オフブロードウェイ・ミュージカル『bare(ベア)』が、2016年6月30日(木)に東京・シアターサンモールにて幕を開けた。本作は2000年10月のロサンゼルスでの初演を皮切りに、ニューヨークのオフブロードウェイに進出。日本では2014年12月に初演され、大きな反響を呼んだ。待望の再演開幕に先駆け公開ゲネプロと囲み取材が行われ、鯨井康介、田村良太、増田有華、川崎麻世、演出の原田優一が登壇した。
初演に続いての出演となる鯨井は「いつもより緊張しています。初日に緊張するって、あんまりないんですけど。でもこの状態は、高校生の不安定さや、やってやろう!という気持ちに近いのかなと。今の自分を受け止めて臨んでいきたいなと思います」と心境を明かした。
一方、田村は「自分は一切緊張していなくて、きっと始まる2分前くらいに緊張するんですけど・・・(笑)。初演をやっていることもあり、演出の原田さんの導きのもと、稽古もすごく充実していたので、みんなを信頼して思いっきりやりたいと思います」と晴れやかな表情。
初参加の増田は「私もまだ緊張はしていなくて、ちょっとふわふわした状態です。でも“bare”=さらけ出すということで、この状態もリアルでいいのかなと」と笑顔を見せ、「最近の若い人たちは、自分の中に抱えたものを周りに相談できなかったり、(表に)出せなかったりすることが多いと思うんですけど、(私の演じる)アイヴィも自分の中にしかない大きな悩みを抱えている女の子。それをさらけ出すナンバーがありますので、注目していただければと思います」とアピールした。
校長でもある神父役を演じる川崎は「それぞれ個性があり、いろんな悩みを持っています。実際、この学校の校長だったら大変だろうなと思いつつ、温かく厳しい目で見ております。本番がすごく楽しみ」と、演じる役になぞらえたコメント。
演出を手掛ける原田は「表面的にではなく、さらにシーンを深めていく取り組みとして、今回(作品の中に出てくる)文化を一つ一つ皆さんと共有する機会を稽古場で取らせてもらいました。同性愛やドラッグは、テーマとして重く捉えられがちなんですけど、この作品を通して身近に、生活の中でどう向き合うかを考えられたらいいなと」と、その想いを語った。
演じる上で難しかった点を聞かれた増田は、「個人的にキスシーンが初めてなので、人に見せるキスシーンをどうすればいいのか、最初全然わからなくて。『もったいないからちゃんと顔見せたほうがいいよ』って言われたら、なんか恥ずかしくなっちゃって・・・。そこもさらけ出していかなきゃいけないんだなと思いました(笑)」と返答。その相手役となる鯨井は「光栄です!でもあんまり構えてる感じはないし、内心僕の方がバクバクしてるかも」と明かし、笑いを誘った。
最後に、改めて鯨井が「毎日違うキャストの組み合わせで、ある意味、毎日バージョンの違う作品を上演させていただきます。我々も一人一人が考え、しっかりと皆様にお伝えできるようにがんばりますので、ご覧頂いた皆様にも一つでも何か考えるきっかけになれば。一緒に時間を共有しましょう」と呼びかけ、会見を締めくくった。
舞台は、全寮制のセント・セシリア高校。平凡な学生・ピーター(田村/橋本真一)にはある秘密があった。それは、学校一の人気者であるジェイソン(鯨井/岡田亮輔)という同性の恋人がいるということ。いつかは自らを“bare”―さらけ出し、愛し合いたいとピーターは願っているのだが・・・。
同性愛、ドラッグ、宗教などの問題を交えながら、青少年の性とアイデンティティへの葛藤をリアルに描く本作。ピーターへの愛と周囲の期待に応えたいという欲求の間で葛藤するジェイソン役は鯨井と岡田亮輔、ジェイソンとの関係をカミングアウトしたいと望むピーター役は田村と橋本真一、見た目ばかりが注目されることに悩むアイヴィ役は増田と皆本麻帆、ジェイソンの双子の妹・ナディア役は谷口ゆうなとあべみずほ、ジェイソンのライバル・マット役は染谷洸太と一和洋輔といったように、多くの役がオーディションで選び抜かれた役者陣によるWキャストとなっている。
生バンドで奏でられる楽曲は、ロックテイストのものからラップ、ブラックミュージックなどジャンルを超え、登場人物たちの心情を表現していく。若者たちがそれぞれの内面をさらけ出すシーンは圧巻だ。確かにテーマとしているものはセンシティブだが、作品の中に渦巻く感情は誰もが持ちえるもの。自分自身や周囲の持つ悩みや不安を振り返るきっかけになるのではないだろうか。
オフブロードウェイ・ミュージカル『bare』は、6月30日(木)から7月10日(日)まで東京・シアターサンモールにて上演。
※川崎麻世の「崎」のつくりは、正しくは「大」の部分が「立」。
※撮影:エンタステージ編集部 無断転載禁止※