紀伊國屋ホール60周年記念公演として2024年に上演され、満席のスタンディングオベーションを巻き起こした『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』。ファンの熱い要望に応え、多和田任益、嘉島陸、鳥越裕貴、木﨑ゆりあという“最強の4人”が2025年の年末、再び紀伊國屋ホールに帰ってくる。
本番の幕が上がるのは、もう間もなくだ。緊張感が漂うかと思いきや、そこには「短期集中決戦」を逆手に取った、このチームならではの濃密で凝縮された時間が流れていた。

【あらすじ】最も派手で、最もセクシーで、最も熱い『熱海殺人事件』

1973年の発表以来、つかこうへいの代表作として愛され続ける『熱海殺人事件』。『熱海殺人事件』には様々なバージョンが存在するが、中でも1993年に阿部寛のために書き下ろされた『モンテカルロ・イリュージョン』は、ひときわ異彩を放つ。
東京警視庁の木村伝兵衛部長刑事は、退廃的でセクシャルに描かれ、犯人・大山金太郎が棒高跳びの元オリンピック日本代表の補欠選手という突飛な設定。「スタンダード」版の泥臭さとは一線を画す、派手なショーアップと狂気が交錯する、まさに“イリュージョン”な作品だ。

本作に惚れ込んでいた演出の中屋敷法仁と、多和田・鳥越といった熱き俳優たちの出会いが、伝説の作品を再び紀伊國屋ホールへと呼び戻した。
【稽古場レポ】多和田任益・鳥越裕貴らの阿吽の呼吸!1年半の空白を感じさせない熱気

稽古場に入ると、キャスト陣はそれぞれウォームアップの真っ最中。すでに空気感は出来上がっている。
ふと、鳥越裕貴が嘉島陸を見て「なんか(肌が)白くなってない?」といじる声が聞こえた。確かに、2024年公演時の嘉島は日焼けなのか黒めだった。そうか、あれは夏の出来事。そうか、あれからもう1年半が経つのか――。暑い夏をさらに熱く滾らせた「モンテ」チームが、今度は真冬に燃え上がろうとしている。


上演発表時、スケジュールを見て「おや?」と思ったファンの方も多かったのではないだろうか。
「稽古期間、なくない・・・?」と。
木村伝兵衛役を務める多和田任益は、所属するダンスエンターテインメント集団「梅棒」の公演が12月7日まで本番中だった。通常、演劇の稽古は1ヶ月程度かけるのが通例だが、今回は異例のタイトスケジュールだ。しかし、この多和田がいなくては「モンテ」は始まらない。

無茶とも思えるこのスケジュールを阿吽の呼吸で成立させてしまうのが、中屋敷法仁版「モンテカルロ・イリュージョン」チームの凄みだ。稽古期間が短いからなんだ!と言わんばかりの集中力。まさに「短期集中決戦」の様相を呈している。
演出・中屋敷法仁がこだわる「音」と、多和田任益の激情

稽古は和気あいあいとした雰囲気の中、ゆるやかに始まった。最初に返していたのは、物語のクライマックス、木村伝兵衛に手錠がかけられるシーン。
いきなりの重要局面に驚く間もなく、多和田のスイッチが入る。かつて愛した男への想い、やり場のない感情を、まっすぐ前を見つめ迸らせる多和田。その姿を見ると、「もう、この人にしかこの作品はできないのではないか」と圧倒される。すでに作品が身体に染み込んでいるのが分かる。
演出の中屋敷は、今回、すべてにまつわる「音」にこだわっていた。どの言葉をピックアップして立たせるのか、BGMが切れるタイミング、台詞のテンションの維持。俳優たちはすでに台詞も動きも入っているため、中屋敷はそこに繊細な変化を加えていく。バラバラとシーンを指定しながら、即座に反応していく俳優陣を眺める中屋敷の表情は、どこか楽しそうだ。
殺陣返しならぬ「マイク返し」!? 歌とダンスの狂騒


