2016年3月5日(土)に東京国際フォーラム ホールCで開幕するミュージカル『ジキル&ハイド』。石丸幹二が4年振りにジキルとハイドという二つの人格を宿した男を演じるこの春話題の作品だ。先日、都内某スタジオで報道陣と50人のオーディエンスに向けた稽古場見学会が開催され、石丸をはじめ、娼婦・ルーシー役の濱田めぐみ、ジキルの婚約者・エマ役の笹本玲奈、今井清隆、石川禅らの出演者らが集結し、作品のレクチャーやセットの説明、キャストによる歌唱披露などが行われた。
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巨大なセットが組まれたスタジオ内にまず登場したのは演出の山田和也。作品の背景などのレクチャーに続き、本番と同じように建てこまれた二階建てのセットについて、軽やかに語る姿にオーディエンスも引き込まれていた。初演から同作品の演出を担当してきた山田ならではの視点で語る説明や、細かい仕掛けが隠されたセットを目の当たりにし、本番への期待が高まる。
続いてはお待ちかねの歌唱披露。まず一曲目に歌われたのは「嘘の仮面」。上流階級や名士と呼ばれる人々が笑顔の下に隠した“真実の顔”についてダークに歌うナンバーだ。アンサンブルを中心に迫力ある歌声が稽古場を包み、一気に『ジキル&ハイド』の世界へと誘われる。
二曲目は今の生活から抜け出し、明るい世界に飛び立とうとする娼婦・ルーシー(濱田)と、ジキルの婚約者・エマ(笹本)がそれぞれの立場でジキルへの想いを歌い上げる「その目に」。全く違う立場の二人が一人の男性を愛する気持ちを切々と歌っていく。笹本の美しいソプラノと濱田の力強さをたたえた歌声のハーモニーが切なく胸に響いた。
ラストとなる三曲目は本作のメインテーマと言っても過言ではない「時が来た」。父の病を治すために自らの身体を実験台にして新薬の実験をしようとするジキルの決意の歌だ。二階建てのセットを自在に使いながら、強い意志をもって歌う石丸の姿にジキルの強靭な思いがはっきり重なって見えた。
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今回の歌唱披露は稽古ピアノを伴奏に生声で行われたのだが、キャスト陣のポテンシャルの高さもあり、本番さながらの迫力。至近距離でキャストの生声を聞ける機会はなかなかないこともあり、貴重な機会となったのではないだろうか。
締めはメインキャスト5人による挨拶。エマの父・ダンヴァ―ス卿を演じる今井は「新参者ですが(笑)、初演の時から大好きな作品に参加出来てうれしい」と語り、ジキルの理解者・アターソン役の石川は「初演組でございます(笑)。周りを見るとちらほら初演に出ていた方もいらして不思議な感覚もありつつ、稽古を楽しんでおります。今日ご覧いただいたのはまだまだ序の口、本番はもっともっと凄いものになりますから!」と場を盛り上げ、エマ役の笹本は「4年振りということもあり、新鮮な気持ちでいっぱいです。この作品に関わっている時は鏡を見ても“これが本当の自分の姿なのか”とか、口に出したことが“真実の言葉なのか”などと自分自身を見つめ直してしまいます」と真っ直ぐな瞳で話した。
ルーシー役の濱田はまず「すみません、歌詞を間違えました!」と、明るいカミングアウトで場内に笑いを巻き起こし「4年振りということで新たな気持ちで臨もうと思いつつ、稽古が進む中で4年前に出来なかった事やあの頃の感情をふと思い出すこともあります。このメンバー全員が揃ってやれるのはこれが最後かもしれませんので、最高の作品になるよう頑張っていきたいです」とチャーミングな笑顔を見せた。最後は主演を務める石丸が「寒い毎日が続いておりますが、熱い舞台になるよう日々稽古を頑張っています。2012年に鹿賀(丈史)さんからバトンを受け継ぎこの役を演じさせていただいて、今回も新しいことに挑戦する気持ちでいっぱいです。初めてご覧になる方は“人間ってこんなに汚いの?”なんて思われるかもしれませんが(笑)、そんなところも楽しみに観ていただければ。あなたも“自分探し”の旅に出てみませんか?」と綺麗に締めて出演者、オーディエンス一同から大きな拍手を贈られていた。
ミュージカル『ジキル&ハイド』は2016年3月5日(土)から3月20日(日)まで東京国際フォーラム ホールC(東京)で上演。東京公演終了後は大阪、名古屋でも上演される。
(取材・文 上村由紀子)