これまでAKB48グループ及びその公式ライバルである乃木坂46、欅坂46のプロデュースをはじめ、楽曲の作詞やTV番組の企画構成、ドラマ脚本など様々なエンターテインメントを仕掛けてきた秋元康が、劇団をプロデュースすることが発表されたのは2016年9月のこと。その後、劇団員を募るオーディションが行われ、2017年8月23日(水)、ついにそのベールがはがされた。その名も「劇団$4.50(4ドル50セント)」だ。
新しい劇団に所属するメンバーは女性21名、男性10名の計31名。現役の高校生から植木職人、ファストフードの店員、新聞配達員など、出身も多彩。ダンスや歌などの経験を持つメンバーもいるが、9割が演技経験ゼロという「素人」集団だ。彼らはオーディションで劇団入りが決まった後、半年間、みっちりと演技レッスンを積み、この記者発表を迎えた。
この日、会見に先駆けて今後の公演のプロローグにあたる芝居と全員による歌「少年よ空を見よ!」、さらに「劇団$4.50」からの派生ユニット(名称未定)の8名による歌「愛があったら」を披露した。
劇団の脚本を手掛けたのは、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎。また音楽は、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝勝者と敗者”や、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~暁の調べ~などの音楽を担当した和田俊輔、振付をCRE8BOY、クリエイティヴ・ディレクターを近山知(TBWA/HAKUHODO)が務める。
秋元は、「AKB48を作ったとき、初めは劇団を作ろうと思っていたので、今回原点に戻った。今回もいろいろな若い人たちと、アイドルではなくあくまでも劇団。音楽と共に懐かしく、泥臭く、汗にまみれたものができたら」と語る。
劇団名の「$4.50」は、早逝の天才シンガー、ジャニス・ジョプリンが亡くなったとき、封の切られていない赤いマールボロと手には4ドル50セントが握られていた、という逸話にちなんだもの。「(ジャニスが)握りたかったものはきっと違うんだろう」と感じた秋元は「握りしめたいものは未来や夢」という思いを込めてこの名前を劇団名にしたと語った。
この日のパフォーマンスの演出を務め、また、11月に東京・青山スパイラルホールでプレ公演、さらに2018年2月に東京・紀伊國屋ホールで本公演を行う旗揚げ公演『18クラブ』の脚本を担当する丸尾は、「秋元さんが昔、つかこうへいが好きな演劇少年だったことを聞き、本気で劇団を作りたいと思って僕に声をかけてくれた。秋元さんはいろいろな引き出しを持っていらして、時代と繋がる人。(劇団鹿殺しは)永遠の『ブレイク寸前』と呼ばれて久しいので(笑)、秋元さんのそばでブレイクするヒントを盗みたい」と笑いも交えつつ、「($4.50の)今の彼らにしかない“何者かになりたい”という情熱や、ごまかすことを知らない新鮮なものは人の心を打つ武器になる。彼らのあがきをそのまま舞台にのせたい」と力を込めた。
「$4.50」内派生ユニットのセンターを務める國森桜は、現役の高校3年生。「カメラの前で演技やダンスをするのは初めてだけど、緊張はそんなにしていない」とイマドキの女子感にあふれ、リーダーの岡田帆乃住は「よくTVで『カメラのフラッシュに気を付けてください』というテロップが出るアレが、今、生で観れているのがすごい。夢の世界にいるよう」と興奮を口にした。隅田杏花は「緊張したけど、出てみたらすごく気持ちよくて、バーンと踊ったら少しやせちゃったかな?」と自身のぼっちゃり体型をネタにすると、残り30人から「違う違う」「ちょっとだけね」などとツッコミの嵐をくらう。うえきやサトシは最年長の27歳。「今、“なう”で植木屋さんをやってます。オトンとサトシをかけてサットンと呼ばれてます」と、劇団内のコミュニケーションは良好のようだ。
秋元プロデュースの様々なグループで何度となく話題となるのが「恋愛禁止」。この点について、青木瞭は、「劇団内恋愛は禁止とさせていただいています。劇団外のことは特に何も言われていないですが、今は劇団の事に集中したいです」と襟を正した。
31名の中には元AKB48の長谷川晴奈の姿もある。再び秋元の指導を受けることについて、「アイドル時代に学んだことを活かして、もっと自分を出せるように、そして皆さんと絆を深めて日本一の劇団を目指していきたいです」とコメントする長谷川だった。
秋元康プロデュース劇団「$4.50」旗揚げ公演『18クラブ』は、11月3日(金・祝)から11月5日(日)まで東京・青山スパイラルホールでプレ公演、その後、2018年2月8日(木)から2月12日(月・祝)まで東京・紀伊國屋ホールで上演される。
以下、「$4.50」劇団員31人を紹介。※カッコ内は年齢
國森桜(18)、菅原麻由佳(18)、仲美海(15)、湯川玲菜(16)、前田悠雅(18)、福島雪菜(18)、八鍬乃々(16)、樹亜美(19)、安倍乙(17)、糸原美波(21)、岡田帆乃佳(20)、隅田杏花(21)、田代明(21)、立野沙紀(22)、谷口愛祐美(19)、長谷川晴奈(20)、堀口紗奈(19)、本西彩希帆(19)、結城麻后(22)、横山玲菜(17)、吉原菜緒花(19)、青木瞭(21)うえきやサトシ(27)、小川恭平(21)、尾崎尉二(23)、蕪祐典(21)、奈波慎剛(23)、中村碧十(16)久道成光(24)、安田啓佑(20)山本将司(22)
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)