日本公演10周年目の『ドラムストラック』が、2017年8月16日(水)に東京・天王洲 銀河劇場での公演初日を迎えた。幕開けすぐに、観客720人全員が一緒にアフリカンドラム・ジェンベを叩いてスタートする本公演。「ここは日本!?」と疑うほど、ジェンベの音と歓声が飛び交う。さらに今年はカーテンコールで、10周年記念アンバサダーを務めるAIとラッパーのK’naanによる楽曲「Wavin’Flag」を劇場の全員で演奏するという10周年記念コラボ企画があり、パワフルなパフォーマーの歌声と手の平のジェンベの感触が一晩たっても残るほど、白熱したステージとなった。
まずロビーではアフリカンマーケットが開催されており、ふだんの劇場とは違った雰囲気に。劇場に来た、というより、アフリカに観光に来たかのようだ。ズボンやTシャツのほか、雑貨はフジテレビの大ヒット番組『あいのり』に出演して人気となったヒデのショップで、番組内でアフリカを旅した経験から、現地の雰囲気を届けている。
会場に入ると、720席すべてに置かれたジェンベが目に飛び込んできた。その瞬間「なにこれ!」と興奮し、隣の席の見知らぬ人と「すごいですね」「叩いていいのかな」と会話している観客も。すでに気分はアフリカ。膝でしっかりとジェンベをはさみ、太鼓の皮の表面に触れてみると、ザラザラと固い手触りに気持ちが盛り上がってくる。
リズミカルな音楽と、アフリカをイメージするオレンジの照明で幕が開く。劇場が揺れるようなドラムのリズムを感じて、思わず体が動きそう・・・という頃、ステージから「さあ、あなたも!」とジェスチャーが。言葉はなくとも、動きと表情で言われていることが伝わってくる。そのとおりにパフォーマーの打つリズムを真似してジェンベを叩くと、お題もどんどん難しいものへと変わっていく。一生懸命叩いているうちに、気づくと自分もパフォーマーの一人となっていた。
『ドラムストラック』は南アフリカのヨハネスブルグで生まれ、2005年にオフ・ブロードウェイで1年半におよぶロングラン公演となった。オーストラリア、中国、ベトナム、韓国などでも大人気で、北京オリンピックの開会式でパフォーマンスしたり、FIFAワールドカップ南アフリカ大会のオープニングコンサートに出演したりと、世界中で親しまれている。日本国内でもこれまで21都道府県、30都市で222回上演し、のべ20万人がジェンベを叩いて熱狂を味わっている。今回の初日では、「これを楽しみにしてたのよ!」と話すリピーターファンや、小さな子ども連れの家族、一人参加のサラリーマンまで様々な方が訪れていた。
公演タイトルどおり打ち鳴らされるドラムが大迫力だが、ドラム以外のパフォーマンスも楽しい。ダンス、歌、アクロバティックな動きに、木琴などほかの楽器も登場する。客席からステージ上に呼ばれた男の子の足踏みに合わせ、全員がジェンベを叩くことも。
また、ジェンベとドラムパーカッションのリズムバトルではコントのようなやりとりで会場は大笑い。アフリカとアメリカのドラムによるコラボレーションに、国境は関係なくリズムを楽しんだ。
ジェンベのさまざまな叩き方にも見よう見まねで挑戦。太鼓の中心を手の平で打つと低くて大きい音、角を三本指で叩くと高くて鋭い音を出すことができる。ステージのパフォーマーの真似をするだけでなく、自分でいろんな音が出せることが楽しく、いろいろと試してみたくなる。
マラカスやタンバリンが客席に配られ、音楽が一層賑やかになってくる。客席の場所によってリズムを変えたり、手拍子を取り入れたり、一緒に歌ったり、南アフリカの国旗を振ったりと、みんなでパフォーマンスを作っていく。パフォーマーも鮮やかな色合いの衣装に着替え、見た目も華やかに。気づくと、80分間ジェンベを叩き続けた手の平には痺れが・・・。その心地よい痛みは興奮の余韻として、終演後もしばらく体に残っていた。
南アフリカ観光親善大使の高橋ひとみは終演後、「すごいエネルギー。家に帰ってもこの高揚感のままノリノリで楽しめます」と興奮さめやらず。「すごく人気があるとは聞いていたけれど、日本で10年も続いている意味がわかりました」と、初めての『ドラムストラック』を楽しんだ様子。パフォーマーたちも「お客さんがこんなに叩いてくれて良かった。揺れたくなるドラムの力を感じられたはず」と笑顔を見せた。
南アフリカは自然と動物が豊かな国立公園などが知られているが、近年はバカンスを楽しみに行く場所としてヨーロッパで人気だそう。高橋も「ご飯がおいしくてワインが最高。ドレスとハイヒールでお洒落をして行って欲しい国です」と南アフリカをアピール。「『ドラムストラック』は南アフリカの雰囲気そのままを思い出しました」と80分間のステージの魅力を語った。
体験型ドラムエンタテインメント『ドラムストラック』は、8月16日(水)から8月27日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。
(取材・文・撮影/河野桃子)