【劇場へ行きたい!】平成最後の観劇はどの作品?4月のおすすめ舞台ピックアップ

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新元号「令和」の発表と共に迎えた春。舞台に立つ方も観る方も、この4月に平成最後の演劇作品と出会いますね。各地でイベントが目白押し、GWには様々なフェスティバルも開催されるこの季節・・・美しい桜に目を奪われ、花粉症に抗いながら、それでも舞台が観たい!その気持ちを胸に、今日も観劇へ通います。

今月も<ストレートプレイ><ミュージカル><2.5次元><ダンス><劇団/小劇場><古典><その他>それぞれから1作品ずつピックアップしました。中には春を楽しめる演目もいくつかご紹介しております。日々に彩りがさしこむ鮮やかな観劇の季節となりますように。
(ライター/河野桃子)

目次

ストレートプレイ

良い子はみんなご褒美がもらえる
【東京公演】4月20日(土)~5月7日(火) TBS 赤坂ACTシアター
【大阪公演】5月11日(土)・5月12日(日) フェスティバルホール

【公式HP】http://www.parco-play.com/s/program/egbdf2019/

日本でも人気の英国劇作家トム・ストッパードによる舞台。ストッパードは、舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』『アルカディア』、映画『恋に落ちたシェイクスピア』などを書いていますが、今回は、俳優とオーケストラのために書き下ろした異色作だそう。舞台上には35人のオーケストラがいて、演出はバレエダンサーでもあるウィル・タケット。言葉×音×身体の表現がどんな世界を産むのか楽しみです。

物語は“自由”をめぐる不自由さについて。現代、SNSなどで個人の主張とその発言が可視化され「表現の自由だ」「言論の自由だ」「いや、さすがに行動に起こしちゃいけないけど想像するくらいは自由だろう?」と“自由”についての論争は、時代が変わっても終着点を迎えることはなさそうです。演劇界でも「表現の自由」については、何が自由か、何を守るのかと、議論や訴えがなされてきました。

この『良い子はみんなご褒美がもらえる』では、誹謗罪でつかまった政治犯の男(堤真一=「言論の自由」を主張)と、自分はオーケストラを連れていると主張する妄想に囚われた男(橋本良亮=「想像の自由」)が精神病院で同室となります。互いの「自由」を通して、「自由な世界」だからこそ他人と異なることへの「不自由さ」を感じる現代社会を皮肉に描きます。初演は1977年ですが、現代だからこそ「上演するのにパーフェクトな時期」だと言う演出家ウィルの言葉には頷けるものがありそうです。上演時間は約75分(休憩なし)を予定。

ほか、蓬莱竜太さんの岸田國士戯曲賞受賞作を劇団チョコレートケーキの日澤雄介さんが新演出で上演する『まほろば』(4月5日開幕)、大竹しのぶさん・稲垣吾郎さんらとケラリーノ・サンドロヴィッチさんという安定&期待のタッグによる『LIFE LIFE LIFE ~人生の3つのヴァージョン~』(4月6日開幕)、小川絵梨子さんが芸術監督をつとめる新国立劇場にて毎シーズンに一本全キャストをオーディションで選考し上演する企画の第1弾『かもめ』(4月11日開幕)、幾多もの女優が取り組んできた名作を高畑光希さんが演じる『奇跡の人』(4月13日開幕)、生と性の名作にキャストを変えて挑む『春のめざめ』(4月13日開幕)、岡本健さん一と川平慈英さん、三浦翔平さんと村井良大さんの2ver.キャスティングが楽しみな『ピカソとアインシュタイン~星降る夜の奇跡~』(4月25日開幕)など、目白押し。

ミュージカル

ブロードウェイ・ミュージカル『キンキーブーツ
【東京公演】4月16日(火)~5月12日(日) 東急シアターオーブ
【大阪公演】5月19日(日)~5月28日(火) オリックス劇場

【公式HP】http://www.kinkyboots.jp/

2016年に大ヒットした熱狂の舞台がついに再演!三浦春馬さんの長身と迫力のあるキレキレなダンス。小池徹平さんの、迷いや葛藤、勇気に感情移入してしまう求心力。ほかのキャストも続投し、「初演の興奮をもう一度!」と願う方や「見逃した!次こそは!!」と意気込む方の熱気を感じる舞台です。

