名優・市村正親が一人8役をこなすコメディミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』が、2017年4月8日(土)から4月30日(日)まで、東京・日生劇場にて上演される。それに先駆け、3月12日(日)に公開稽古が都内で行なわれ、市村をはじめ、ウエンツ瑛士、柿澤勇人、シルビア・グラブらが登場、劇中歌の一部を披露した。
本作は、20世紀初頭のイギリスを舞台に、突如、大富豪ダイクイス一族の血を引き、自分にも8番目の爵位継承権があるとわかったモンティ(ウエンツ、柿澤のWキャスト)が、爵位を手に入れるため、次々と継承権のある邪魔な8人を手にかけていく様を描く。このモンティに殺される8人を、市村がすべて一人で演じ分ける。
この日公開されたのは、3つの場面。最初の1幕「プロローグ:観客への警告」では、男女12名のカンパニーキャストが本編の世界へと客席を誘う。観客に向かって、「帰ったほうがいい!」と警告するという、なかなか趣向の凝らされたツンデレ(?)なオープニングだ。
続く1幕2場「あなたがいなきゃ」は、柿澤演じるモンティと、その思い人・シベラ(シルビア)二人のシーン。お金持ちとしか結婚しないと主張するくせに、モンティが必要だと迫るシベラの小悪魔っぷりが魅力的。対するモンティは、柿澤が持つ高貴な雰囲気そのままに、紳士然とした態度でこの誘惑を迎え撃つ。途中、濃厚なキスシーンがあるのだが、実はこれが稽古中初のキスだったとか。後の囲み取材で、このファーストキスを公開したシルビアは、「すみません・・・・・・ありがとうございます」と照れ笑い。柿澤は「いやあ・・・・・・最高でした」と感慨深げにキスの感想を述べ、きちんと「歯磨き」をして臨んだことを明かした。
最後の1幕9場「裏を表に」では、養蜂が趣味の若者ヘンリー(市村)、その妹のフィービー(宮澤エマ)、ウエンツ演じるモンティが登場。蜂について目を輝かせながら語る青年ヘンリーは、今年1月に68歳を迎えた市村の技が光るキャラクター。朗々と歌い上げるフィービーと、キュートでやさしいイメージのモンティが恋に落ちていく背後で、蜂に刺されて絶命するヘンリーの動きがコミカルすぎて秀逸。終始笑い声が起き、ミス・シングル役の春風ひとみも、「自分が出ているのを忘れるほどおもしろい」と語るほど。
一方、柿澤とシルビアのキスシーンを見たウエンツは、「いい意味で下品」と評しながらも、宮澤に自分たちもキスシーンを披露したらどうかと持ちかけたらしい。だが、宮澤からは「『やめていただきたい』とお伝えしました」と断られ、がっかり。そんな共演陣を「テクニシャンが多い」と称する市村だが、柿澤以外のキャストとは初共演になる。個性豊かな8役をこなす市村は、「肉体的には重労働だなという気がしています。でも面白さを出しつつも、力の抜けたおもしろさを出したい」と意気込みを見せた。
ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』は、4月8日(土)から4月30日(日)まで、東京・日生劇場にて上演される。そのほかの公演日程は以下のとおり。
5月4日(木)~5月7日(日) 大阪・梅田芸術劇場 メインホール
5月12日(金)~5月14日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
5月19日(金)~5月21日(日) 愛知・愛知県芸術劇場
(取材・文・撮影/尾針菜穂子)