作家・演出家の鴻上尚史によるプロデュースユニット「KOKAMI@network(コーカミネットワーク)」の第15回公演となる『サバイバーズ・ギルト&シェイム』が2016年11月11日(金)に東京・紀伊國屋ホールにて開幕した。初日前には、公開フォトコールと囲み会見が行われ、主演を務める山本涼介に加え、南沢奈央、片桐仁、鴻上尚史が登壇し、本作への思いを語った。
本作のタイトルとなっている「サバイバーズ・ギルト&シェイム」とは、戦争や災害、事故、事件などに遭いながら奇跡的に生還を遂げた人が、周りの人々が亡くなったのに自分が助かったことに対して、しばしば感じる罪悪感のことを指すという。本作では、主人公・水島明宏(山本)が「生き延びてしまった罪と恥」と向き合い、格闘し、笑い飛ばす近未来の物語となっている。
鴻上は「これは抱腹絶倒の爆笑悲劇です。悲しいんですが、全部笑い飛ばせるようになると素敵な作品になると思います」と説明。タイトルについては「3・11(東日本大震災)から、よく耳にするようになった言葉です。でも、これは何も災害や戦争に限ったことではないんです。身近なことの中でも、生きていることを恥ずかしく思ってしまうことがある。これは、生きている以上はどこかで皆が心の片隅に抱えていることであり、今の現代人が直面している感覚だろうと思います」と語った。
この日のフォトコールで公開されたのは、戦場から帰ってきた水島が「自分は幽霊になってしまったかもしれない」という思いから、映画を一本完成させないと成仏しきれないんだと言い張り、大学の先輩の夏希(南沢)、母親の瞳子(長野里美)、瞳子の婚約者の岩本(大高洋夫)と撮影の準備を始める・・・というシーン。その後、明宏の兄の義人(伊礼彼方)や、明宏の上官の榎戸(片桐)がやって来て、言い合いになり、状況が混乱していく様が演じられた。
『仮面ライダーゴースト』の仮面ライダースペクター/深海マコト役で注目を集めた山本だが、映像、舞台いずれにおいても、本作が初めての主演作となる。山本は「初めての主演で責任感も感じましたし、最初は不安もありました」と明かした。この日の会見でも「思った以上に緊張していて、ゲネでも顔が引きつってた」と話し初々しさを感じさせたが、片桐から「相手の台詞も口ずさんでたよ(笑)。気づいてないでしょ?」と突っ込まれると苦笑い。とはいえ「等身大の役なので、設定を意識しすぎず、その時に生まれた感情を大事に演じたい」と力強く意気込んだ。
また、主人公・水島の大学の先輩であり、水島が密かに想いを寄せる女性でもある夏希役の南沢は「やっていて笑いをこらえるのが大変なくらい、ネタや(片桐)仁さんがおもしろいんです。お客さんがどこに反応してくれるのか楽しみにしたいと思います」と笑顔を見せた。
おもしろいと名指しされた片桐は「かなり厳しい世界観(を描いた作品)だけど、おもしろいところがいっぱいあって、そこに日常があり、家族がいます。そういうところをちゃんと表現できたら」と、舞台上でのどこかおちゃらけた様子からは一転して真面目にコメントした。
今回、山本、南沢、片桐は初共演。山本は片桐の印象を「アドリブが多くて、笑いを我慢するのがしんどいほどです(笑)。僕はまだストレートしか投げられないので、変化球いっぱい投げてくる片桐さんのお芝居を観て勉強しています」と語る。一方で、南沢については「ハグをするシーンがあるので緊張します・・・」と照れを明かすと、鴻上から「お前は中坊か!もうちょっとレベル高いこと言いいなさいよ(笑)」と鋭いツッコミが入り、会場は爆笑に包まれた。
KOKAMI@network vol.15『サバイバーズ・ギルト&シェイム』は11月11日(金)から12月4日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演。
(取材・文・撮影/嶋田真己)