草なぎ剛主演で、2020年1月にドイツの劇作家ベルトルト・ブレヒトの大作『アルトゥロ・ウイの興隆』の上演が決定した。本作品は、ヒトラーが独裁者として上り詰めていく過程をシカゴのギャングの世界に置き換えて描いた問題作。演出は2018年4月に『バリーターク』で草なぎとタッグを組んだ白井晃が手掛け、ファンクミュージックを散りばめた斬新な作品の創出に挑む。
1933年、ナチスに追われ15年に及ぶ亡命の旅に出たブレヒトは、アメリカへ渡った際、英雄として神格化されるギャングたちの映画に興味を持ち、ギャング団の資料を集めたと言われている。その中で、禁酒法時代にシカゴの高級ホテルを住まいとし、密造酒製造販売、売春業、賭博業を組織化し、勢力を拡大していったアル・カポネにヒトラーとの共通点を見つけ、1941年にこの戯曲の執筆に着手。1958年にドイツ・ヴュルテンブルグ州立劇場にて初演を迎えるが、それはブレヒト(1956年没)がこの世を去った後だった。
ヒトラー率いるナチスがあらゆる手段を使い独裁者として上り詰めていく過程を、シカゴのギャングの世界に置き換えるという大胆な案から生まれた本作には、ヒトラー「興隆」の史劇が劇中に散りばめられている。ドイツ語での原題は『アルトゥロ・ウイの抑えることのできた興隆』。ヒトラーのみならず、その登場を許した当時の社会環境を、冷ややかな姿勢で描いた作品だ。日本では、1969年に劇団俳優座によって上演(『ギャング・アルトゥロ・ウイ~おさえればとまるアルトゥロ・ウイの栄達』主演:田中邦衛)されている。
出演は、シカゴのギャングに扮する草なぎのほか、松尾諭、渡部豪太、中山祐一朗、細見大輔、粟野史浩、関秀人、有川マコト、深沢敦、那須佐代子、春海四方、小川ゲン、古木将也、小椋毅、チョウヨンホ、林浩太郎、神保悟志、小林勝也、古谷一行。
劇中の音楽は、オーサカ=モノレールによる生演奏。キング・オブ・ソウルと呼ばれるジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成し、刺激的で斬新な音楽劇に仕上げるという。
【あらすじ】
シカゴギャング団のボス、アルトゥロ・ウイは、政治家ドッグズバローと野菜トラストとの不正取引に関する情報を掴んだ。それにつけ込み、強請るウイ。それをきっかけに勢力を拡大し、次第に人々が恐れる存在へとのし上がる。
見る見るうちに勢いを増していくウイを、はたして抑えることができるのだろうか・・・?
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アルトゥロ・ウイの興隆』は、2020年1月11日(土)から2月2日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場<ホール>にて上演される。チケットの一般販売は、2019年11月16日(土)開始。
【公式サイト】https://www.kaat.jp/
※草なぎ剛のなぎは弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記