2019年11月1日(金)にティム・バートン監督の大ヒット映画をミュージカル化した『ビッグ・フィッシュ』の再演が開幕。初日前日である10月31日に公開ゲネプロと囲み取材が東京・シアタークリエで行われ、川平慈英、浦井健治、霧矢大夢、夢咲ねね、藤井隆、ROLLYが登壇し、再演となる今回の見どころなどを語った。
本作は映画『チャーリーとチョコレート工場』や『アリス・イン・ワンダーランド』などを手掛けてきたティム・バートン監督の大ヒット作『ビッグ・フィッシュ』(2003年公開)をミュージカル化。見失いがちだが、一番大切な家族の絆をハッピーにファンタジックに描いている。2017年に日本初演し、ファンタジックな演出と胸躍る楽曲、生き生きと描かれたキャラクターたちの紡ぎ出す美しい物語で多くの観客を魅了した。
主人公・エドワード(川平)は息子・ウィル(浦井※幼少期は佐田照、佐藤誠悟のWキャスト。ゲネプロは佐藤が出演)に、自分がいつどうやって死ぬのかや幼馴染のドン・プライス(藤井)やザッキー・プライス(東山光明)と一緒に魔女(JKim)から聴いた話、共に故郷を旅立った巨人・カール(深水元基)との友情、霧の中で出会った人魚(小林由佳)の話、団長のエーモス(ROLLY)に雇われたサーカスで最愛の女性、妻・サンドラ(霧矢)と出逢った話を小さい頃から聞かせていた。
大人になり、夢のような壮大な話の数々を作り話だと思うようになったウィル。ジョセフィーン(夢咲)との結婚式で、エドワードしたあることをきっかけに心の距離がさらに離れてしまう。しかしある日、エドワードが病で倒れて両親の家に帰ることに。病床でも相変わらずかつての冒険談を語るエドワードを見て、本当の父の姿を知りたいと葛藤するウィルはエドワードの過去を調べ始めていく。
川平が演じるエドワードは再演でさらにハッピーに無邪気に輝きを増していた。少年のように楽しそうに語りかけてくる物語の数々に、幼少期のウィルだけでなく観客も引き込まれていくのだ。ほとんど出ずっぱりでも一瞬もその輝きが鈍ることはなく、真っすぐと伸びる歌声は家族への愛に溢れ、舞台上に広がる暖かく優しい空気を自然と作り上げていた。川平が演じるエドワードだからこそ、こんなにもいろんな人々に愛されるという“説得力”があるのだと改めて思わされた。
そんなエドワードに対し複雑な気持ちを抱えるウィルを演じる浦井の演技も見どころだ。本当の姿が知りたいのに“ホラ吹き話”で返され、いら立つ姿は父を家族を愛するからこそだと感じさせられる。父と真剣に話そうとする姿、母に甘えつつも気遣う姿、妻を誠実に愛し、新しい命へ愛しさを募らせていく姿。エドワードの壮大な過去が描かれるファンタジックな場面の合間に見せる、等身大の男性を演じる浦井の細かな表情の違いが現実味を添えている。
第2幕では、病床にいるエドワードとウィルが対立する場面で新曲が差し込まれているが、この曲が初演よりも物語に深みを与えている。溝が深く、広がっていく。お互いを思い合うからこそ、受け入れたい、受け入れられたいという思いが強くなっていく。初演時の演出も楽しくてエッジが効いていて好きだったが、より作品に温かみが増すこの新しい演出もとても素晴らしく、初演を見た人でも最後まで見ればまた新鮮な気持ちでエドワードと家族の物語を楽しんでいる自分に気づくだろう。
囲み取材に登壇した主演の川平は「この日を迎えられたことを本当にうれしく思います。ついに来たね」とうれしそうに浦井に声を掛けつつ、「より濃密な空間の中で、最高の仲間と一緒に初日を迎えられて心から感謝というか、光栄に思います。早く皆さんにお見せしたい」と声を弾ませた。
そんな川平演じるエドワードの息子・ウィルを演じる浦井は、10月31日に行われた囲み取材ということで「世間はハロウィン一色だと思うんですけど」と切り出し、「きっとこの作品はハロウィン色が強いと思います(笑)。川平慈英さんがずっと動き回っていて、最強のパワースポットになると思います」とお茶目にアピール。
そして、エドワードの妻でウィルの母・サンドラ役の霧矢も「愛する家族、そして仲間たちにまた再会できて本当に幸せです。この幸せと喜びを客席の皆さまにお届けしたいと思います」と喜びを語り、ウィルの妻・ジョセフィーン役の夢咲も「初演からもう一度この作品に挑戦できることがすごく嬉しいです」と笑顔でコメントした。
