稲垣吾郎が魅せる!“人間”ベートーヴェンの苦悩と歓喜『No.9 -不滅の旋律-』開幕

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稲垣吾郎主演の舞台『No.9 -不滅の旋律-』が、2018年11月11日(日)に東京・TBS赤坂ACTシアターで開幕した。本作は、脚本を中島かずき、演出を白井晃が手掛け、数々の名曲を残した“楽聖”ベートーヴェンの波乱に満ちた人生を、新しい視点から描いた作品。初演となった2015年も、ベートーヴェン役を稲垣が務め、ハマり役として大きな話題を呼んだ。開幕に先駆けて行われた囲み会見には、稲垣が登壇。再演に向けての意気込みを語った。

仕上がりに、「3年前よりさらにパワーアップしたものをお届けできると思います」と自信を見せる稲垣。今回、半分以上新キャストに変わっていることにも触れ、「キャストが代わればお芝居も変わるので、稽古はゼロからのスタートでした。皆さん、役にピッタリなんですよ。一度観た方にも新たな楽しみを感じていただけると思います」と語った。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真4

本作の中で大きな存在を示す架空の人物、マリア役は、新キャストとして剛力彩芽が務める。剛力の印象については「すごく真面目な方」とコメント。「このお話は何十年にも渡る時代を描いているので、ベートーヴェンを演じる僕も、マリアを演じる剛力さんも、40代、50代まで演じます」と、見どころも語った。

初演でも、ベートーヴェンは稲垣の“ハマり役”という呼び声も高かった。自信との共通点を問われると、「うーん・・・ヒステリックなところ?最近、香取(慎吾)くんや草なぎ(剛)くんに、“ヒステリックゴロチ”って呼ばれるんですよ(笑)。普段は隠しているのですが、結構そういうところあるんですよね・・・。何十年も一緒にいるので、隠してもバレてしまうんです。家族みたいなものですから。でも、そういうところもベートーヴェンを演じるにあたり、活きていると思います」と笑う。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真2

また、公演前にはオーストリアのウィーンに行き、ベートーヴェン縁の地も訪ねたそうで、「“天才”ベートーヴェンを“人間”ベートーヴェンに感じられました」と、さらに役への理解を深めた様子。

本公演は、東京、大阪、神奈川、福岡の4都市で、年をまたいで上演される。稲垣は、この1年を振り返り、「本当に多くの方に力を貸していただき、感謝の気持ちでいっぱいです」と謝意を表した上で、「舞台は応援してくださっている皆さんに会える機会。NAKAMA(「新しい地図」ファン)の皆さんはもちろん、多くの方に、劇場へ足を運んでいただけたら。がんばります!」と決意を新たにしていた。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真3

なお、稲垣に加え、初演から片桐仁、深水元基、広澤草、小川ゲン、長谷川初範が続投。そして、剛力のほか、村川絵梨、鈴木拡樹、岡田義徳、橋本淳、野坂弘、奥貫薫、羽場裕一が加わっている。

(以下、物語の一部に触れています)

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真7

【あらすじ】
1800年、オーストリア・ウィーン。作曲家のルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(稲垣)は、聴覚障害に犯され始めていた。音楽と孤独に向き合い、身分の差から恋人ヨゼフィーネ・フォン・ブルンスヴィグ(奥貫)ともうまくいかず、荒ぶ毎日。そんな中、ピアノ工房で出会ったマリア・シュタイン(剛力)や、二人の弟、カスパール・アント・カール・ベートーヴェン(橋本)とニコラウス・ヨーハン・ベートーヴェン(鈴木)をはじめとする周囲の人々との触れ合いが、彼に変化をもたらし始める。

国の情勢が刻々と変化していく中、ナポレオン軍の敗北をテーマとした「ウェリントンの勝利」で成功を収めたベートーヴェンは、頭の中に鳴り響く音楽をひたすら楽譜に書き留め、名曲を生み出していく。その一方で、幼少期に父親から受けた仕打ちの影響で、幻影に悩まされていた。それを自覚しながらも、自ら後見人になった次弟カスパールの息子・カール(小川)に自分の音楽のすべてを託そうと、異常なまでに執着してしまう。そして迎えた「第九」の演奏会。その創造的な試みに対する聴衆の反応は、彼の耳に届いたのか?ベートーヴェンが生涯を賭けて問いかける本当の芸術とは・・・。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真6

稲垣が体現するベートーヴェンは、3年の時を経て、より一層“凄み”を増したように感じた。天才が天才たる所以を見せつけながらも、偏屈で癇癪持ちで、傷つきやすい孤高の魂。稲垣の体当たりの演技は、ベートーヴェンという後世に名を残した人物を、一人の“人間”として存在させ、“天才”として輝かせる。そのバランスからは、稲垣自身が役者としての円熟期に入ってきたことを感じさせた。

剛力が演じるマリアは、架空の人物だが、ベートーヴェンの人生を考える上で、たくさんの要素を持った人物だ。脚本を手掛けた中島の、キャラクター造形、時代背景を含ませる巧さが際立つ。舞台経験はまだ少ない剛力だが、その凛とした佇まいは役どころにピッタリ。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真5

また、橋本と鈴木が演じるベートーヴェンを支えてきた弟二人、村川が演じるマリアの姉・ピアノ職人のナネッテ、岡田が演じるその夫ヨハン、片桐が演じる発明家メルツェル、奥貫が演じる想い人ヨゼフィーネらとの関係、それぞれの間に横たわる想いが、ベートーヴェンという人物の造形を一層深めていく。

そして、物語を包み込む“音楽”。三宅純が音楽監督を手掛け、誰もが知る名曲の数々を常にベートーヴェンの人生に寄り添わせる。舞台の上手と下手には、ピアニストの末永匡と富永峻が常に控え、生演奏で音のベートーヴェンを担う。白井の演出は、まるでダイナミックなフォルテと繊細なピアノを丁寧に刻んだ譜面。ピアノの屋根を持ち上げて中を覗いてみたら、ウィーンの街並みが見えてきそうだ。そして、そこには苦悩の果てに輝く“歓喜”の瞬間が待っている。

『No.9 -不滅の旋律-』再演_舞台写真8

木下グループ presents『No.9 -不滅の旋律-』は、12月2日(日)まで東京・TBS 赤坂ACTシアターにて上演。その後、大阪、神奈川、福岡を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。上演時間は、1幕:70分、2幕:100分、休憩20分を含む計3時間10分を予定。

【東京公演】2018年11月11日(日)~12月2日(日)TBS 赤坂ACTシアター
【大阪公演】2018年12月7日(金)~12月10日(月) オリックス劇場
【神奈川公演】2018年12月22日(土)~12月25日(火) KAAT神奈川芸術劇場 ホール
【福岡公演】2019年1月11日(金)~1月14日(月・祝) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

※草なぎ剛のなぎは弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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