日比谷シアタークリエ開場の10周年の記念し、2018年始から上演されている『TENTH(テンス)』。本公演では、シアタークリエで日本初上演されたオフ・ブロードウェイ発のミュージカル『ネクスト・トゥ・ノーマル』『ニュー・ブレイン』『この森で、天使はバスを降りた』の3作を、第1部に凝縮し週替わりで上演。合わせて、第2部ではシアタークリエになじみの深いミュージカル俳優たちが集うガラコンサートを行っている。
第3週目となる1月24日(水)から1月31日(水)までのガラコンサートには、日本版『RENT』に出演してきた歴代キャスト、2013年に上演された『ZANNA ザナ ~a musical fairy tale~』のキャストが集結。公演前に行われた第2部ゲネプロの模様を、舞台写真と共にレポートする。
(歌唱楽曲・歌唱キャストに触れていますが、本公演は日替わりとなっています)
印象的なイントロが流れる中、ステージには9名の影が浮かび上がる。並んでいたのは、村井良大、ユナク、光永泰一朗、平間壮一、ソニン、宮本美季、田中ロウマ、上木彩矢、Spi。日本版『RENT』のファン・・・レントヘッズには、たまらない顔ぶれだ。冒頭歌われたのは、名曲中の名曲「Seasons of love」。ソロパートは、宮本とSpiが務めた。
この9名は、それぞれ2008年版から2017年版に出演している。複数年出演しているキャストがほとんどだが、中にはここが初顔合わせとなる人も(村井と田中はこの日が初対面だったそう)。また、ミミ役・モーリーン役と二役を経験しているソニンは、この日はミミ役として出演。日によってはモーリーン役になるようで、「やることが多いの!」と笑っていた。
あくまでもガラコンサートなのだが、それぞれが役として楽曲を披露してくれる。「One Song Glory」では、2015年版・2017年版のロジャー役、ユナクがもどかしい胸の内を爆発させれば、「Today 4 U」では2015年・2017年のエンジェル役、平間がドラァグクイーンの衣裳を翻しながら、あの難易度の高いダンスを実に軽やかに見せてくれた。
続いては、ミミのソロ曲「Out Tonight」。ソニンのセクシーなダンスとパワフルな歌声は、上演当時の記憶の中より何倍も輝きを増していて、様々な大舞台を経て多くの実りを得たソニンの成熟を感じさせた。叶うならば、もう一度『RENT』の舞台でソニンの姿を観たいと願ってしまう。
ここからはデュエットへ。2017年版のエンジェル&コリンズ、平間と光永による「I’ll Cover You」。ニコニコと笑みを交わす二人の姿は、楽曲の優しいメロディとあいまって、とても微笑ましい。曲の途中では平間が、つなごうとした手を寸前で引っ込め「今(手を)つなげると思ったでしょ?・・・まだつながな~い(笑)」と焦らすイタズラを仕掛けるシーンも。
対して、2015年版・2017年版のジョアンヌ&モーリーン、宮本と上木のコンビは「Take Me Or Leave Me」で、2015年版・2017年版のマーク&ロジャー、村井とユナクは「What You Own」で熱い情熱をぶつけ合う。最後は、再び『RENT』キャストが一同に会し“noday but today”と歌い上げ、劇場いっぱいに“今しかない”瞬間を届けた。
次に、『ZANNA ザナ ~a musical fairy tale~』(以下『ZANNA』)より渡部豪太、高垣彩陽、東山光明、岡田亮輔が登場。そして、田中、上木、Spiはこちらの出演者でもある。『ZANNA』は、2013年2月に日本初演された作品で、異性愛がマイノリティであり、男性同士、女性同士の恋愛が普通という世界で、魔法使いのザナが奮闘するちょっと変わったラブ・コメディ。
キャスト陣が久しぶりに顔を揃えたように、シアタークリエでミュージカルに親しんできた方にも懐かしい作品なのではないだろうか。こういった再会があるのも、ガラコンサートの楽しさの一つだ。
歌われたのは「君にわかる?」「いつか来るかもしれない日」というバラードナンバー。若者たちのちょっと切ない思いがひしひしと伝わる2曲だったが、『ZANNA』は“ラブコメ”なので、明るくハッピーな楽曲も満載。高垣は、『TENTH』1週目に登場していた新納慎也の「ダイジェストでは、その作品の2%ぐらいしか伝わらないんです」という言葉を、新納のモノマネ(?)を交えながら紹介し、「シアタークリエさん、ぜひ再演を!」とアピールしていた。
本来の『ZANNA』は、ラブコメなので、ハッピー感に満ちた明るい楽曲が多く登場する。高垣は、それを『TENTH』1週目に登場していた新納の言葉を再び借りながら「この『TENTH』はいろんな作品をダイジェストでお届けしていますが、その作品の2%!ぐらいしか伝わらないので、シアタークリエさんのここから先の10年のどこかで、ぜひ再演を!」と熱望していた。
最後は、『ZANNA』のオープニングナンバー「Extra Love」を、『TENTH』スペシャルバージョンとして全員で大合唱。愛したい人を自由に愛せるように!大きな愛を描いたこの作品が、また日本で上演されることを楽しみに待ちたい。
フィナーレでは、『RENT』『ZANNA』のキャストがステージ上に揃う。ソニンが、歌詞を読み上げ紹介したのは「Love Heals」。『RENT』を作り上げたジョナサン・ラーソンが、HIVサポート団体へのチャリティソングとして作ったこの楽曲を全員で歌い上げ、コンサートを締めくくった。
このほか、3週目、そして『TENTH』のラストを飾る1月30日(火)と1月31日(水)には井上芳雄、坂本真綾、昆夏美、白羽ゆり、高橋愛が登場(この2日間に関しては、第2部、第1部の順番で上演される)。3週目の第1部『この森で、天使はバスを降りた』と共に、日替わりの楽しさを存分に味わってほしい。
シアタークリエ、10周年おめでとう!この先、20年周年、30周年と重ねる中で、どんな新たな出会いをもたらしてくれるのかを楽しみに、共に歴史を歩んでいきたいものだ。
シアタークリエ10周年記念公演『TENTH』は、1月31日(水)まで東京・シアタークリエにて上演。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)