2017年9月21日(木)、東京芸術劇場 シアターウエストにて、勝地涼と笠原秀幸による演劇ユニット・ともだちのおとうと第1回公演『宇宙船ドリーム号』が開幕した。脚本・演出を務めるのは、映画『舟を編む』などを手掛けた石井裕也。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、勝地と笠原が本番さながらの熱演を披露した。
【あらすじ】
風の音がむなしく響き渡る近未来。ロドリゴ(勝地)は週末の中にいた。何度自らの命を絶とうとしても、死ぬことができないロドリゴはある決意をし、宇宙船のディーラーを訪れる。そこで高校時代の親友クルピロ(笠原)と再会を果たす。今の人生に満足しているのか?とクルピロに問うロドリゴ。そしてロドリゴは宇宙船で「夢」に向かうことを明かす。それを聞いたクルピロは過去の思いを打ち明け、何か自分にできることはないかと尋ねる。
「俺が必要なのはひとつだけだ。旅の道連れさ」
その言葉を聞き、二人は忘れかけていた「夢」に向かって、宇宙船ドリーム号で共に宇宙への旅に出かけるのだった―。
ステージ上には宇宙船の内部とおぼしきセットが設置されている。宇宙船として必要な運転席と、ベッドやトイレ、バスタブといった生活用品とがごちゃまぜになっている、近未来なのにどこかアナログ感ただよう船内だ。たった二人しかいない船内。手を取り合うこともあれば、ぶつかり合うこともある。お互いにハッキリ言えないような心の葛藤も抱えながら「夢」に向かって宇宙の旅を続けていく二人。二人の心、もしくは観客の心さえも洗い流すかのような美しい星空の映像に思わずため息がこぼれた。
ゲネプロの後に行われた囲み会見には、勝地と笠原が揃って登場。二人のユニット名“ともだちのおとうと”とは?という質問に、勝地は「僕の兄と笠原くんが同級生なんです。だから“ともだちのおとうと”というユニット名になったんです」と、実に20年来の付き合いであることを語った。
稽古は1ヶ月程度だったというが、それ以前から石井と勝地&笠原でご飯を食べながら、演者としての二人の課題を明らかにし、それを解決する作業を進めていたそうだ。笠原は「石井さんのワークショップに行ったりしました。フットサルに誘われた時にも『笠原くんって、そういう(性格の)人なんだ・・・』と言われることもあって。その時から稽古が始まっていたかもしれませんね(笑)」、勝地は今回の内容に絡めて「石井さんも一緒に宇宙船に乗っている気持ちで作品作りに携わってくれました」と嬉しそうに振り返った。
出演者は二人だけ。稽古中には何度となく衝突することもあったと語る勝地。「昔からの親友ですが、稽古場が険悪なムードになるくらいです。でも、どんなにぶつかっても帰りは同じ車で帰りますけど!」と笑った。その言葉を受けて笠原も「もう一つの“宇宙船ドリーム号”でしたね」と楽しげにコメントしていた。
本作には、ロドリゴとクルピロの二人に関わるキーパーソンとして、吉岡里帆が映像出演する。吉岡の話になると、とたんにテンションが上がる二人。彼女の出演について勝地は「正直OKしてくれるとは思わなかったんです。そこで、映像を撮影する場所に朝いちから待ち構えてお礼を伝えました。“旬の人”と言われる吉岡さんが“旬”と呼ばれる理由がわかりました!」その後も「やっぱりかわいいよな!」「この舞台が制服姿の吉岡さんの見納めになるかも!?」と終始嬉しそうに語る二人だった。
「子どもの頃から一緒にやりたいと言っていた夢が、ようやく今日叶います。いい旅立ちになれるようにがんばります」と勝地。「胸がたかぶっています」と意気込む笹原。二人の船出となる、ともだちのおとうと第1回公演『宇宙船ドリーム号』は10月1日(日)まで、東京芸術劇場 シアターウエストにて上演。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)