この舞台の何がこんなに人と惹きつけるんだろう・・・と考えると、その理由はたくさん思いつきます。パワフル、華やか、ゴージャスで、細部まで練られたダンスと歌と美術の融合。家族に仕事に悩み、責任や自分自身と向き合う主人公の葛藤。しかし、何よりこの舞台にあるのは、俳優たちの持つ人間としてのパワーではないかと思うのです。

あの人を見ていると元気になる。あの人が笑うと自分も笑顔になる。そんな生き物としての魅力が炸裂しています。三浦さん、小池さんを中心に、ソニンさん、玉置成実さん、勝矢さんなど、そこで懸命に生きる人たちのパワーとユーモア。それを言葉で伝えることがはばかられるほどの大きな力で客席を巻き込んでいくのは、俳優たちの努力と技術と魅力、そして舞台に関わるすべての人々の丁寧な仕事と情熱があるのでしょう。そうして創られた舞台だから、観客は、苦境も、つらさも、悲しみも、矛盾も、ぜんぶひっくるめて前に進むパワーをもらえるのではないでしょうか。

高いヒールをカツカツと慣らし、風を切って歩きたくなる。終演後には無意識に背筋が伸びて晴れやかな気持ちになっている・・・そんな、人間を変えるパワーのある舞台にまた出会えるのが待ち遠しいです。

また、栗山民也さんが演出を手がけるオリジナルミュージカル『ハル』(4月1日開幕)日本初演に期待が高まる浦井健治さん主演の『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』(4月9日開幕)、新キャストのティングも楽しみな『レ・ミゼラブル』(4月19日開幕)、日本初演から40年を越えたとのこと!『アニー』(4月27日開幕)も気になります。

2.5次元舞台

PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice
【東京公演】4月18日(木)~4月30日(火) 日本青年館ホール
【大阪公演】5月3日(金・祝)〜5月6日(月・祝) 森ノ宮ピロティホール

【公式HP】https://www.psycho-pass-stage.com/

大人気アニメがついに舞台化!今年1月からは3ヶ月連続で劇場版アニメが公開されるなど今まさに熱い作品。近未来×警察×群像劇というSF好きにはたまらない要素がぶちこまれた上に、虚淵玄さんの脚本に加えてSF作家の冲方丁さんが構成に加わったりと、その世界観とサスペンス性を強固にし、「知能戦」を駆使した作品で人気を博してきました。

アクションに寄りすぎず、特殊能力もなく、しかし近未来的なデザインの銃など(ガジェット)が登場する頭脳派展開。ディストピアとユートピアの融合する、矛盾と灰色の世界観。アニメはあまり観ないけれど、VRやサバゲーや『マトリックス』が好きという大人にも刺さる要素満載の作品です。

主演は舞台に映画にと引っ張りだこの鈴木拡樹さん。演出は『サイコパス』シリーズ産みの親でもある本広克行さん。ストーリー監修には数々のSFアニメを手がけてきたプロダクションI.G。ナンバリングしたバラバラ死体を繁華街の路地裏に飾り付けるという異常事件に挑みます。鈴木さんだけでなく、和田琢磨さん、中村靖日さん、多和田任益さん、小澤雄太さん、町井祥真さん、池田純矢さん、高橋光臣さん、山崎銀之丞さんと、大人の魅力と身体能力を兼ね備えた俳優が揃っています。近未来という世界観も含め、どう劇場で表現するのか?気になる舞台です。

また、秋に映画化もされる『桃源郷ラビリンス』(4月4日開幕)、主人公と切磋琢磨しあったライバル校たちに焦点をあてたハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」〝東京の陣〞(4月5日開幕)、「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage(4月12日開幕)、1年半ぶりの新作に期待が高まる浪漫活劇譚『艶漢』第三夜(4月20日開幕)など、上演が相次ぎます。

劇団/小劇場

ホエイ『喫茶ティファニー』
4月11日(木)~4月21日(日) 東京・こまばアゴラ劇場
【公式HP】https://whey-theater.tumblr.com/

