2016年11月7日(月)から東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演される『メトロポリス』。原作は1926年にドイツで製作された同名のモノクロ・サイレント映画で、当時から100年後の未来都市を描いいている。「SFの原点にして頂点」とも呼ばれるこの映画は、その後の映画界だけにとどまらず、漫画、音楽など数々のSF作品に多大な影響を残した。日本初の舞台化となる本作の稽古場の模様をレポートする。
演出を務めるのは、シアターコクーン初代芸術監督を務め、豊かなイマジネーションで舞台芸術の最前線を走り続ける串田和美。出演は『十二夜』『もっと泣いてよフラッパー』など数多くの串田作品に参加している松たか子。俳優だけでなくダンサーとしても活躍し、表現者として唯一無二の存在感を放つ森山未來。その他、飴屋法水、佐野岳、大石継太、趣里、さとうこうじ、内田紳一郎、真那胡敬二、大森博史、大方斐紗、串田和美といった豪華キャストが集結。
公開稽古の前に行われたインタビュー取材で、串田は「観たことないけど、なんか観たことあるぞ!と思ってもらえるような作品にしたい」と語っていたが、気になるその実態とは?
物語の舞台となるのは巨大都市・メトロポリス。そこでフレーダー(森山)は、労働者階級の娘マリア(松)と出会い、恋に落ち、彼女を追って地下へと向かう。しかし地下に広がる光景はメトロポリスを動かす巨大な機械と、過酷な労働を強いられる労働者であった。一方マリアは密かに集会を開き、「頭脳(支配者)と手(労働者)を仲介するのは心でなくてはいけない。仲介者は必ず現れる」と労働者たちに忍耐と希望を説いていた。しかし、それを知ったメトロポリスの主でフレーダーの父フレーデルセンは、旧知の科学者ロートヴァングにマリアを誘拐し、製作中のアンドロイドをマリアそっくりの顔にして、労働者たちの間に送り込み、彼らを混乱させろと命じるのであった・・・。
まず公開されたのは、舞台冒頭の全キャストが現れる群舞のシーン。振付の山田うんが指示を出す中、キャストが舞台上を自由自在に動き舞台装置を連結させたり、崩したりを繰り返し、様々な形の造形物を舞台上に展開。原作映画の監督であるラングは、ニューヨークの摩天楼に強い印象を受けたのをきっかけに映画を制作したそうだが、まさに幾重にもイメージが重なる造形物の数々は、巨大都市メトロポリスのカオスそのもの。
途中、登場人物全員が舞台上を見渡す場面で、串田が「目線が振付のように揃いすぎているから、ダンスと演技の中間をいくように」と出演陣に演出をつける。串田のジャンルに囚われない演出の象徴のようで、印象に残った。
その後、森山演じる主人公フレーダーが闇に包まれた街をさまよう場面へと移った。さとうこうじ、内田紳一郎、真那胡敬二など実力派俳優に囲まれながら問答する森山は、肩肘張らないやり取りで、主人公の人物像を森山自身のものに引きつける。
また、出演陣の中でも取り分け異彩を放っていたのが、抜群の身体能力を誇る佐野だ。舞台オリジナルキャラクターのカムロ役を演じる趣里を投げたり、担いだりとアクロバティックに操り、自身も舞台上を軽やかに駆け回る。森山と共に、佐野の身体能力にも注目だ。
物語の一端を観ただけで、原作に引けを取らないスケール感の大きな舞台の誕生が容易に想像できた。ぜひ、自らの目で伝説が生まれる瞬間を目撃していただきたい。
シアターコクーン・オンレパートリー2016『メトロポリス』は、11月7日(月)から11月30日(水)まで、東京・Bunkamuraシアターコクーンにて上演される。