2014年12月1日から世田谷パブリックシアターにて『鼬(いたち)』が上演される。『鼬(いたち)』は、昭和初期の東北を舞台に土地の言葉で生き生きと力強く描かれた真船豊の代表作。日本近代戯曲の中でも屈指の名作とうたわれた戯曲だ。とある旧家をめぐって繰り広げられる骨肉の争いと、腹の底にドス黒い思惑を抱き業と欲にかられてうごめく人間たちのエネルギッシュで生命力みなぎる姿を赤裸々に描いている。
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昭和の初め、東北の街道筋の旧家「だるま屋」の当主である萬三郎は、落ちぶれた家の借金に苦しんだあげく、老婆おかじを残して南洋に出稼ぎに出てもう三年もの間留守にしている。借金の抵当に入った家屋敷の処分が始まったところへ、だるま屋先代の娘でありおかじの義理の妹にあたる“おとり”という女が帰ってくる。若い頃のおとりには盗癖があり、村の人々に不義理を重ねた挙句に行方をくらませた身。十年前に相続争いで騒ぎを引き起こした一件を深く恨んでいるおかじはおとりを“泥棒鼬”とののしるが、当のおとりは「生まれ故郷ほどせいせいすっとこはねえなあ」と全く悪びれた気配はない。おかじの怒りを冷笑しながら、萬三郎がまもなく帰国することを告げるおとり。母も知らぬことを何故おとりが知っているのか…。果たして、おとりの狙いは何なのか!?
“超規格外”の悪行の数々と一番強欲な思惑を持つおとりを演じるのは鈴木京香。おとりに憎しみをぶつける義姉のおかじを白石加代子が演じる。また、舞台外の活躍でも大人気の高橋克実に、江口のりこ、山本龍二、峯村リエ、佐藤直子、塚本幸男、赤堀雅秋と、演劇ファンをうならせる役者陣が顔を揃える。演出は、三好十郎『浮標』『冒した者』などで近代古典戯曲の演出手腕が高く評価された長塚圭史が担当する。自身の書下ろし作、翻訳戯曲、日本の近代古典等の意欲的な演出活動、脚本やエッセイ執筆、そして自身の俳優活動と多才さを存分に発揮してきた長塚が、この異質な人間ドラマにどう向き合うのかにも注目が集まる。
全編東北の言葉で綴られたこの戯曲が持つ独特の世界観が、どのように創り上げられていくのか必見である。ちなみに、主演の鈴木京香は宮城県出身。彼女だからこそつかめる台詞のニョアンスが感じられそうだ。『鼬(いたち)』は、世田谷パブリックシアターにて12月1日(月)から12月28日(日)まで上演される。
Photo:加藤孝