「殺陣返しならぬマイク返しをさせてください」
中屋敷のオーダーで始まったのは、昭和歌謡が次々と歌い継がれる冒頭のシーン。4者によるマイク主導権の奪い合いが始まり、目まぐるしく立ち位置が入れ替わる。
嘉島の台詞がゲシュタルト崩壊を起こしたり、木﨑ゆりあの個性的な歌声が(取材時間が午前中だったから?)まだチューニング中だったりとハプニングも起きるが、そこへすかさず鳥越が的確なツッコミを入れるのが何とも心地よい。


多和田とは違うベクトルで、鳥越もまた抜群の安定感を見せる。出るところは出る、引くところは引く。その塩梅が絶妙。例え何が起きても拾ってくれる“しんがり”の安心感は、この人あってこそだ。
「マイクリレーは安全に」と段取りを確認する際は、元アイドルの木﨑が主導権を握る。ダンスをしながら自然にマイクを扱う様は流石、元AKB48は伊達じゃない。また、ある曲のダンスシーンでは中屋敷が「嘉島くんの足が前回よりも上がるようになっている!」と驚いていた。本作の振付を担当する「梅棒」の野田裕貴が、稽古を見る中で嘉島が動きやすいように振りを細かく調整したのだという。ただ前回をなぞるだけでなく、役者の強度に合わせて作品としてブラッシュアップされているのが分かった。
稽古場では力を合わせた「短期集中決戦」、本番はガチンコの「大乱闘」へ!

長台詞に次ぐ長台詞。つかこうへい作品特有の言葉の洪水に、歌とダンスが加わり圧倒的にショーアップされた「モンテ」。意外にも、1日の稽古時間は驚くほどコンパクトなのだそう。さっと集まり、ぎゅっと通して、ぱっと解散する。やりすぎず、鮮度を保つ。締めるところは締める。
稽古場で見た姿が一丸となった「短期集中決戦」だとしたら、ひとたび幕が開けば、そこは4人の役者がガチンコでぶつかり合う、まさに「大乱闘」の場となるだろう。信頼し合っているからこそできる、容赦のない芝居での殴り合い。劇場で、火花散る瞬間が待ち遠しい。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
アフタートークショーも開催!
豪華ゲストを迎えて、ここでしか聞けないテーマでトークを展開!
また、クリスマスにはお楽しみプレゼント大会も実施。
■12月19日(金)18:00
ゲスト:野田裕貴(梅棒)
※「熱海殺人事件モンテカルロ・イリュージョン2025」振付担当
テーマ:「歌と踊りのエンターテインメント」
■12月23日(火)18:00
ゲスト:高橋龍輝
※2022~2024年「熱海殺人事件」熊田留吉・大山金太郎役にて出演
テーマ:「私たちにとっての熱海殺人事件」
■12月24日(水)14:00
ゲスト:黒羽麻璃央
※2017年「熱海殺人事件 NEW GENERATION」大山金太郎役にて出演
テーマ:「クリスマスだぜ!プレゼント大会」
■12月25日(木)14:00
ゲスト:村山彩希
※2025年「新・幕末純情伝」沖田総司役にて出演
テーマ:「クリスマスだよ!プレゼント大会2」
■12月26日(金)14:00
ゲスト:荒井敦史
※2020~2024年「熱海殺人事件」木村伝兵衛役にて出演
テーマ:「今年もお世話になりました。来年はどんな年に?」

『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン2025』公演日程・チケット
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン2025』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】2025年12月18日(木)~12月28日(日) 紀伊國屋ホール |
| スタッフ | 作:つかこうへい 演出:中屋敷法仁 振付:野田裕貴(梅棒) |
| キャスト | 木村伝兵衛部長刑事 役:多和田任益 速水健作刑事 役:嘉島陸 犯人・大山金太郎 役:鳥越裕貴 水野朋子婦人警官 役:木崎ゆりあ |
| チケット情報 | 【料金】8,500円(全席指定・税込) 【一般発売日】2025年11月3日(月・祝) |
| 公式サイト | https://www.gorch-brothers.jp/atamimonte_2025 |


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