2016年4月21日(木)から東京・Zeppブルーシアターにて舞台『ナミヤ雑貨店の奇蹟』が開幕した。原作は累計100万部を突破した東野圭吾の同名小説で、2013年に演劇集団キャラメルボックスにて初舞台化。今回、キャラメルボックスのプロデュース公演として、キャストを一新し再演される。初日前には、公開ゲネプロと囲み取材が行われ、出演する多田直人(キャラメルボックス)、松田凌、鮎川太陽、川原和久、脚本・演出の成井豊(キャラメルボックス主宰)が登壇した。
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このほかの出演は、菊地美香、鯨井康介、石橋徹郎(文学座)、大森美紀子、岡内美喜子、左東広之、小林春世、金城あさみ、近藤利紘(以上、キャラメルボックス)など。
本作では、タイムトラベル・ファンタジーを軸に、過去と未来が交錯し、そこに生きる人々の人生をオムニバスのように描いていく。同じ養護施設で育った敦也(多田)、翔太(松田)、幸平(鮎川)は、ある夜コソ泥に入り、その逃亡の途中で廃屋になった「ナミヤ雑貨店」に逃げ込む。ほっと息をついたのもつかの間、外で微かな物音が。見に行くと、シャッターの郵便口に一通の封筒が届いていた。中の便箋に書かれていたのは、“魚屋ミュージシャン”からの悩み事相談だった。
三人が逃げ込んだ雑貨店では、店主(川原)が生きていた頃、手紙で悩み相談に答えていたのだった。彼らは、ほんの遊び心から返事を書いてみた。すると、すぐにまたシャッターの郵便口には新たな封筒が。そこにはさっき書いた返事への、さらなる質問が書かれていた。しかも内容から察するに、相手は33年前の人間らしいのだが―。
ゲネプロを終え、感想を求められた成井が「直前に変更したところもあってドキドキして観ましたが、うまくいったと思います!」と自身を見せると、多田は「成井さんがそうおっしゃるなら自信を持って初日に臨めます」と胸を撫で下ろしていた。
作品について、松田は「ファンタジーの先にある物語に、すごくリアリティがあって。観てくださる方の心に刺さる部分が多いのでは」と語り、鮎川も「誰かに答えを求めてみたり、相談してこそ、自分の人生を生きていられるんだなってことに気づかせてもらえます」とその魅力を明かした。
初演の劇団公演との変化について、多田は「演出はもちろん、キャストが違えば関係性も違っているので、初演を観た方にこそ観ていただきたいですね。お客様も、月日を経て変わっていると思うので、感じることも違うと思います。その違いに注目してほしいです」とアピール。
再演にあたり、「この役にはこの人がぴったりだ!という人に声をかけさせていただいた」という成井。特に、雑貨店店主・浪矢雄治役の川原にはなんとしても出てもらいたい懇願し、約4年ぶりの川原の舞台出演が叶ったという。その川原は「(この物語は)バックに浪矢雄治という人物が生きていないと面白みが増してこないと思う」と役に対する想いを口にした。
また、大阪公演を行うシアターBRAVA!は、5月で11年の歴史に幕を下ろすことになっており、本作は「さよならシアターBRAVA!」と題して閉館までのカウントダウンを飾る。劇団とともに劇場の誕生や閉鎖に多く関わってきたという成井は、「閉鎖って本当に寂しい。劇場がなければ、その地に行かない人もたくさんいると思います。そういう場所がなくなってしまうことには、ものすごく寂しさがあります。一方で、上演の声をかけてもらえたのは大変名誉なこと。一生の思い出になるように、精一杯BRAVA!での公演をやりたいなと思います」と名残惜しんだ。
最後に、「原作のおもしろさそのままに、おもしろい役者が、おもしろいやり方でやっております!」(多田)、「多くの方に愛されている作品を自分たちも愛しています。東京、大阪にしっかりとこの作品を届けたいです」(松田)、「作品を見て、誰かと楽しい会話を交わしてほしいなと思います」(鮎川)、「少しでもいい気持ちでお帰りいただけたら」(川原)とそれぞれ呼びかけ締めくくった。
点と点が繋がって線になるように、人と人とが繋がって“人生”を紡いでいく。そこに起こった思いがけない奇蹟が、心を豊かにしてくれる。観終わったあと、ふと自分自身の人生を振り返って、背中を押してくれたあの人へ、手紙を書きたくなった。
ネビュラプロジェクト&ぴあ&シアターBRAVA! presents『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、2016年4月21日(木)から5月1日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木にて、5月6日(金)から5月8日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて上演。