京都を拠点にマルチに活動する劇団、ヨーロッパ企画の第33回公演『ビルのゲーツ』が、栗東、京都公演に続き、いよいよ東京・本多劇場にて上演される。
劇団代表であり、脚本・演出を担当する上田誠が設計した劇構造を、日常会話を積み重ねてユルく、だが緻密なコメディへと昇華させる劇団員のアンサンブルは、公演ごとに幅広い観客の支持を得ており、年1回の本公演ではトータルで1万人以上を動員している。
本公演について、上田はこう語る――
カードをかざすなり差し込んだりしてゲートが開く瞬間、というのが好きなんです。Suicaカードを改札機にあてがう瞬間はつい颯爽としてしまいますし、ホテルでカードキーをもらって、それをドアの外で黒い読み取り部分にかざすときもエリートみたいな気分になります。横に差し込むタイプや縦にスッと通すタイプもありますね。ETCで料金所を通れたときや、家電量販店でけっこう買い物をしたので地下駐車場のゲートを開けてもらえたときなんかも「よしよし」という顔をしています。自分は運転できないにもかかわらず、です。そんな僕が羨ましいのは、たとえばタワービルっぽい会社に吸い込まれていく人たちが首からぶら下げているIDカードです。あれで何かしらのゲートをあけてビルの中に入っていっているのだとしたらもう。僕の実家は町工場で、戸は常に開けっ放しでカギという観念が薄かった、というのが影響しているのかもしれません。カギっ子に憧れたものなあ。「ビルのゲーツ」というさっきつけたみたいなタイトルにはそんな深い企図が込められていると思ってください。ゾロゾロした群像会話劇になる予定です――
群像会話劇を構成するキャストは、石田剛太、酒井善史、角田貴志、諏訪雅、土佐和成、中川晴樹、永野宗典、西村直子、本多力(以上、すべてヨーロッパ企画)、岡嶋秀昭、加藤啓、金丸慎太郎、吉川莉早。
ヨーロッパ企画第33回公演『ビルのゲーツ』は、東京・本多劇場にて、8月29日(金)~9月7日(日)上演される。以降、大阪・ABCホール、広島・アステールプラザ 中ホール、福岡・西鉄ホール、名古屋・名古屋市芸術創造センターと巡り、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<大スタジオ>で楽日を迎える予定。