昨年は新作『郷愁の丘ロマントピア』が第63回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされるなど、年々注目度が増し続けている劇団です。魅力的な会話と、演劇的に丁寧に組み立てられた構成の確かさは、戯曲賞にノミネートされるのも大きく頷けます。ただその魅力は戯曲だけでなく、劇団ホエイで上演された時により輝いていると思います。

ホエイの舞台には、俳優が演じるからこその仕掛けや楽しみがあり、同時に、怖さと不思議さがあります。脚本に裏打ちされた物語を追っていたはずなのに、いつの間にか脳みそがあちらへこちらへと揺さぶられ、いつしか宙にぽかんと浮いてしまったような気持ちになる。本を読んでいるのでは味わえない、演劇ならではの体感です。それは客席数十人の劇場空間だからこそ、より強く感じるのでしょう。

今回、ホエイの新作は喫茶店が舞台です。麻雀やポーカーなどのアーケードゲームがテーブルになっているような喫茶店・・・昭和の香り溢れる喫茶店だと想像します。そして、演劇は東京での上演となりますが、物語の舞台は多摩川の向こう側にある神奈川県です。

カフェではなく喫茶店、東京ではなく神奈川。そんな哀愁や懐かしさを感じるのは過去のホエイの公演でもそうですが、懐かしい中からこちらを覗いている現代の鋭さや生々しい感覚を、生身の空間で感じられるだろうことを想像すると、楽しみです。

ほか、京都の人気若手劇団子供鋸人の観客15名限定公演『SF家族』(4月1日開幕)、来年は兵庫県に移住を決めたうさぎストライプによる『ハイライト』(4月3日開幕)、大阪を中心に活動する劇作家・横山拓也さんの新作書き下ろしを文学座・松本祐子さんが演出する『ヒトハミナヒトナミノ』(4月10日開幕)、CoRich舞台芸術まつり!グランプリ作品を再演する関西の劇団オパンポン創造社『さようなら』(4月11日開幕)、熊本で旗揚げ34年力強い作品を積み重ねてきた劇団きららの東京公演『気持ちいい穴の話』(4月19日開幕)も観たいところ。

ダンス/舞踏

「上野の森バレエホリディ」
4月27日(土)~4月29日(月・祝) 東京文化会館ほか
【公式HP】https://balletholiday.com/

公演ではないのですが、気軽にバレエを楽しめ、がこのイベント「上野の森バレエホリディ」。バレエに馴染みがない人も誘いやすいのもおすすめポイントです。当日は、季節の彩り豊かな上野公園近辺で、舞台を観たり、踊ったり、ショッピングしたり、衣裳を着たり、手作り体験をしたり・・・イベント自体は予約不要でしかも無料。子どもも大人も、バレエ好きもバレエに興味がなくても、GWにかけて様々な形でバレエに触れられる企画が目白押しです。

バレエ好きな方には、東京バレエ団の『白鳥の湖』上演に合わせ、リハーサルや日頃のレッスンやバックステージが公開されて見学できます。また、トークイベントやコラボランチメニューも楽しそう!バレエ初心者の方には、ファッションショーやチュチュを着ての写真撮影、はじめてのバレエレッスン、バレエグッズをつくるワークショップやバレエ音楽のミニコンサートもあります。
※事前申込が必要なものや、有料のものもあるのでご注意を!

中でもおすすめしたいのが、まず、バレリーナをモデルにスケッチをする「バレリーナを描こう!」(※要予約、4歳以上)。バレリーナの鍛えられた美しい身体をじっくりと観察することで、よりバレエの興味が湧きそうです。また、バレエに関する各種講座「ホリディ・バレエ・アカデミー」(※要予約、有料)では、名作誕生の背景や、英国バレエについて、プリンシパルが語る『白鳥の湖』など様々なテーマでバレエを紐解いていきます。

バレエ好きの友人と、はたまた、バレエに興味あるけど身近じゃないという方など、ふらりと足を運んでみてはいかがでしょうか。

また、新国立劇場バレエ団の『シンデレラ』(4月27日開幕)を観てから、翌月の熊川哲也Kバレエカンパニー『シンデレラ』も観てみたいところ。

古典

昨年7月に亡くなられた桂歌丸さんを偲んで落語家たちが披露する『桂歌丸追善落語会』を挙げたいところなのですが、この企画は、4月20日(土)国立演芸場で1回きりの公演なので人数は限られており、すでにチケットは完売・・・ということで、ご興味ある方は全国どなたでも観られるこちらをご紹介します。

