横浜で復活した劇団鹿殺しの路上パフォーマンスをレポート!7月7日・8日は下北沢で

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2018年8月に、ストロングスタイル歌劇『俺の骨をあげる』上演を控える劇団鹿殺し。鹿殺しの面々が関西から上京してきた直後、路上パフォーマンスを行っていた・・・という話を、語り草として耳にしたことがある方も多いのではないだろうか。しかし、最後に行われたのはもう5年も前のこと。そんな伝説的パフォーマンスが、横浜と下北沢で“復活”するという情報を聞きつけ、現場を直撃してきた。

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その模様を、直後に行った菜月チョビ、オレノグラフィティのインタビューを交えながらレポートする。取材を行ったのは、6月30日(土)に神奈川の横浜駅西口 横浜ビブレ横特設ステージで行われたパフォーマンス。前日に出た梅雨明け宣言のとおり、見上げれば、頭上には晴れすぎと言えるぐらいの青空が広がっていた。

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路上には、呼び込みをする劇団員に混じり、雄鹿と雌鹿の姿も・・・。この日は、12:00/14:00/16:00/18:00の4回パフォーマンスが行われた(取材回は14:00の回)。晴天の下、正装に身を包んだ劇団員たちが着々と準備を進める。周辺には鹿殺しTシャツやタオルを身につけたファンが、すでに集まり始めていた。そんな様子を、通行人たちは「何者?」と言いたげに、遠巻きに眺めたり、足を止めたり。

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開始前、マイクチェックのためステージに上がる菜月。「劇団鹿殺しと申します。ちょっと怖い名前ですけど、一頭も殺めたことはございません!」などと自己紹介しながら、「10分程度のパフォーマンスです、よかったら見ていってくださいね~」とアナウンスを繰り返す。

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鹿殺しが路上パフォーマンスを始めたのは「劇場に足を運ぶ習慣がない人こそ、劇場に呼ばないと未来がない」という思いからだったという。菜月は「関西は、東京よりさらに(劇場に足を運ぶ人の)分母が少ないから、広がりを求めて路上に出たんです。ミュージシャンの方と並んで、演劇もかっこいいって思ってもらえるように修行して強くなっていこうと思って」と、当時の動機を振り返る。

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手応えを感じ始めたのは、始めて半年後。「まだお客さんが少なかったということもあるんですが、(劇場での公演を)観に来てくれる方のうち、半分ぐらいが路上のお客さんになったんですよ。劇場に足を運んだことがなさそうなギャルとかカップルとか、演劇のえの字も知らなそうなサラリーマンが来てくれたり・・・すごくおもしろい客席になったことが、誇らしかったです」と菜月。

この日も、「鹿殺しって何?」「演劇なの?」といった会話をしながら足を止める学生さんから、「鹿さんが何かやってるよ!」と無邪気に親の手を引く子どもまで、多様なライフスタイルを持つ人々が、ステージへと目を向けていた。

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定刻になると、トランペットの音色が高らかに鳴り響く。「それでは、劇団なので・・・」と、始まったのはストレッチ。「右上!」「左上!」菜月の掛け声の中、よーく耳を済ませると、シュッ!シュッ!という空気を切る音が聞こえてくる。役者自らが声で音を付け、ストレッチを演出しているのだ。ストレッチも、演出も、演劇の大事な要素である。

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一体、何が始まるんだろう?と注目が集まる中、低いベース音と共にメンバー紹介が始まった。ベースは橘輝&浅野康之、ギターはオレノグラフィティ、ドラムは高橋戦車&峰ゆとり、そして、ボーカルは菜月チョビ。ライブパフォーマンススタイルに特化したユニット、これが「劇団鹿殺しRJP」である。楽器は一切持たず、演劇ならではのテクニックで“バンド”を表現する。

この日の1曲目は「燃えて鹿殺し」。パンチの効いた菜月の歌声が、横浜の地に響き渡る。上京してきた当時、路上パフォーマンスが出来る場所を求めて、鹿殺しは横浜まで足を伸ばしていたという。「ただいま、横浜~!」と叫ぶ菜月の姿は、当時を知る人が観たら(物理的な意味ではなく)何倍も大きく見えたことだろう。

