1986年の日本初演以来、今年で32年目を迎えたミュージカル『アニー』。これまでに全国で約172万人もの人々に深い感動を与え続けてきた本作の33年目となる2018年公演のキャストオーディションが行われ、2017年10月29日(日)、アニー役を含む最終合格者14名が決定した。
本作は、1924年にアメリカの新聞に連載された漫画「ザ・リトル・オーファン・アニー(小さい孤児アニー)」をもとに、1977年にブロードウェイで誕生したミュージカル。世界大恐慌直後の真冬のNYで誰もが希望を失っているとき、どんな時でも夢と希望を忘れない11歳の赤毛の少女、アニーを描いた物語。11年前に孤児院に捨てられていたアニーは、いつか本当の両親が迎えに来てくれると信じて暮らしていたが、我慢ができず自分から探しに行こうと孤児院を脱出、そしてふとしたきっかけで大富豪のオリバー・ウォーバックスと出会い、アニーそしてオリバーの運命が大きく変わっていく―。
発表直前の様子
オーディションでは、6歳から15歳までの子どもを対象に書類審査、その後歌やダンス、ワークショップ演技などの実技審査が行われた。書類審査では422名に、最終選考までに約50人に絞られた候補者は、この日都内スタジオに集合し、彼女らを見守る親たちの前で合格発表の時を待っていた。緊張感漂うスタジオでは、黙り込んだままじっと一点を見つめている子、舞台の神様に祈るように両手を組み目をつぶっている子、時計を見ながら「発表まであと5分だよ」「もうすぐ始まっちゃう!」と声に出してみたり、ドアの向こうにいた大人たちを見つけては「あーもうすぐこっちに入ってきちゃう!」と、じっとしていられない様子だった。
皆、真剣です
定刻を迎えると、スタジオには2017年公演から本作の演出を務めることとなった山田和也、音楽監督の佐橋俊彦、振付・ステージングの広崎うらん他が登場。冒頭の挨拶では本公演の協賛・丸美屋食品工業株式会社の杉山典由が「今回の経験を今後いろいろな場で活かしてがんばっていただきたいです。私どもはこれからも『アニー』を応援し続けたいと思っています」と挨拶。
続いて山田が「今年のオーディションは昨年に勝るとも劣らない難しいオーディションでした。オーディションに向けて皆さんががんばってきたこと、オーディションの場でがんばってくれたことがとても伝わってきました。本当にすばらしかったです」と全員の健闘をたたえた。そしてオーディションについて「アニーを選ぶというよりは、日本のどこかにいるアニーにどうやって出会えるか、というオーディションだったと思います。このオーディションはアニーだけを選ぶのではなく、アニーの仲間たちとも出会う必要がありました。一人ひとりの資質やスキルは皆すばらしいので本当なら全員を選びたかったのですが、(アニーの)チームを組むにあたり、アニーとのバランスを考えないとならず、その結果、チームに入れることができなかった子もたくさんいました。だから今日選ばれなかったとしても決して何かが劣っていた訳ではまったくありません。あなたたちの可能性はたくさん広がっているので、次の『アニー』やほかの作品にもっと意欲的に楽しく取り組んでほしいと思います」と語りかけるようにメッセージを送った。
この紙に合格者の名前が!
「さて、あまり話をひっぱっても何なのでそろそろ発表しましょうか」と山田がそれまで机の上に置いていた一枚の紙を手に取ると、会場の興奮と熱気はピークに。
山田の口からいずれもWキャストとなる孤児のモリー役、ケイト役、テシー役、ペパー役、ジュライ役、ダフィ役を演じる子の名前が呼ばれると、呼ばれた子たちは一人ずつ「はい!」と返事、その場に立ち上がった。嬉しさのあまり泣き出す子もいれば、背後で見守っていた親に笑顔を送る子も。最後にアニー役(Wキャスト)の新井夢乃(あらいゆめの)と宮城弥榮(みやぎやえ)の名前が呼ばれると、わあっと歓声が沸き起こった。
以下、この日発表されたメインキャストを紹介しよう。
◆アニー役
新井夢乃(あらいゆめの)
宮城弥榮(みやぎやえ)
◆モリー役
尾上凜(おのえりん)
島田紗季(しまださき)
◆ケイト役
歌田雛芽(うただひなめ)
込山翔愛(こみやまとあ)
◆テシー役
音地美恩(おんじこころ)
林歩美(はやしあゆみ)
◆ペパー役
田中樹音(たなかじゅのん)
武藤光璃(むとうひかり)
◆ジュライ役
山下琴菜(やましたことな)
河崎千尋(かわさきちひろ)
◆ダフィ役
藤田ひとみ(ふじたひとみ)
山本樹里(やまもとじゅりい)
最後に、全員で本作のメインテーマ「トゥモロー」を合唱し、合格発表会は終了した。
その後、合格者たちによるフォトセッションを経て、二人のアニーと山田を囲んでの会見が行われた。
山田はアニー役に二人を選んだ理由について「アニーっぽかったとしか言いようがない。アニーに『形』を求めていないので、審査員全員が『アニーってこんな子だよね』と思ったのがこの二人だったんです」と説明した。
山田和也、新井夢乃、宮城弥榮
『アニー』のオーディションを受けるのはこれが二回目という新井、アニー役は初めてだがダンスキッズのオーディションは受けたことがあるという宮城。オーディションに向けて特にがんばったことを聞かれると、新井は「高音の出し方の練習をいっぱいしました」、宮城は「全部がんばったと思いましたが、特に(劇中歌の)『二人でいればいい』の高い音のところを、先生に教えてもらいながらがんばりました」と答えた。ちなみに学校の友人たちにオーディションを受けていたことは「まったく言っていない」という新井、「担任の先生に『アニー』のオーディションとは言ってないけれどオーディションなので学校を休みます」とだけ伝えたという宮城。今後の周囲の反応が気になるところだ。
将来はミュージカル女優になりたいという二人。宮城はタップダンサーになる夢も描いているという。来年4月の初日に向け、歩き出した二人の第一歩を応援したい。
丸美屋食品ミュージカル『アニー』は、2018年4月21日(土)から5月7日(月)まで、東京・新国立劇場 中劇場にて上演される。東京公演の他、地方公演も予定。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)