2015年5月24日(日)から、こまつ座第109回公演『戯作者銘々伝』が上演されることが決定した。本作は、井上ひさしの原点ともいえる江戸小説『京伝店の烟草入れ』と『戯作者銘々伝』が原案で、劇団桟敷童子代表の東憲司が、初の戯曲化に挑む。東は、第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、第20回読売演劇大賞優秀演出家賞、第16回鶴屋南北戯曲賞を受賞しており、近年注目を集めている劇作家・演出家だ。こまつ座初演出となる東は、自分の過去や社会に対して傷を持つ者が、その出来事に対面し、それでも生きていくという普遍的なテーマで作品を作りあげていくのを得意としており、今回の初の試みに期待も膨らむ。
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人気戯作者だった山東京伝は、松平定信の寛政の改革により、洒落本を書いた罪で処罰され、筆を折り商人となる。その処罰した定信が、京伝の本の愛好者で、直筆の詞書がほしいという。仕返しをおそれ、書かなくてはと思いながら、口惜しい思いに体が震える京伝。そんな彼のもとに、自分があげる花火に名前をつけてほしいと、若き花火師の幸吉が現れる。一瞬の光に観た人が手を打ってくれればそれで満足という純真な若者に、権力に屈し筆を捨ててしまった京伝は心惹かれ、熱を入れる。三尺玉をあげるためなら命を捨ててもいいと一人花火作りに励む幸吉に、贅沢を禁止しているお上の手が回り、江戸払いとなる。旅立たねばならない日を前に、幸吉が京伝のもとをたずねてくる――。
主人公の山東京伝を演じるのは、舞台、映像の両方で存在感のある俳優北村有起哉。幸吉を今舞台で注目される若手俳優の玉置玲央が演じる。このほか、新妻聖子、山路和弘、相島一之、阿南健治、西岡德馬らが出演する。音楽は多くのミュージカル作品を手掛ける宮川彬良が務める。
江戸時代後期、黄表紙や洒落本が風俗を乱すと咎められ弾圧されながらも、「笑い」というものにすべてを賭け、筆を折らなかった江戸の戯作者たちの鬼気迫る生き方を描いた本作。こまつ座第109回公演・紀伊國屋書店提携『戯作者銘々伝』は、2015年5月24日(日)~6月14日(日)まで東京・新宿南口・紀伊國屋サザンシアターにて上演。地方公演は2015年6月20日(土)兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演。