2014年1月に初演、2015年1月に再演され、上演の度に高い評価を得てきた完全和製の音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』が、2016年10月5日(水)より再々演を迎える。今回は、本作を初演から支え続ける原田優一、元宝塚歌劇団・雪組トップ娘役の愛加あゆ、舞台『ダイヤのA The LIVE』シリーズで御幸一也役を演じた和田琢磨をはじめ、白又敦・服部武雄(Wキャスト)、佐野瑞樹、星野真里が出演。その稽古場を取材した。
本作は、明治時代のドイツを舞台に、天才と友情、二人の間に交わされた秘密を、事実も交えた“IF-イフ-”として描く物語。脚本は第8回東京新聞映画賞を受賞した『くちびるに歌を』の登米裕一、演出はミュージカル『シャーロック・ホームズ』シリーズや『フォーエバープラッド Forever Plaid』などを手掛けた板垣恭一が務める。
公開された稽古シーンは、病気を患い音楽から離れ、自暴自棄になっていた瀧廉太郎(和田)の元を作曲の依頼で訪れた岡野貞一(原田)が、瀧の才能を知るがゆえに激しく叱咤する場面。政府から作曲活動を禁じられ、瀧は絶望的な状況に追い込まれるが、「残り少ない命を日本の音楽に捧げろ」と岡野が説得し、二人の間である約束が交わされる。
稽古が始まり、和田の熱演を見た演出の板垣は「なんか普段と違うね。取材が入ってるから(笑)?役が成熟してきてる!」と絶賛。照れ臭そうに笑う和田であったが、異国の地で病気に悩む天才の孤独を迫力の怒号と哀愁で見事に表現していた。一方、原田はコミカルな演技で笑いを誘いつつ、瀧を叱咤する場面では鬼気迫る演技で瀧を焚きつける。また、音楽家の幸田幸を演じる愛加は、恋心と母性が混じる目でそんな二人を優しく見守る。
日本の音楽界が変わっていく歴史的な瞬間を目撃したような心震わされる場面が続く。途中、瀧の置かれた状況に思い悩む岡野が、何気なく「故郷」を弾くシーンでは、日本人としてグッと身につまされる感動に襲われた。
稽古終盤、板垣は出演者たちに「この時代の平均寿命は44才らしいんだよね。最近は平和だったから、命がとても尊重されているけど、この時代(明治)はどうだったんだろうね?・・・ということを、最近『シン・ゴジラ』を観て思ったんだ(笑)」と、示唆に富む演出で俳優たちに思考を促す。柔らかい口調で語る板垣であったが、話を聞くキャストは真剣そのもので、改めて演技が練り直されているようであった。
初演、再演と繰り返された作品ではあるが、今回、また新たに現代性を伴って、深みの増した作品となるだろう。稀代の音楽家たちの生き様をとくとご覧あれ。
なお、エンタステージでは原田優一と愛加あゆの対談取材も実施。そちらもお楽しみに!
音楽劇『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』は、10月5日(水)から10月10日(月・祝)まで東京・草月ホールにて上演される。
(取材・文・撮影/大宮ガスト)