2019年3月5日(火)に東京・紀伊國屋ホールにて『母と惑星について、および自転する女たちの記録』が開幕した。初日前にはフォトコールと囲み会見が行われ、出演者である芳根京子、鈴木杏、田畑智子、キムラ緑子が登壇した。
本作は第20回 鶴屋南北戯曲賞を受賞した蓬莱竜太の作品であり、2016年に初演され話題を呼んだ。テーマは「命」。普遍的で、それでいてさまざまな色や形をもつ「家族」。蓬莱が女性4人を中心に描く家族の在り方は、特に母と娘という関係にひそんでいる独特の愛憎を浮かび上がらせている。
【あらすじ】
突然の母の死からひと月。私たちは何と決別すればいいのか。徹底的に放任され、父親を知らずに育った三姉妹は遺骨を持ったまま長崎からあてのない旅に出る。
「私には重石が三つ必要たい」毎日のように聞かされた母の口癖が頭をめぐる。次第に蘇る三姉妹それぞれの母の記憶。奔放に生き、突然消え去った母。母は、何を欲していたのか。自分はこれからどこに向かえばいいのか・・・。三姉妹の自問の旅は続く・・・。
舞台『幕が上がる』(2015年)に次いで2度目の舞台出演となる3女・辻シオ役の芳根は、これまでの稽古期間を振り返りつつ「稽古期間が短い期間にぎゅっと詰まっていて、短期集中でここまでこれました。台詞が飛ばなきゃいいなあ、と祈るばかりです(笑)。共演者の皆さまには、家族のような安心感をいただいています」と笑顔を見せた。
初演と同じ役を務める次女・辻優役の鈴木は初演と今回を比べて「思い出すところと、新キャスト(芳根、キムラ)によってこれまでなかったものが生まれるところがあり、楽しく稽古させていただきました」と語り「ついに始まるという気持ちと、楽日に向かって終わっていってしまう寂しさもあります」と心境を明かした。
田畑は鈴木と同じく前回に引き続き長女・辻美咲を演じる。「人生にも男関係にも迷っている複雑な役」という美咲だが、自身の人生経験と役を比較し「結婚や出産など、女性として一歩を踏み出すまでに悩んだりしている姿は、自分とかぶるところが一部ありました」と話した。
3女の母親である峰子を務めるキムラは栗山民也の演出について「稽古で全部を決めてしまわず、生で生まれるものを大事にしたいとおっしゃっていたので、舞台上で皆とどう会話できるんだろうと今からドキドキしています」とコメント。舞台途中、マイクを片手に「飛んでイスタンブール」を歌うシーンがあるが「大好きな曲なので、飛んでいきたい気持ちで歌います」と自信をのぞかせた。
辻家は長崎のとある家族だが、4人は完璧に長崎弁をマスター。キムラは「音楽みたいで、すごく気持ちいいです」と、長崎弁の美しさを話しており、キャラクターたちの口から発せられる「~ばい」「~と」の語尾に、彼らが生まれ育った長崎の風が感じられた。
また、会見では一人のコメントに対して周りの3人がさらにコメントを寄せ、その場で会話に花が咲くなど、本当の家族のような距離感がうかがえ、舞台上でもその心の繋がりのようなものがこちらにまで伝わってきた。
会見の最後には芳根が「すてきなチームに出会えたことに心から感謝していますし、すでにいいお芝居になる予感がしています。全力で舞台に立ちますので、どうぞ劇場におこしください!」と締めくくった。
パルコ・プロデュース 2019『母と惑星について、および自転する女たちの記録』は2019年3月5日(火)から3月26日(火)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。その後、全国を巡演。詳細は以下のとおり。
【東京公演】2019年3月5日(火)~3月26日(火) 紀伊國屋ホール
【高知公演】2019年4月2日(火)・4月3日(水) 高知市文化プラザかるぽーと 大ホール
【北九州公演】2019年4月6日(土)・4月7日(日) 北九州芸術劇場 中劇場
【京都公演】2019年4月12日(金)~4月14日(日) ロームシアター京都 サウスホール
【豊橋公演】2019年4月20日(土)・4月21日(日) 穂の国とよはし芸術劇場 PLAT
【長崎公演】2019年4月25日(木)・4月26日(金) 長崎市民会館 文化ホール
(写真・文/エンタステージ編集部)