2017年2月27日(月)、読売演劇大賞の授賞式が東京・帝国ホテルで開催された。24回目を迎える同賞は、古典から現代劇まで幅広く網羅し、舞台芸術の活力となることを願った賞だ。今回の大賞には、初のスタッフとして美術の堀尾幸男が輝いた。また、最優秀作品賞はミュージカル『ジャージー・ボーイズ』が受賞し、最優秀男優賞の中川晃教、優秀演出家賞の藤田俊太郎とトリプル受賞したことも話題となった。
※以下、登壇順。
◆杉村春子賞 三浦春馬
(ミュージカル『キンキーブーツ』の演技)
まず登壇したのは、三浦春馬。ミュージカル『キンキーブーツ』のローラ役で、新人を対象とした杉村春子賞を受賞した。選考委員最多の推薦による満場一致での受賞を受け、にこやかな笑顔でステージにあがった。
「この度は栄誉ある杉村春子賞に選出してくださいまして、本当にありがとうございます。こうして形となって、今、この賞を自分が手にしていると思うと、約3年前にブロードウェイのあの場所で『キンキーブーツ』を観て、この役どころに挑戦したいと心から願ったあの自分が、本当に懐かしいです。その思いが舞台で現実し、この賞に繋がっているんだなと思うと、これまで支えてくださった関係者の皆様に本当に感謝していますし、『キンキーブーツ』を観に来てくださった皆様にも本当に感謝しています。一番は、僕を支え続けてくれたアミューズのスタッフ、そして家族です!言葉にならない感情が、心から湧き上がってくるのを感じています。この賞をいただいたことによって、ミュージカル、そして、演劇を日本の皆様に身近に感じてもらえるように、微力ですが、もっともっと努力をしていきたいと思います。本日は、本当にありがとうございました」
◆選考委員特別賞 三浦基
(『ヘッダ・ガブラー』『桜の園』の演出)
選考委員特別賞を受賞したのは、劇団「地点」の演出家、三浦基。海外の名作を多数上演しており、今回はイプセン作『ヘッダ・ガブラー』とチェーホフ作『桜の園』を、独自の大胆な解釈で上演したことが評価された。『ヘッダ・ガブラー』は優秀作品賞も受賞している。
同時受賞について驚きを述べると共に「特別なのは僕ではなく、今まで支えてくれた人たちなんだと思って、しみじみしました」と、三浦が“特別だと思う人”の名前とエピソードを読み上げ、劇団を代表して感謝を述べた。去り際「あっ、もう一言だけいいですか」とマイクへ戻った三浦は、受賞した『ヘッダ・ガブラー』が5月の連休に京都のアトリエアンダースローで上演決定したことを発表。「もう諦めて、京都に来てください(笑)」と笑顔で締めくくった。
◆最優秀演出家賞 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
(『8月の家族たち』の演出)
優秀演出家賞を受賞したのは、千葉哲也(『いま、ここにある武器』『青』)、原田諒(宝塚歌劇団花組『For the people―リンカーン 自由を求めた男―』)、藤田俊太郎(『ジャージー・ボーイズ』)の3名。そして最優秀賞は『8月の家族たち』を演出したケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が選出された。
直前の藤田俊太郎の贈賞にて、客席から歓声と掛け声があがったことを受け、「ヒューヒュー言っていいですよ」との一言から始まったKERAのコメント。参列者からは笑いと声援が沸き起こり、KERAらしい笑い溢れるスピーチが行われた。
演出家賞の受賞については、「演出家賞というのは演出の仕事に対していただくものだと思うんですけども、果たして演出の仕事というのはどこまでなのか・・・。ほとんど何もしない演出家もいるし」「審査員の方々は稽古場にいらっしゃるわけではないのでご存じないじゃないですか。だから僕は、僕の仕事ぶりをビデオなど撮ってちゃんと証明したいですね」と笑わせた。
また「『最近脂がのってますね』なんて言われますけども、2001年くらいにも言われたんです。それからパタッと言われなくなりまして。16年ほどしてまた言われるようになったので、次回脂が乗るのは2033年の予定となっております。お楽しみに」と最後までウィットに富んだコメントを述べた。
終始笑いに包まれたKERAのコメントだったが、直後に優秀女優賞の贈賞のために登壇した、前回受賞者の小池栄子は、KERAの発言を受け「KERAさんはちゃんとお仕事されています。毎日毎日、ものすごく細いダメ出しをちゃんともらっていますので、私がさっきの言葉を証明したいと思います」と激励した。
◆最優秀女優賞 鈴木杏
(『イニシュマン島のビリー』『母と惑星について、および自転する女たちの記録』の演技)
優秀女優賞を受賞したのは、轟悠(宝塚歌劇団花組『For the people―リンカーン 自由を求めた男―』)、濱田めぐみ(『ジキル&ハイド』『Tell Me on a Sunday ~サヨナラは日曜日に~』)、山本郁子(『越前竹人形』『舵』)、吉田羊(『エノケソ一代記』)の4名。そして最優秀賞は『イニシュマン島のビリー』『母と惑星について、および自転する女たちの記録』に出演した鈴木杏が選出され、喜びを噛み締めた。
鈴木は2003年の初舞台『奇跡の人』を振り返り「その時から私はずっと演劇に・・・恋をしっぱなしです。舞台の上に立っていると、照明は暖かく太陽のように照らしてくれて、板(舞台)は大きく大地のように包み込んでくれて、厳しくも、とてもとても自由になれる、私にとって大事な場所だなあと日々感じています」まっすぐ丁寧に、一言一言、言葉を紡いだ。また、昨年逝去した蜷川幸雄氏についても「なかでも、とてもたくさんの大事な種を私に植え付けてくださった蜷川幸雄さんが昨年お亡くなりになって、一つ帰る場所をなくしたような、とても心細いような気持ちでいました」と振り返った。しかしその後、森新太郎、栗山民也、野田秀樹らと仕事をしたことで「何か大きなものに運んできていただいているような、また、未来に繋げていってもらっているような気持ちがしています」と、感謝とこれから歩む思いを語った。
最優秀男優賞を受賞した中川晃教の涙と感謝のコメント、大賞・最優秀スタッフ賞を受賞した堀尾幸男のコメントをレポートする。
(取材・文・撮影/河野桃子)