近藤良平の音楽劇『兵士の物語』稽古場レポート!ダンス・映像・影絵・・・目まぐるしい仕掛けの連続!

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次の週末に初日を控えた2016年7月31日(日)、『兵士の物語』の稽古にお邪魔した。『兵士の物語』は、8月5日(金)から、東京・世田谷パブリックシアターに併設するシアタートラムで上演される音楽劇だ。演出・振付はコンドルズの近藤良平で、自身も出演する。一人の兵士が悪魔に翻弄される物語を、生演奏・ダンス・映像・影絵などで賑やかに彩る。

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今作は、毎年「せたがやこどもプロジェクト」として世田谷パブリックシアターが行っている企画の一環である。しかし、簡単に“子ども向け”とは言い切れない。鍛えられた出演者のパフォーマンスと共に、7人のミュージシャンが生演奏する。近藤は、ストラヴィンスキー作曲の音楽について「ずっと超絶技巧が続いているような難しい楽譜。間近で生演奏を聞くと、その強さにきっと圧倒されますよ」と力強く語る。

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この日は、音楽隊は別の部屋で練習。出演者たちが衣装を着て稽古する。主人公の兵士(北尾亘)は、悪魔(近藤良平)に騙されて故郷に帰れなくなっていた。しかし、病気の王女(入手杏奈)の噂を聞いて、彼女に会いに行こうとする。それぞれ、兵士は緑色の運動帽のようなものを被り、王女は動きやすい白のミニワンピース、近藤はツナギ(この日はジャージだった)を着ている。近藤による衣装イメージは、「兵士はツール・ド・フランス、王女は『エースをねらえ!』、悪魔は木更津のヤンキー」だそうだ。一見ちぐはぐとも言えるその格好が、楽しい違和感を生んでいる。

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舞台中央ではスクリーンが上下し、映像や影絵が映される。それらに合わせて踊り、喋るので、稽古では“きっかけ(シーン転換などの合図)”の確認が丁寧に行われる。スタッフと近藤の間で、「そのシーン、今30秒かかっています」「ギリギリだね。もう一回やってみよう」と、音や映像のタイミングが合うように何度も試す。ダンサーからも「動き出すタイミング、変えた方がいいですか?」と提案が出る。

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舞台装置の移動や、人形の登場など、たくさんの仕掛けが施された演出は、スタッフワークとの連携も重要だ。それぞれがハッキリと意見を述べ合うが、ピリピリとした空気ではない。近藤からは「それ面白いね!」「いいよいいよ」と前向きな声が飛ぶ。「緻密にやりすぎてもよくないからね、みんなで一緒に創っていくよ」と終始笑顔だ。

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稽古場の雰囲気も舞台上も、常に明るい。北尾演じる兵士も笑顔が多く、人の良さや素直さが伝わってくる。明るいストーリーではないはずだが、軽快に旅をする兵士や、コミカルな動きの悪魔など、観ていると思わず笑顔になる。紅一点の王女は、登場してから瞬く間に、病弱な少女から強く気品のある王女へと変化し、目を奪われる。さらに次々と映像や影絵が現れて、華やかなサーカスのようだ。近藤は「子どもが飽きないようにとの思いもありますが、短いシーンの中でどんどん変化していくことを楽しんでもらえたら」と、目まぐるしく変化する演出意図を語る。

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全体的に明るく楽しい印象だが、語り手(川口覚)が物語を引き締める。他3人のダンサーたちがあまり台詞を発しない中、語り手が物語のナレーションや、それぞれの心の中の思い、その他すべての登場人物を引き受ける。語り手である川口が丁寧に言葉を扱うので、聞いていて安心感がある。時に、近藤が「説明っぽい台詞じゃつまらないからこうしてみよう」と、台詞回しに趣向を凝らす。

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楽しい仕掛けが散りばめられた近藤良平版『兵士の物語』には、子どもが観ていて飽きない工夫が続々と登場する。しかし第一次世界大戦直後の苦境の真っただ中に生まれたこの物語は、笑いと華やかさの中に、人間の欲望や愚かさを炙り出す。何げなく音楽やパフォーマンスを楽しんでいると、いつの間にか悪魔に騙されているかもしれない。

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せたがやこどもプロジェクト2016《ステージ編》音楽劇『兵士の物語』は、8月5日(金)から8月11日(木・祝)まで東京・シアタートラムにて上演される。

(取材・文/河野桃子)

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