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続いてオレノグラフィティが、ライブの定番曲「タオパイパイ」を繰り出す。耳馴染みの良い言葉に、思わず笑いながら振り向く通りすがりの人々。エッジの効いた音楽に煽られ、青空に「タオパイパイ!」のコール&レスポンスが響き渡った。

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「こういうの好き(笑)」と言いながら、歩を止める若者。遠巻きに観ていた人たちの足が、じりっとステージに近づく。路上で生まれるのは、リアルなコミュニケーションだ。オレノグラフィティは「舞台では、カーテンコールまでお客さんの顔って見えないんですよ。でも路上では、これだと笑って、これでは笑わないんだ、みたいなことが全部見えるんです。それを若い時に経験しておけたのはよかったなと思います」と語る。

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今回のステージは、最もサバイバルな状況で行われていた頃の路上パフォーマンスとは違い、きちんと用意されたステージだったが「楽しみに来てくれた方々、たまたま居合わせて立ち止まってくださる方々、割合は昔と違うけれど、この感覚はとても懐かしいです」と菜月。3、4曲目に披露された橘ボーカルの「わき毛」「せな毛」では、ステージから鹿殺しが観ている風景の変化を思うと、やけにセンチメンタルな気持ちにさせられた。

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残り2曲、オレノグラフィティボーカルの「引出物」では頭上でタオルが振り回され、「絶好調音頭」では、ステージ上で舞う劇団員たちに合わせ、集まった人々が手を振り上げる。最後は「本日お集まりいただいたことに感謝をいたしまして、横浜のご成功とご多幸、劇団鹿殺し夏公演の大成功を祈念いたしまして!」という菜月の掛け声と共に一本締めが行われ、久しぶりの路上パフォーマンスは終了した。

時間にして10分。菜月曰く、この10分という時間が“肝”だと言う。10年前に始めた当時は、小芝居のようなものもやっていたそうだが「通りすがりの方も、何か用事があってそこを歩いていらっしゃると思うので、その予定を邪魔しない程度を考えると、10分ぐらいが勝負できる時間かなと」。わずかな時間に思えるが、ステージ周辺の空気は確実に変わっていた。

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鹿殺しにとって、音楽は“武器”だ。作詞、作曲・・・様々な音楽面で大きな役割を担うオレノグラフィティは「音楽を通せば、演劇畑の人だけじゃなく、違う畑の人とも近くなれるんですよね。その切り開くツールとして、今後も作っていけたらと思っています」とコメントしていた。

次の路上パフォーマンスの場は7月7日(土)・7月8日(日)の2日間、“演劇の街”東京・下北沢にて。7日(土)は、下北沢音楽祭のらいぶはうす道 at 下北沢ケージでトップバッターを務める。8日(日)は、下北沢南口「はちく」前にて、10年前と同じ完全路上スタイルで行われる(どちらも観覧無料)。

「次の本公演『俺の骨をあげる』も音楽劇です。鹿殺しを観たことがなくて、どんなだろう?と思っている方は、路上が真髄というか、鹿殺しのスピリッツを感じてもらえると思うので、気軽に観に来てほしいです」(菜月)

「本公演ですが、毎回今までの一番の名作を作ろうと思ってやってきて、また今回も更新しちゃうと思います(笑)。人生と命をかけて作るので。本公演を気軽に観に来れないという方こそ、路上に足を運んでもらえたらと思います」(オレノグラフィティ)

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鹿殺しの基盤を築いたと言っても過言ではない路上パフォーマンスだが、次にいつ観ることができるのか分からない。この貴重な機会に、ぜひ、通りすがってほしいと思う。

◆劇団鹿殺し 路上パフォーマンス詳細
【日時】7月7日(土)13:00~13:30
【場所】下北沢ケージ(南口 京王電鉄高架下、本多劇場斜め前)
【時間】13:00~13:30
【詳細】https://shimokita-fes.com/28th/cage

【日時】7月8日(日)12:00~12:30/13:30~14:00 ※2ステージ
【場所】下北沢南口「はちく」前(本多劇場からみん亭に向かう途中)

◆劇団鹿殺し本公演 ストロングスタイル歌劇『俺の骨をあげる』
【大阪公演】8月10日(金)~8月12日(日) 大阪・ビジネスパーク円形ホール
【東京公演】8月15日(水)~8月19日(日) 東京・サンシャイン劇場

【劇団鹿殺し公式HP】http://shika564.com

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)

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