2019年7月に、赤堀雅秋の最新作『美しく青く』の上演が決定した。2年ぶりの書き下ろしとなる本作は、シアターコクーン30周年記念公演として行われる。赤堀がシアターコクーンで作・演出を手掛けるのは、『殺風景』(2014年)、『大逆走』(2015年)、『世界』(2017年)に続く4作目。今回は、原発の街にある仮設住宅を舞台に、どこにでもいる青年の愚鈍で実直に生きる姿と市井の人々の日常をスケッチし、その中にある絶望、そして希望を浮き彫りにする。
主演を務めるのは、4月からTVドラマ『わたし、定時で帰ります。』への出演が控える向井理。赤堀雅秋とは、これが初タッグとなる。共演には、田中麗奈、大倉孝二(ナイロン100℃)、大東駿介、横山由依(AKB48)、駒木根隆介、森優作、福田転球、銀粉蝶、秋山菜津子、平田満、そして赤堀自身も出演する。
発表にあたり、向井と赤堀より以下のコメントが届いた。
◆向井理
今まで個人的に赤堀さんの演出する舞台は何度も拝見していました。一見どこにでもいるような人々や、その生活を生々しく描くことで、自分とは何かを見つめるような世界に、いつしか自分も染まってみたいと思っていたので、オファーをいただいて嬉しい反面、その世界を創らなければいけない責任も感じます。
赤堀さんは、舞台の上では大胆不敵、物語を揺さぶる存在ですが、実際は作品同様、繊細で緻密な印象です。念願の赤堀ワールド初参加。今回もとある市井の人々を描いてはいますが、「生きる」ということの面倒くささや、汚い部分、きれいごとだけではない人間性も表現されると思います。しかし、それは避けては通れない。それを目の当たりにした人にしか見られない何かを見つけてもらえる作品にしたいと思います。
◆赤堀雅秋(作・演出)
特に新たな試みをしようとは思っていません。凡庸な庶民の生活を凡庸にスケッチする。ただ今まではどちらかというと近視眼的に描いてきたスケッチを、今回は『美しく青く』と自分らしくないタイトルをつけたように、もう少し俯瞰で描けたらなと。より冷徹な目線で「現実」というものを浮き彫りに出来たらなと思います。
それが希望の物語となるか、破綻の物語になるか、正直今のところはわかりません。
諸行無常の儚さ、忘れ去られる恐ろしさ、その地続きにいる我々、空や海はいつでも美しく青く、そういう現実を描きたいです。
向井理さんは、実直な方なのだろうなという印象。色々な思いはマグマのように内に秘めていたとしても、それを漏らさず、呑み込みながら遂行するイメージ。きちんと地に足つけて生きているイメージです。
シアターコクーンでまたチマチマした演劇をやります。チマチマした演劇をシアターコクーンでやることに意義を感じます。それが僕の仕事です。という意思表明です。
『美しく青く』
それは畏怖の念でもあり、祈りでもあります。
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019『美しく青く』は、7月11日(木)から7月28日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーンにて、8月1日(木)から8月3日(土)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。東京公演のチケット一般発売は5月19日(日)から開始。
【あらすじ】
※現時点でのストーリー及び役名となるため、変更の可能性あり
原発の町。
震災で両親と弟を失った立花哲也(向井)は、盛んになってきている原発再稼働反対運動をわき目に、悲しみを押し殺し、日々生活のために原発で働いていた。浅い知識でサッカーを語ったり、大しておもしろくもないテレビドラマを心待ちにしながら、元ヤクザだという同僚の西健二郎(大東)と、何とはない日常を過ごしている。
ある日、哲也はなけなしの金で行った風俗の風俗嬢の杉田美咲(田中)と出会い、恋に落ちる。美咲は哲也の暮らす仮設住宅に転がり込み、風俗を辞め工場で地道に働くようになった。町にごまんといるような凡庸な二人は、それでも懸命に、生活し、懸命に愛し合う。
二人の家の隣には無職の若林春樹(赤堀)とその妻・若林聖子(秋山)が暮らしている。聖子からは、ことあるごとに難癖をつけられ、その度に哲也は平身低頭で謝り続ける。役人の土井秀樹(大倉)が仲裁に入るが、関係はさらにこじれていくのであった。向かいに住む鈴木博(平田)という老人は、煮物の余りをおすそ分けしてくれるなど、何かと哲也と美咲に優しく接してくれていたが、都会に住んでいる息子からの同居の誘いには、頑なに拒否を続けていた。都会からボランティアへやって来た若者、山田隆(森)と田辺真紀(横山)は自治会長の望月行雄(福田)の指示のもと必死に活動し、仮設住宅の住人ともコミュニケーションを取ろうとするが、行動や理念は立派だがどこかチープさが透けて見えている。
やがて哲也は美咲との結婚を望むが、彼女は拒み続ける。哲也は強引に美咲の母・杉田正美(銀粉蝶)に会いに行くが、美咲は幼い頃から母を嫌っており、さらには、美咲の兄・杉田治(駒木根)は原発反対の運動に参加しているため、原発で働く哲也を認める訳にはいかないのであった。
しかし、鈴木老人の提案で半ば強行ではあるが、哲也と美咲の結婚式を仮設住宅の広場で挙げることになり・・・。