2015年12月11日(金)に東京・品川プリンスホテル クラブeXにて開幕した『夜の姉妹』。本作は、劇団リリパットアーミーII20周年記念として劇作家・演出家のわかぎゑふが生み出したゴシックホラーの名作で、2007年に初上演された作品。注目は、なんと”男女完全入替制”。男女の配役をそっくり入れ替えることで、男性の繊細さと女性の大胆さで、より悲劇をクローズアップするという手法が取られている。初日に先駆けて行われたゲネプロの模様をお届けしよう。
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物語の舞台は、19世紀初頭。ドイツ・バーデン大公国に、フランスからオペラ『椿姫』を書いた女流作家アレクサンドル・デュマ(山本裕典)が訪れる。デュマは、そこでバーデン大公国皇太子・ラインハルト(彩乃かなみ)と出会い、やがて親友になっていく。ラインハルトは、恋人であるローザ(平野良)との結婚を、両親、特に母親のマルガレーテ王妃(八代進一)から反対されていた。王妃と大公にはラインハルトを跡取りにしたくないという思惑もあり・・・皇太子の身に起きたとてつもない血の悲劇。巻き込まれた女流作家、デュマがこの謎に挑む!
霞がかかったような三方囲みの舞台は、ドイツの黒い森を連想させる雰囲気で観客を物語の中へといざなう。まっすぐな前髪にベレー帽を被ったデュマ演じる山本は、凛とした賢さをまとった女性姿を見せる。仕草や立ち振る舞いは完璧に女性そのものだが、時折長い足を振り上げて大胆に座ってみせたり、派手にひっくり返ったりとコメディエンヌ(?)ぶりも発揮。
一方で、ラインハルト皇太子を演じる彩乃は、憂いを秘めた皇太子姿で披露。元宝塚歌劇団・月組娘役トップとして、男役を知り尽くしているからこその華麗な男性像で魅せてくれる。ローザ演じる平野のお腹に新しい命が。その眼差しには母性が感じられなんとも不思議な印象を抱かせるが、迫真の演技がすべてを納得させる。
また、女学生を演じる佐藤永典、原嶋元久、宮下雄也、田中崇士は、指先つま先まで見事に”女子”。可憐な淑女・・・とは言い難い姿もチラホラさせつつ、客席の笑いをさらっていく。特に、宮下演じるルーシーは強烈!
それを迎え撃つ妙齢の女優(?)陣も、力が入る。女学生たちが通う学校の経営者、アンナ・エグロシュタイン夫人役の粟根まことや、教師・ヨゼファ役の黄川田将也、マルガレーテ王妃役の八代は、メリハリの利いた迫力の演技で物語の明暗を際立たせていた。
途中まで、これが悲劇だと忘れてしまいそうになるほど、笑いの絶えないシーンが満載。それだけに、物語の後半に訪れる悲劇が色濃く脳裏に残る。哀しさとせつなさに溢れ、見ごたえある美しい名作だ。最後のカーテンコールも見ごたえ抜群!余韻に浸りながら最後までぜひ楽しんでほしい。
『夜の姉妹』は、12月20日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演。その後、12月23日(水・祝)から12月27日(日)まで大阪・近鉄アート館で上演される。