シネマ歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下
4月5日(金)より全国の映画館で上映スタート
【詳細】https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/40/

“古典”の“上演”ではないのですが、ぜひおすすめしたい!演出家・野田秀樹さんの『贋作・桜の森の満開の下』歌舞伎バージョンです。

昨年、歌舞伎ではなく演劇公演としては妻夫木聡さん、深津絵里さん、天海祐希さん、古田新太さんらが出演して話題作となりました。作品そのものは、1989年に劇団「夢の遊眠社」で初演して以降、妖しく美しい世界に魅せられた演劇ファンの心を掴んだ作品です。それを野田秀樹さんと故・中村勘三郎さんが「いつか歌舞伎で」と話していたことが、勘三郎さんがお亡くなりになった5年後の2017年に実現しました。

中村勘九郎さんを主演に、市川染五郎さん(現:松本幸四郎さん)、中村七之助さんらが出演しています。その美しさはまた演劇の舞台とも違い、エンターテイメントとしての歌舞伎の華やかさが味わえる作品に。男性のみで演じることで、美しい幻想世界がより深まり、その評判に「見逃した!」と後悔する声も聞かれました。

それがついに、シネマ歌舞伎として上映されます。シネマ歌舞伎には、生の舞台での体感とはまた違う臨場感もあります。季節はまさに満開の桜。公演をご覧になった方も、見逃した方も、この春の季節に幻想の桜吹雪を浴びてはいかがでしょうか。

また、『萬狂言 春公演』と同日同場所で親子も初心者も楽しめる『萬狂言 ファミリー狂言会・春』(4月14日開幕)も楽しめるでしょう。

その他

アート・オブ・サーカス『Scala-夢幻階段』
4月27日(土)~4月29日(月・祝) 静岡芸術劇場
【詳細】http://festival-shizuoka.jp/program/scala/

「サーカス」というのはヨーロッパでは大人気のパフォーマンスジャンルで、日本とは印象が異なります。このアート・オブ・サーカス『Scala-夢幻階段』は、演劇とサーカスとダンスを融合した“だまし絵”のようなパフォーマンス。空間が歪むようにぐにゃりと崩れる家具と人・・・次の瞬間には、時間を逆回ししたように元通りになります。え、夢!?と自分の目を疑う、まさに夢幻の世界。もし興味のある方はぜひリンクの動画をご覧戴ければ、ダンスのようなマジックのような不思議な物語が垣間みられるでしょう。どこへ続くともしれない階段は、いったいどこへ繋がっているのか・・・。

上演は静岡のみ。「ふじのくに せかい演劇祭2019」の演目の一つです。4月27日(土)から5月4日(土・祝)まで開催されている日本有数の国際芸術祭では、ヴィクトル・ユゴーが描いた希代の悪女を宮城聰さんが演出する野外劇『マダム・ボルジア』や、底抜けに明るく障がい者を描くスコットランドのヒットミュージカル『マイ・レフトライトフット』、イタリアのアーティストによる鮮やかなステージ『歓喜の詩(うた)』、韓国演劇界の旗手イム・ヒョンテクの『メディアともう一人のわたし』など世界最先端の演劇のほか、日本全国から選ばれた人気劇団が街中でパフォーマンスするなど、良質な舞台がそろった演劇祭が開催されています。

このほか、渋谷で上演される、ダンス、音楽、ライブなどさまざまな要素と熱量が渦巻くパフォーマンス『ポリティカル・マザー ザ・コレオグラファーズ・カット』(4月6日開幕)上田竜也さん(KAT-TUN)、中村達也さん、TOKEIさんらが出演し、こちらも注目です。

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観劇後には、劇場の周りを少し散歩してお花見しながら感想を交わすのもいいですね(劇場の近くには桜が咲いているところも多いですから!)。春風と共に、今月も素敵な舞台との出会いが訪れることを願っています。そして、穏やかに来月から始まる新しい時代を待ちたいと思います。

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この記事を書いた人

高知出身。大学の演劇コースを卒業後、雑誌編集者・インタビューライター・シナリオライターとして活動。

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