「人間には二つの顔がある」石丸幹二×濱田めぐみ×笹本玲奈 ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート!

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「写真提供/東宝演劇部」

2016年3月5日(土)に東京国際フォーラムホールCで開幕したミュージカル『ジキル&ハイド』。石丸幹二が4年振りにジキルとハイドという“二つの人格”を演じるこの春話題の作品だ。東京公演折り返しを経て、日々進化を続ける舞台の模様をレポートしたい。

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ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート_2

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19世紀のロンドン。心に病を負った父を治そうと、医師であり科学者でもあるヘンリー・ジキル博士(石丸幹二)は「人間の善と悪とを分離する薬」を開発するのだが、婚約者・エマ(笹本玲奈)の父・ダンヴァ―ス卿(今井清隆)をはじめとする病院の理事たちはジキルの治験を断固として許可しない。失意のジキルは友人の弁護士・アターソン(石川禅)に誘われるままに怪しいパブに出向き、娼婦・ルーシー(濱田めぐみ)の言葉から、自らを実験台にして薬の効果を世に知らしめようと決意する。しかし、薬を飲んだジキルに現れた変化は想像を絶するものだった。もう一つの人格…狂暴で冷酷なエドワード・ハイドの誕生。ジキルはハイドを抑えられなくなり、ロンドンでは猟奇的な殺人事件が起き始める…。

ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート_3

「写真提供/東宝演劇部」

石丸はジキルとハイドという2つの人格を全く別のものとして演じるのではなく、ジキルの中に存在する野心や、科学者としての功名心がハイドという別人格を生み出したという解釈をはっきり打ち出す。この造形により、人間の多面性や複雑さがより明確に伝わってきた。4年の時を経て、自身がインタビューで語っていた通り“人間臭い”ジキル像を新たに創り上げたのだ。二幕のジキルとハイドとの「対決」のシーンは石丸渾身の演技もあって圧巻。正に人間の“業”を観客に鋭く提示する場面となっている。

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ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート_8

「写真提供/東宝演劇部」

ルーシーを演じる濱田は荒んだ生活を送りながらも、ジキルと出会ったことで一筋の希望を見出す娼婦役をパワフルな歌声と時に妖艶、時に純真な演技とで魅せる。決して賢くはなく自己評価も低い女性なのだが、心の底は澄んでおり、一人の女としてジキルに恋心を抱き、新しい生活に向かおうとするルーシーの姿が切ない。彼女の本質を最も表しているのが自室で真っ白な部屋着をまとい、ジキルからの手紙を読む場面だと感じた。

ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート_6

「写真提供/東宝演劇部」

作品中、唯一“ブレない”キャラクターであるエマ役の笹本は、何が起きてもジキルを信じ、愛し続ける女性像を可憐に演じ切る。聖母のようなエマの存在が、物語の大きな救いとなっていると胸打たれた。また、ジキルの親友・アターソン役を演じる石川は随所にコミカルな芝居を挟みながら語り手として場面場面をきっちり締め、エマの父・ダンヴァ―ス卿役の今井は何より娘を大切に思う父親像を深みのある歌声と共に表現。更に林アキラ、宮川浩といったベテランのアンサンブル勢が作品全体に深みとリアリティを与えており、カンパニーの層の厚さと結束力が客席にきっちり伝わってきた。ワイルドホーンの力強くメロディアスな楽曲を、出演者全員が完璧に歌いこなす様も非常に気持ちが良い。

ミュージカル『ジキル&ハイド』観劇レポート_7

「写真提供/東宝演劇部」

…と、登場人物たちの新たな造形に打たれ、パワフルで美しい音楽に身を浸しながら、人間が持つ様々な“顔”や“自分が知らない自分”についても深く考えさせられる本作。ミュージカルの大きな醍醐味である歌の力を全身に浴びながら、劇場で“新しい自分”と出会ってみてはいかがだろうか。

ミュージカル『ジキル&ハイド』は3月20日(日)まで東京国際フォーラム ホールC(東京)で上演中。東京公演終了後は大阪、名古屋でも上演される。

(取材・文 上村由紀子)

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