さらに夢咲は「初演の時よりも人数が少なくなっていて、出演者全員が目まぐるしいくらいにいろんな役をさせていただいています。初演とはまた違う『ビッグ・フィッシュ』に生まれ変わっているので、沢山の方に見ていただきたいです」と語った。初演は日生劇場だったが、今回はシアタークリエでの公演ということでキャストの布陣に変化が。
エドワードに何かと突っかかるドン・プライス役の藤井は「初演の時は沢山のメンバーでお送りしたんですけど、今回は濃縮したメンバーでお送りします。ちょっと気が早いんですけど、今回も成功させてぜひまた再々演を初演のメンバーと出来たらなと!」と期待を込めて語り、色々な役をやる中で一風変わった役にも挑戦するということで「 “水の流れ”という概念をやらせていただくというのは舞台の醍醐味だなと思いますので、頑張りたいと思います」と意気込む。
そして、サーカス団の団長役を演じるROLLYは「この『ビッグ・フィッシュ』はあなたの物語です! 見る人全員の人生の物語です! 『ビッグ・フィッシュ』を見る前とみる前であなたの人生が変わると思います。ぜひ、どうぞ」とメッセージを送った。初演時と同じコメントだったが、川平から「間違いないです。前回と変わらない。テーマは変わりません! 愛です!」と差し込まれ、本作の不変のテーマを体現したようだった。
キャスト達がさまざまな役を演じることについて川平は「僕だけなんですよ、1役なのは。みんな何役もやっていて、ありがたみ満載のステージになりました」と語り、「『あ、あれもしかして健ちゃん!?』『あれは霧矢さん!?』ってなります。何回か見ないと・・・。」と再演の楽しみ方を教えてくれ、そんな川平の言葉に浦井も「そうですね、答え合わせをね!」と合いの手を入れた。
また、川平は「非常に面白いですよ。特に霧矢さんの豹変ぶりもう・・・!もうお客さんも見つけ出してほしい」と明かすと、藤井が「ヒントは、“退団後初”の・・・っていうね。ファンの方は絶対見ていただきたい」と猛プッシュ。
再演では新曲も盛り込まれており、エドワードとウィルが対立する場面での新曲については、浦井が「親子の隔たりをしっかりと芝居を歌として、今回は演劇的に白井さんが仕上げてくださっていて。よりすごく深いところで家族の絆、愛を感じる。亀裂が入ったからこそ生まれ出る何かというのが見えてくるんじゃないかなと思います」と教えてくれた。
さらにもう1曲、霧矢が歌う曲も新しくなっている。霧矢は「表現していることは初演とそこまで変わらないんですけど、健ちゃんもおっしゃった通り、よりウィルとエドワードの間に挟まれたサンドラの思いがはっきり描かれているかなと思います」と語り、川平がそのことによって「今回ストーリー性が濃密になりました。人間関係、家族関係がより濃密になってストーリー性が強くなったのでそこを楽しんでいただければ」としみじみ。
そして最後に、川平が「生きる喜びや人に愛情を注ぐ大切さ、痛みを知る心を持つ大切さというのを改めて感じられる舞台になっています。圧倒的な音楽力を通して、僕たちと一緒に幸せを共有しに一人でも多くの人が来てくださいますように。28日までシアタークリエでやっています。よろしくぅ~!!」と劇中のエドワード同様ハッピーオーラ全開で締めくくった。
ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』は下記の日程で上演される。上演時間は第1幕が1時間20分、休憩20分、第2幕が1時間の合計2時間40分を予定。
【東京公演】11月1日(金)~11月28日(木) シアタークリエ
【愛知公演】12月7日(金)~12月8日(日) 刈谷市総合文化センターアイリス
【兵庫公演】12月12日(木)~12月15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【公式HP】https://www.tohostage.com/bigfish/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 3号)