『アンチゴーヌ』蒼井優にインタビュー「10年前から私にとってのヒロインでした」

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2018年1月9日(火)より、栗山民也の演出でパルコ・プロデュース2018『アンチゴーヌ』が東京・新国立劇場 小劇場<特設ステージ>にて上演される。ソフォクレスのギリシア悲劇を翻案し、フランスの劇作家ジャン・アヌイが描いた本作は、法と秩序を守り、権力者として政治の責任を貫こうとする冷静な王クレオンに対し、自分の良心にまっすぐに従い、自己の信念を貫く少女アンチゴーヌの姿を描く作品だ。

アンチゴーヌ役を演じるのは舞台初主演となる蒼井優。とあるきっかけで10年前この作品と出会い、アンチゴーヌに並々ならぬ思いを寄せたという蒼井に話を聞いた。

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――まずは、『アンチゴーヌ』という作品との出会いを教えてください。

蜷川幸雄さんの舞台『オセロー』に出させていただいた時に、戯曲という世界にもっと慣れた方がいい、と演出助手の方からアドバイスをいただき、たくさんの戯曲をいただいたんです。その中の一つが『アンチゴーヌ』でした。ボロボロになるまで読みふけった一冊でした。

――何故そこまで作品にはまったんですか?

アンチゴーヌという女性がとても魅力的だったんです。当時20歳くらいだった私は、クレオンのような考え方になりそうな時・・・社会に迎合しているんじゃないかと感じる時などに、人間として大事なことを優先するアンチゴーヌの生き方から勇気をもらえました。彼女は、私にとってのヒロインだったんです。

――そこまで心惹かれるアンチゴーヌという女性を、今回ようやく自分で演じることになりましたね。

実は『アンチゴーヌ』を舞台で観たいとは思っていたんですが、自分がやりたいとは思っていなかったんです。自分の中でアンチゴーヌは、もはや実在の人物のような感覚になっていたので・・・。そんな人物を自分が演じるって発想がなくて。

でも、実際に演じることが決まり、改めて台本を読んで驚きました。こんなに台詞が多いとは!って(笑)。台本を何ページめくっても台詞がまだまだ続くんですよ。一人でしゃべるだけでなく、他の登場人物が出てきても、その人を相手にずっとしゃべっている。もう他の人、出てこないで!って思うくらいでした(笑)。
それから、台詞の読み方も変わりました。今まではさらっと読めていた何気ない言葉、一言一言のその意味を解読しながら読むようになりました。今回、新訳版となるのですが、昔読んでいたボロボロの台本が参考書のような役割になっています。古い台本では「私たち」となっているけれど、新しい方では「私」になっている、といったように訳す方によって違いがあるんです。あえてそう訳されているなら、その意味を早いうちに確認しないと・・・こういう作業は楽しいですね。

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――作品と出会って10年。蒼井さんご自身も年齢を重ねたことで、アンチゴーヌに対する思いに変化はありましたか?

アンチゴーヌより、クレオンに対する見方が変わりましたね。クレオンの孤独が分かるようになりました。初めて読んだ時は完全にアンチゴーヌ目線で読んでいましたが、今、改めて読むとアンチゴーヌは憧れの人で、クレオンの方がより実感をともなって人となりを見ることができるように感じます。年齢や経験を重ねることで、いろいろな立場の人の感情が少し分かるようになりました。クレオンを見ていると、日本のトップの人の気持ちが想像できるようにもなりましたし(笑)。

――演出を務められる栗山さんとは『あわれ彼女は娼婦なり』に続いてご一緒されますね。栗山さんの演出で印象に残っていることは何ですか?

