俳優・池田純矢が自ら脚本・演出を担い、2015年に立ち上げた「エン*ゲキ」シリーズ。その第4弾となる『絶唱サロメ』が、2019年10月に東京と大阪で上演される。5月某日に大阪・カンテレ本社で行われた会見では、池田自身が本作に向けての意気込みを語った。
シリーズ第1弾『君との距離は100億光年』(2015年7月)では「物理(宇宙工学)」を、第2弾『スター☆ピープルズ!!』(2017年1月)では「科学・化学」を、第3弾『ザ・池田屋!』(2018年4~5月)では「歴史」を取り上げてきた池田。第4弾の新作『絶唱サロメ』では、オスカー・ワイルドによって書かれた戯曲『サロメ』に着想を得て、「古典×歌×エンターテインメント」が融合した作品を作り上げる。
1893年にオスカー・ワイルドが発表した『サロメ』に池田が出会ったのは、小学生の頃。16~17歳の時に「声を出して読むとこんなにおもしろいんだ!」とその戯曲の魅力に気づいたという。「『サロメ』は発表されてから、残虐さであったり、不道徳な内容と言われたりで、しばらくは上演が禁止されていたんです。でも、やはり戯曲そのものに力がある。残酷描写の中にある妖艶さや耽美さ、その美しさは現代の我々にも通じるものがあるなと思いました」。
今回は、『サロメ』をそのまま上演するのではなく、あくまでも“原案の一つ”として取り上げる。「不道徳とか残酷とか古典とか、そんな重たいイメージをなんとか王道のエンターテインメントにできないかという思いでオリジナル脚本に仕上げました」と創作に至った経緯を説明した。
主演に迎えるのはロックバンド「SOPHIA」「MICHAEL」のボーカルで、役者としても存在感を放つ松岡充。池田と松岡は『不届者』という舞台で共演しており、池田はその出会いを運命的だったと振り返る。「僕の中で、ドカンと一発雷が落ちたような衝撃がありました。松岡さんの歌声に、歌詞や言葉が形になって目の前に現れるような、そんな印象を受けたんです。これをそのまま演劇にしたらおもしろいなと。妖艶な魅力のある『サロメ』という作品と、それまで別で考えていた演劇と音楽の融合、これが松岡充というファクターを通すことで一つになったんです」と目を輝かせる。
とはいえ、若干26歳の池田が松岡にオファーするには相当な覚悟もあったそうで、「僕は今26歳という若造なので、松岡さんに軽々しく『出てください』なんて言えないじゃないですか。だから、自分にできる限りの誠意を見せようと、ご本人に伝える前に『絶唱サロメ』の脚本を先に作ったんです」というエピソードを披露。さらに「この本を読んでください。この作品は松岡充でしか作れないから、もし断ったら、もう世に出ることはないですから!」というラブコールを添え、松岡の快諾を得たそうだ。
また「どんな世代が見ても楽しめるように・・・『エン*ゲキ』シリーズはそういう心持ちで、高尚なものではなくもっと簡単な、友達とカラオケやボーリング、遊園地に行くような感覚で来てもらいたいなと思うところから始めた企画ですので、『サロメ』という重々しい作品をエンターテインメントにしてやろうじゃないかと。また、今回は音楽がテーマになっていますが、ミュージカルでもなく、音楽劇でもなく、新しい形の音楽と演劇の融合ができればいいなと。“ライブエンターテインメント”と名付けさせていただきましたが、少なくとも僕はまだ見たことがない舞台。この融合が、お客さんにどう届くのかが非常に楽しみです」と熱くコメント。
そんな本作に対し、池田が脚本家・演出家として考える見どころは「脚本家としては、後半にカタルシスがやって来ることを大切にしています。どんどん風呂敷を広げて、そんなところが伏線だったのか!と思わせるぐらい、最後に一気に回収し、ストンと落ちる。それがエンタメならではの気持ち良さじゃないかと思っています。演出家としては、やっぱりライブエンターテインメントをどう表現するか、ですね。自分でもまだ悩んでいます(笑)。でも、ライブやコンサートに行ったら声を出して発散するので、そういうふうに楽しんでもらえるような演劇にしたいと思っています」と語る。
音楽と演劇の新しい融合については「歌を歌として歌いますが、ライブシーンではなく“歌いますよ~”って合図があって歌います。でも、物語に入りこめるように作っているので、違和感なくスムーズに楽しんでいただけると思います」とそのプランを明かす。
また、俳優としては「ドラマや映画、舞台、アニメの声優など、いろいろさせてもらっているので、俳優陣のつながりが普通の人よりもちょっと広い分、いろんなところから客演を呼べるという。今回でいえば、アーティストの松岡さんをはじめ、芋洗坂係長さん、ミュージカル界からシルビア・グラブさん、声優の吉田仁美さんなど、いろんなところから集まっていただいて。ある意味、個性があり過ぎる人たちのぶつかり合いですね(笑)。これが一度に堪能できるのもこの作品の魅力です」と座組のおもしろさをアピールした。
また、ジュノンボーイ準グランプリを取る14歳まで大阪で育ったという池田。小さい頃から吉本新喜劇を観て育ってきたそうで、地元への思いも強く「大阪は自分のルーツですし、誇りを持っています。関西の人ってめちゃくちゃ笑うじゃないですか。そういう文化はすごく好きです」と思い入れたっぷり。舞台上でも「大阪公演は、東京とは全然反応が違いますね。それは演劇の魅力でもあって、お客様が変われば作品も変わるし、同じものは二度とない。大阪では、どの地方でやったものよりも、間違いなく作品の質が変わるぞという覚悟をもって臨みます。第3弾の時には『いつも笑いが来ていた場面でも笑いを欲しがるなよ』とキャストには言っていました(笑)」と笑った。
最後に「外国人の方が観光のついでに来ても、マンネリ化しているカップルのデートでも、お父ちゃんが子どもを連れて来てもいいので、あまり構えず来てください。敷居はすごく低いので(笑)。ひょいとまたいで来ていただけると、上演後『楽しかったね~』と劇場を後にしていただける作品になっています。まずは劇場に足を運んで、演劇体験をしてください!」と力強く呼びかけた池田。
エン*ゲキ#04『絶唱サロメ』は、以下の日程で上演される。チケットは、7月13日(土)より一般発売開始。
【東京公演】10月5日(土)~10月13日(日) 紀伊國屋ホール
【大阪公演】10月26日(土)・10月27日(日) サンケイホールブリーゼ
【出演】
松岡充
豊原江理佳、納谷健、小浦一優(芋洗坂係長)、吉田仁美、池田純矢、鈴木勝吾、シルビア・グラブ、ほか
(取材・文・写真/オフィシャル提供、編集/エンタステージ編集部)