、白井がギャングの暗躍するショー仕立ての音楽劇として作り上げている。

1933年にナチスに追われたブレヒトがアメリカへ渡った際に、英雄として神格化されるギャングたちの映画に興味を持ち、アル・カポネにヒトラーとの共通点を見つけ、第二次世界大戦のさなかにこの戯曲の執筆に着手したという本作の上演に関して、白井は「世の中にちょっと危うい空気がある中で、この作品がとても時代を映す鏡として意味のある作品になっています」とコメント。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

その草なぎと初めてタッグを組んだKAATでの2018年の舞台『バリーターク』以来、KAATでは2度目の主演として草なぎを迎えることに、白井は「すぐにもう一度やりたいと思ってこの企画を考えたので、またこうやって再会できてすごくうれしいです」と喜びを露わにし、草なぎも「『バリーターク』でも舞台のいろんな可能性を気づかせてくれたので、今回もまた舞台と演じるということにあたっておもしろい扉が開くんじゃないかと思っています」と期待を寄せた。

囲み会見での草なぎは、公開ゲネプロ前ということもあって緊張した面持ちながらも「ちゃんとできたら褒めてください(笑)」と冗談を飛ばしつつ、「稽古場で何度か通したんですけど、実際に劇場の舞台で通したことで、こういう舞台なんだと実感が沸きました」と稽古を振り返り「エンターテインメント性の高い、ものすごくいい作品になると思います」とアピールした。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

本作の見どころについて、白井は「草なぎさんがヒトラーを模した役というギャング団のボス、ウイという役割を演じることが、まず一つの大きな見どころ。私がどんどんお願いしていることに対してもいろいろと正面からぶつかっていただいて、どんどんウイというギャング団のボスになりきっていただいています」と挙げた。

続けて、「人を巻き込んでいく力が必要な役柄ですけど、草なぎさんはそれに即した人の気持ちを引きずり寄せるすごくチャーミングな面をお持ちなので、とてもこの役どころにもあっていると思います。この草なぎさんが恐ろしいギャング団のボスになっていくというところが、僕としては1番見たかった部分でもありますし、そこを体現していただいています」と絶賛。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

草なぎは「アウトロー的な役は映画でも演じたことはあるんですけど、それぞれが違うもので、過去にそういう役ができたから今回はできるというものでもないですが、新しいものを踏み出させてくれる楽しさや、大変さをすごく気づかされる役で、ちょっと尖ったキャラクターだと感じています」と思いを明かすと「ブレヒトさんという昔の方が書かれた本なんですけど、そんなに遠いような感情ではなくて、近いような感情がすごくたくさんあるので、共感していただける部分もたくさんあります」と語った。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

物語は、シカゴギャング団のボス、ウイが政治家ドッグズバローと野菜トラストとの不正取引に関する情報を掴み、そこにつけこんで勢力を拡大し、次第に人々が恐れる存在へとのし上がっていく姿を描いている。

白井が「草なぎさんのチャーミングなところから怖い面を見ていただけるのも楽しみです」と語るように、真っ赤なスーツに身を包み、おどけたようなチャーミングな表情で傍若無人に振る舞いながら、見る見るうちに勢いを増していくウイを暴力的に演じる草なぎは存在感バツグン。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

さらに劇中では、ヒトラーが率いるナチスと共に独裁者として上り詰めていった過程や、人々を扇動するためのあの独特の身振りやしゃべり方を田舎役者から学んだなど、ヒトラー「興隆」の史劇を模したシーンが散りばめられており、それを物語の要所で転換に合わせてスクリーンで解説することにより、分かりやすく印象的なものとしている。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

そして、何よりも本作の大きな魅力である、ブレヒトの問題作を刺激的で高揚感あふれる音楽劇へと仕立てたことについて、白井は「ヒトラーがリヒャルト・ワーグナーの曲を人々の気持ちを高揚させるために利用したように、今回はジェームズ・ブラウンの楽曲を盛り込んでやらせていただいています。それと一緒に草なぎさんも歌い狂い、踊る、その姿もまた見どころです」と演出プランを明かした。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

その白井の演出と草なぎの姿は1幕プロローグから思う存分に味わえる。舞台は、鮮烈な赤を基調として彩られたステージ上で、オーサカ=モノレールのボーカル・中田亮がMCとしてウイを紹介するところからスタートする。中田の掛け声を合図にウイを演じる草なぎがステージカラーと同様の真っ赤なスーツ姿と派手なマントを身にまといながらエンターテイナーのごとく登場。

ジェームス・ブラウンの代表曲「Get Up Sex Machine」の生演奏が流れる中で、草なぎはマントを脱ぎ捨て、上手下手、そして観客席へと縦横無尽に雄叫びを上げながら踊り回り、バンドステージに駆け上がるとそのまま熱唱!

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

プロローグだけでなく、劇中の随所で魅せてくれる草なぎのエンターテイナーとしての魅力が詰まったアグレッシブなまでのパフォーマンスと垣間見せるチャーミングな姿が、ステージと観客席を熱狂とハイテンションで包み込んでくれる。

そんな強烈なインパクトを与えてくれる草なぎの周りを固める共演者には、政治家ドッグズバロー役の古谷一行のほかに、神保悟志らベテラン陣と渡部豪太ら若手たちに加え、『バリーターク』でも草なぎと共演した松尾諭、小林勝也などの個性豊かなキャストが名を連ねている。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

その共演者たちと作り上げたきた本作に対して、草なぎは「男性が多くておじさんばかりですが(笑)、そこにリアリティーや人の生きている感じがすごく出ていて、それを白井さんがあぶり出してくれています。このカンパニーで毎日がんばってきたので、僕らにしかできない『アルトゥロ・ウイの興隆』が届けられると思います」と自信を覗かせた。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

ブレヒトが描く本作のメッセージ性を根底に残しつつも、音楽劇としてエンターテインメント性あふれる斬新な作品へと生み出した白井演出のもと、草なぎがヒトラーを模したクールで暴力的なギャング団のボスに扮し、最高に刺激的なパフォーマンスを見せてくれる本作。

『アルトゥロ・ウイの興隆』会見

囲み会見の最後に、草なぎは「白井さんとまたタッグを組んで、本当に今までにないような「草なぎ剛」が見られると思いますし、白井さんの演出もまた楽しく、とてもしびれる感じになっています」と呼びかけて締めた。

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アルトゥロ・ウイの興隆』は、2020年1月11日(土)から2月2日(日)まで神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場<ホール>にて上演。

【公式サイト】https://www.kaat.jp/

※草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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