2018年9月14日(金)に映像宇宙アクション『LADY OUT LAW!』が東京・品川プリンスホテル クラブeXにて開幕した。その初日前日に囲み会見と公開ゲネプロが行われ、主演の矢島舞美、味方良介、鈴木勝吾、小野健斗、松井勇歩、増子敦貴、日比美思、神尾佑、および作・池田純矢、演出・岡村俊一が登壇した。
本作は、俳優であり“エン= Entertainment:娯楽+ゲキ=Act:芝居”をコンセプトにした企画「エン*ゲキ」を立ち上げた池田による新作書き下ろし。半身が機械仕掛けとなった少女を、アイドルグループ「℃-ute」の元メンバーである矢島が務め、広大な宇宙を舞台に繰り広げるハードアクションを描く。
【あらすじ】
舞台は第三次世界大戦後。戦争により荒地と化した地球を捨てた人類は、宇宙ステーションに移り住む。その一つである【ステーション・ユートピア】は戦争、飢餓、差別とは無縁の独立国家。そこで人々は幸せに、慎ましく生活を営んでいた。そんな中突如現れた、半身が機械仕掛けの少女。彼女の目的はこの世界を破滅へと導くこと。正義か?悪か?本当のOUTLAWは誰だ・・・。
本作の脚本について、演出を務める岡村は「池田くんはぶっ飛んでいます(笑)。基本的なエネルギーがないと作家って長生きできないんですけど、それが確実にある作家です。僕が死んだあと、池田純矢が(演劇界を)席巻するじゃないかと思うくらいのパワーがある」と絶賛。
岡村は、近年も舞台『あずみ~戦国編』で川栄李奈を主演に迎えて迫力ある作品を演出するなど、最近はアイドルを女優にする仕事をよく手がけているという。そのために「矢島舞美を“ぶち壊した”」と挨拶した岡村は、「『いきなりそんなテンションになれと言われても』という戯曲なので、相当苦労しました(笑)。でも、矢島もちゃんと壊れてくれて、アナーキーな世界の中を生きてくれています」と、矢島の壊れっぷりに太鼓判。
セットはバックのスクリーン以外は無く、出演者の衣装もクールで真っ白と非常にシンプル。だが、プロジェクションマッピングでその白い衣装に映像を重ねるなど最新映像技術を駆使し、ステージをユートピアの艦内に見立てることにより、そのシンプルさが逆に観る者の想像をかき立てる。さらに、都内でも数少ない円形劇場である品川プリンスホテル クラブeXを活かした演出により、どの角度から観ても迫力あるノンストップでハードなアクションを堪能できる作品となっている。
ハードSFな世界観で、まさしく“OUTLAW”な名も無き女主人公を演じる矢島は役柄について、「ある目的を果たすために宇宙をさすらっているんですけど、その中で精神的にも肉体的にも強くなっていく女性です」と説明。その設定を踏まえて、役作りについて「そのため、あまり弱い所を見せないというのが、私の中の課題でもあって、発している言葉の裏側もちゃんと観てくれる人に届くようにと、葛藤しながら稽古しました」と振り返る。
刀を武器にハイスピードでノンストップに大立ち回りを繰り広げる矢島。稽古では汗だくで衣装を3回も着替えていたというが、アクションの中で訪れる一瞬の間において、顔からしたたり落ちる汗はアクションシーンの中でさらなる緊張感を生み出している。特に、矢島と日比の2人による殺陣はスピード感マックスで迫力満点。感情を爆発させる矢島と、無表情で襲い来る日比の対比がおもしろい。
また、アクションだけでなく、岡村が“ぶち壊した”というその先にある矢島の演技についても注目だ。ラスト間際の長台詞で最高潮に達する矢島の新境地を最後まで目を離さずに観て欲しい。
味方は、偶然に主人公と出会うユートピアの保安官役。生真面目で正義感を胸に秘め、保安官らしいガンアクションを華麗に披露する。日比が演じるのは、保安官の妹ルナ。教会のシスターであり、穏やかで心が温かい少女だったが、ある理由から戦いの場に現れる。ほほ笑みを失い、無表情で、体術と双剣を用いて踊るようにアクションをこなす姿が印象的だ。
戦争孤児としてスラムへと成り果てたたステーションからユートピアに流れ着いた青年たちを演じるのは、鈴木、松井、増子の3人。ハードでシリアスな物語の中に、3人はそのやり取りで笑いをもたらし、アクションシーンでも、キャラクターに合った荒々しいバトルを見せつける。
ユートピアの総裁にして、教会の大司教役の神尾は大ボス感のあるオーラ全開の演技を見せる。大司教の側近である修道長を演じる小野は冷徹で無慈悲な役柄をクールに演じきる。そして、久保田創は得体の知れないドクター役を怪演。
さらに、本作では劇中にゲストが“日替わりセールスマン”という役で登場するという。ゲネプロでは池田が出演し、自由奔放な演技を見せて会場の笑いを誘った。また、劇中では要所で観客に参加してもらう観客参加型のスタイルが採られている。前説で事前に説明が行われるので、存分に舞台というエンターテインメントを楽しんでもらいたい。
なお、初日挨拶のコメントを以下に紹介する。
◆矢島舞美(主人公)
今まで稽古でやってきたことを自信を持って、本番に全部ぶつけていきたいと思います。がんばります!
◆味方良介(保安官)
1ヶ月みっちり稽古して、僕らだけの新しい演劇ができた気がしています。これがお客さんにどう届くのか本番が楽しみです。
◆鈴木勝吾(ボロ)
作の池田純矢と友達でもありますし、新しい現場で作ったものを、しかも円形劇場という場所で、観に来てくださる皆様が楽しんでいただけたらいいなという思いが一番です。詰まってるメッセージはたくさんありますけど、この空間で僕らと一緒にお客様と楽しんでいきたいです。
◆松井勇歩(クズ)
喉が本調子に戻りました(笑)。(※8月末に開催された本作の制作発表で声を枯らしていた)全力でいけると思います! 楽しんでください!
◆増子敦貴(チリ)
円形劇場で映像を使い、最新技術を駆使したすごい舞台なんですが、本番が本当に楽しみです。がんばります!
◆小野健斗(修道長)
涼しくなってきたんですが、また夏に戻ったような熱い物語を見せられたらなと思います。
◆日比美思(シスター・ルナ)
お客様が入れば、また違う景色になると思います。本番がすごく楽しみです。
◆神尾佑(大司教)
暑い中、皆で稽古をしてきて、矢島舞美が汗だくでがんばっております。千秋楽まで怪我のないようにがんばっていきたいと思います。
◆岡村俊一(演出)
最近、アイドルの方を女優や俳優にするという仕事をよくやっています。そのためには、壁を取っ払って、心にかかっているブレーキをぶち壊さないといけない。1ヶ月で矢島舞美をぶち壊してみました。スパークする矢島が見られると思います。
◆池田純矢(脚本)
今日のゲネプロでは、僕は半分以上、お客さんのつもりで楽しみたいです(笑)。「アイドルだった矢島舞美ちゃんが女優になる」という本を書いてくれとオーダーされたので、そういうつもりで、書いている時は世界中の誰よりも矢島ちゃんを愛して書きました。
舞台『LADY OUT LAW!』は、9月24日(月・祝)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演。
【公式HP】http://lady-out-law.com/
(取材・文・撮影/櫻井宏充)