10月20日(木)東京•CBGKシブゲキ!!にて、ジョンソン&ジャクソン『夜にて』が開幕した。2012年、俳優の大倉孝二と劇作家・演出家のブルー&スカイを中心に、ナイロン100℃の番外公演として『持ち主、登場』を上演したのが、このユニットの始まり。続く2014年には、大倉とブルー&スカイの正式な演劇コンビネーションとして「ジョンソン&ジャクソン」を立ち上げ『窓に映るエレジー』を上演。池田成志や池谷のぶえなど豪腕のキャストと、楽器の生演奏なども交え、くだらなさの極地に観客を誘った。
そして今年、ジョンソン&ジャクソンが挑む最新作は『夜にて』。演劇界の実力派とともに、ヒロインには映画や舞台でも幅広く活躍中の佐津川愛美が参加した。
物語は、飛鼠山(とびねずみやま)の麓にある温泉街、黒帳(くろとばり)温泉郷の鄙びたスナックが舞台。土地の名前を聞くだけで、因習めいた不気味さが漂う。スナックのママ(佐藤真弓)、ホステスの加奈(菊池明明)、そして刑事の東屋(大堀こういち)、の間で展開される情景がいともイナタく、その空気感がたまらない。そこに、何者かに襲われ怪我を負ったライターの調(しらべ・大倉孝二)が、医者の犬塚(ブルー&スカイ)に連れられて来る。
5年前に黒帳で起こった事件を調べていたが、黒い影に襲われ金も荷物も奪われた。そんな調に、旅館の若女将月子(佐津川愛美)は宿の寝床を提供するが、いつしかそんな二人の間に恋模様が芽生えてゆく。だが、二人の間に町を牛耳る竜一(鎌田順也)が現れ、波乱が波乱を呼ぶ展開に。そして、知らず知らずのうちに調は、渦中に引きずり込まれてゆき・・・。
会話の一つ一つに、バカバカしさが織り込まれ、時に失笑、時に大笑いしている間に、気づけば、サスペンスの物語の行方が気になりハラハラしている・・・という「バカバカしさ」と「ハラハラ感」と、そして「キュン」もある、不思議な感触の作品に仕上がった。大倉はジョンソン&ジャクソンシリーズでは今回が初主演。黒帳の強烈な住人達の中に放り込まれたよそ者・調が、翻弄され右往左往する姿は、どこか愛嬌もあり、この先彼がどうなってしまうのか観客もハラハラするだろう。
佐藤や大堀の底力のある芝居が、小さな田舎町の場末の香りを見事につくりだし、鎌田やブルー&スカイの唯一無比の存在感は、釘付けになり癖になる。その中で若手の菊池はキレのある演技で芝居を支えている。そして、ヒロインの佐津川は、清純なビジュアルを最大限に生かし、謎を秘めた旅館の若女将を好演。佐津川は、今年映像の他に3本もの舞台に立ち演劇界で着実に力を発揮している。
出演者7名の魅力を存分に見せるこの物語は、大倉孝二とブルー&スカイが共同で執筆・演出を行うこのユニットで、4年以上の年月をかけ、一作品一作品積み上げてきた、チャレンジと蓄積の結晶であると言える。あっと言う間の2時間、約240名の劇場、密な空間で、実力派の俳優達による生の芝居を堪能してほしい。デタラメに笑いながら、謎解きも楽しめるエンタメ性の高い作品で、幅広い客層が楽しめる作品となっている。
初日に際し、大倉孝二、ブルー&スカイ、佐津川愛美からメッセージが届いた。
◆大倉孝二
この秋、本当に沢山の芝居が上演される中、我々のを選んでもらうのは、なかなか困難なことだと思いますが、何の意味もない、くだらないものが好きならば、ぜひ『夜にて』を!「何なんだよ!」と思ってもらえるはず。
◆ブルー&スカイ
意味のないくだらない演劇というか、“意味のなさ”“くだらなさ”をテーマにした演劇だと思っています。そういうのを好きな人が少ないと噂を聞くので、これをきっかけに数人増えてほしいと思います。
◆佐津川愛美
ジョンソン&ジャクソンという得体の知れない面白さにハマりつつある役者としてお二人の信じる世界についていきます!
演劇界豊作の秋、大作も良いが、小劇場に興味がある人々にとって、この秋、見逃せない必須の1本になるのは間違いない。公演は10月30日(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!で上演中。その後11月、盛岡、いわき公演を行う。
【公演情報】
ジョンソン&ジャクソン『夜にて』
作・演出:ジョンソン&ジャクソン(大倉孝二 ブルー&スカイ)
出演:大倉孝二、佐津川愛美、佐藤真弓、菊池明明、鎌田順也、ブルー&スカイ、大堀こういち
【東京公演】2016年10月20日(木)~10月30日(日) CBGKシブゲキ!!
【盛岡公演】11月3日(水・祝) 盛岡劇場 メインホール
【いわき公演】11月5日(土) チームスマイル・いわきPIT
(撮影/宮本雅通)