2019年9月14日(土)に森雪之丞と白井晃がタッグを組んだ新作ミュージカル『怪人と探偵』が開幕。プレスコールと初日会見がKAAT神奈川芸術劇場で行われ、中川晃教、加藤和樹、大原櫻子、高橋由美子、六角精児、白井、森が登壇し、本作への思いや意気込みなどを語った。
本作は、江戸川乱歩が生み出した、日本文学史上最も有名な二人である大怪盗・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎を主人公に、『少年探偵団 シリーズ』など乱歩作品に登場するキャラクターたちが、騙し騙される華麗な対決を繰り広げる、新作ミュージカル。また、本作のために東京スカパラダイスオーケストラがテーマ音楽「憂愁モダン~怪人と探偵のテーマ」を書き下ろし、怪人二十面相と明智が世界で一番綺麗な宝石を巡って華麗に対決する姿を盛り上げていく。
プレスコールでは、チベットの秘宝・シャングリラの雫を狙う怪人二十面相(中川)&手下と、怪人二十面相を捕まえようとする明智(加藤)ら探偵団&警官達の格闘や、元子爵北小路家の令嬢・リリカ(大原)が切なくも力強いメロディーが印象的な「東京ランデヴー」を歌う、第一幕一場の冒頭シーンから二場の頭までを公開。
怪人二十面相が登場で歌う「蜜と謎」、明智が登場で歌う「謎と蜜」がそれぞれの個性を浮き立たせ、始まってすぐにキャラクターの核を掴ませてくれることで、すんなりと昭和30年代の世界に引き込んでくれる。そして、乱闘シーンで流れた「憂愁モダン~怪人と探偵のテーマ」がワクワクする気持ちをさらに助長させ、この先の二人の戦いをさらに期待させた。
続いて、怪人二十面相が風荒ぶ鉄塔の上でネコ夫人(高橋由美子)にある告白をする第六場。二十面相とネコ夫人、そして手下たちが「世界で一番綺麗な宝石」を歌い上げるこのシーンでは、“欲しい”という強い思いを持ちつつ、盗めず、奪うこともできない宝石よりも美しい“愛”を知ったことへの戸惑いも感じさせ、怪人二十面相の人間らしさを垣間見ることができた。
本作の作・作詞・楽曲プロデュースを手掛けた森雪之丞は、「構想5年、いろんな事情があって音楽に一年半かけて今日を迎えることが出来ました」と初日を喜び、「これだけ音楽ひとつとっても時間をかけられるものはないと思いますし、実際今日に至るまで本当にいろんなことがありました。オリジナルミュージカルを作るのはとても大変すけども、日本語の美しさであったり、日本語の歌詞だから歌える歌であったり、そういうものを目指して、乱歩さんの力をお借りして、この作品を作ることが出来ました。素晴らしいキャスト陣、スタッフ、みんなの力で今日を迎えられたと思います」と感謝した。
そして、KAAT神奈川芸術劇場芸術監督で、本作の演出を務める白井は「森雪之丞さんから5年前に『怪人二十面相をテーマにしたミュージカルを作ってみたい』というお話を伺いまして、それは面白そうだと思いました」と振り返り、「昭和の少年少女が心躍らせた、昭和の日本が生んだダークヒーローをこれまでなんでミュージカルにしてこなかったのかなと不思議に思うくらい、面白い題材を頂いて、5年の時間をかけてやっと今日初日を迎えることが出来ます。先程、雪之丞さんがお話になったように、日本でのオリジナルミュージカルというのは中々成立しにくい部分もあるんですけど、今回は頑張ってみんなの力で作っておりますので、非常に面白いものになっているのではないかと自負しております」と自信を見せた。
大怪盗・怪人二十面相役の中川は「怪人二十面相の役というのを最初雪之丞さんからお話を頂いたときに、『おぉ・・・20の顔を持つ役を演じることができるのか』とまず興奮しました」と語り、音楽、脚本と出来上がっていく過程、そして初日を迎えて完成していくのを間近で見られたことに、「中々味わうことの出来ない経験をさせていただいているなとすごく思っています」としみじみ。そして、「新作のオリジナルミュージカルですから、本当にいろんなことが毎日現場で起こっています。観に来てくださったお客様に『観に来てよかった』と思っていただけるように最後まで頑張りたいと思いますし、そこが一つのゴールであって、またスタートラインだと信じて、初日の舞台に立ちたいと思います」と意気込んだ。
そんな中川演じる二十面相の“ライバル”である明智小五郎を演じる加藤は「明智のイメージは本当に完璧でスマートな人だったんですけど、そこに“愛”と言う一つのテーマがあることで、人間の感情と言うものをすごく感じております。それは憎しみ、怒り、嫉妬だったり。怪人二十面相も明智も一人の人間なんだという人間ドラマもちゃんと描かれているのがこの作品の魅力のひとつだと思います」と本作の魅力を熱弁。また、中川とは2017年に上演されたミュージカル『フランケンシュタイン』以来、2度目の共演となることに、「またこうして、ライバルと言うか、相対する役を演じさせていただけることは非常に光栄で、対峙するたびににやけてしまうというか、気持ちが高揚しております」と笑顔で語った。
また、怪人二十面相と明智が奪い合うことになるリリカを演じる大原は「オリジナルということなので、今日初日ですけど多分千秋楽に向かって変わっていくんじゃないかと思っています。それは特にオリジナルということで、『もっとこうした方がいいんじゃない?』『ああした方がいいんじゃない?』というのが、もっとこれから出てくるのかなと思います。なので、一回と言わず、何回でも観に来ていただいたら嬉しいです」とコメントした。
本作がミュージカル初挑戦の中村警部役の六角は、「普通の芝居よりよりスポーツに近いような気がします。もちろん皆さん沢山歌ったり踊ったりされて、僕もその中に少し混ぜてもらっているような感じなんですけど、それだけでもこれだけ体を動かすのは久しぶりだなと実感しております」と語り、「僕は子供の頃、少年探偵シリーズの『怪人二十面相』をとても好きで読んでいたんですけど、こんな形で舞台に出られてとても幸せです」と嬉しそうに明かした。
ひと際個性的なコスチュームで登場したネコ夫人役の高橋は、「今回インパクトのある役をいただいたことにとても感謝しています。こんなに走る舞台は劇団☆新感線以来なので、びっくりしております。なので、良い感じでこのボディラインがキープされればなと思っております」と会場の笑いを誘いながらも、「お子様が見てもとても面白い作品になっておりますので、ぜひお子様がいらっしゃる方はお連れになって、ご覧いただけたらと思います」とアピール。
そして最後に、中川が「江戸川乱歩の世界、日本人なら誰もが知っているでだろう原作を元にこの強力なスタッフの皆さまと私たち、全員で作ってまいりました。本当にドキドキしております。 “二十面相VS明智”や“愛”という形があってない、けれど確かなもの、そういったひとつひとつのキーワードをKAATという劇場いっぱいにキラキラとギラギラと、エナジーが届くように最後まで頑張っていきたいと思います」と締めくくった。
新作ミュージカル『怪人と探偵』は下記の日程で上演。上演時間は、約2時間50分(休憩20分含む)を予定。
【横浜公演】2019年9月14日(土)~29日(日) KAAT神奈川芸術劇場
【兵庫公演】2019年10月3日(木)~6日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【公式サイト】http://www.parco-play.com/s/program/kaijintotantei/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 3号)