栗山さんの演出って「外枠」から作っていくやり方なんです。動きや立ち位置など、作品の一番の外枠にあたる部分が見えている方なので、そこを先に決めて、枠の中の空いている部分は役者さん個人で埋めていってください、役の気持ちや心の動きなどを考えるのは役者の作業ですから、と私たちに委ねてくださるんです。最初は違和感がある箇所も栗山さんがおっしゃるやり方で進めていくと、いつの間にか空いていたところが埋まり、ベストの状態になっているので不思議でした。

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――アンチゴーヌと対峙するクレオン役を演じる生瀬勝久さとは、『楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~』では、役者と演出家という立場でお仕事されていましたね。今回、役者同士として共演することについて、生瀬さんは「非常にやりづらい」とコメントを出していましたが。

生瀬さんは、一度一緒にお仕事をされた相手を信頼してくださる方なので、関係性を一から作らなくてもいいので安心です。とはいえ、役者としての生瀬さんがどんな距離感で作品と向き合って作っていく方なのかをまだ知らないんです。同じ作品に出たことはあるんですが、現場で絡まない役どころだったので。生瀬さん本人にクレオンのようなイメージがないのでそれをこれから直接観ることができるのが楽しみです。生瀬さんはすごい役者ですから私もちゃんと対峙していきたいですね。

――2018年の幕開けと共に始まる『アンチゴーヌ』ですが、蒼井さんはこの作品をどうお客様へお薦めしますか?

難しそうに見えるかもしれませんが、私は、逆にとても分かりやすい作品だと思います。二つの考え方がぶつかり合う作品であり、太い芯が通っている作品なので。それから、ステージが「田」の字のような十字に作られ、十字の脇の四つのエリアも客席となるそうです。出演する側としては、舞台を観に来られるお客様もアンチゴーヌやクレオンがいるテーバイの国の人々として、そして共演者としてそこにいていただきたいですね。舞台ってお客さんとこうやって作り上げていくんだなって感じる作品になりそうです。そして、物語が始まれば「自分って何だろう」「人間ってなんだろう」「社会とは・・・?」と、思い思いに感じていただけるものになるでしょうね。

ギリシア悲劇をベースにした作品の中では一番シンプルな作品だと思います。戯曲を読み慣れていなかった20代の私が分かったぐらいですから。

――最後に、公演にに向けて意気込みをお願いします。

話が少し逸れてしまいますが、TVドラマ『先に生まれただけの僕』で、初めて高校教師の役をやらせていただいたんです。生徒役はほとんど演技経験のない子たちだったで、最初は皆、緊張していて声も張れない状況でした。でも、3ヶ月くらいの収録期間ですごく成長したんです。こんなにしっかり台詞を言えて動けるようになったんだと、その成長ぶりに刺激を受け、私も一つの作品でこのくらい成長したいなって心の底から思いました。

今回の『アンチゴーヌ』は、私の成長の場にしたいですし、しなければならないと思っています。アンチゴーヌのように「信念を貫く」生き方をするのにはすごい覚悟がいることなので、そのアンチゴーヌを演じる自分自身も悔いのないように、一公演一公演やり遂げたいですね。

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◆公演情報
パルコ・プロデュース2018『アンチゴーヌ』
【東京公演】2018年1月9日(火)~1月27日(土) 新国立劇場 小劇場<特設ステージ>
【長野・松本公演】2018年2月3日(土)・2月4日(日) まつもと市民芸術館<特設会場>
【京都公演】2018年2月9日(金)~2月12日(月・祝) ロームシアター京都サウスホール<舞台上特設ステージ>
【愛知・豊橋公演】2018年2月16日(金)~2月18日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT<舞台上特設ステージ>
【福岡・北九州公演】2018年2月24日(土)~2月26日(月) 北九州芸術劇場 大ホール<舞台上特設ステージ>

【作】ジャン・アヌイ
【翻訳】岩切正一郎
【演出】栗山民也
【出演】蒼井優、生瀬勝久、梅沢昌代、伊勢佳世、佐藤誓、渋谷謙人、富岡晃一郎、高橋紀恵、塚瀬香名子

(撮影/エンタステージ編集部)

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