平野良×安西慎太郎で紡ぐ『時る』スピンオフ『羽州の狐』レポート

当ページには広告が含まれています

2024年10月24日(木)に東京・CBGKシブゲキ.にて舞台『羽州の狐』が開幕した。初日前日に公開ゲネプロが行われたので、その模様とキャストコメントを合わせてお届けする。

目次

『時をかけ・る~LOSER~』のスピンオフ公演を和製ダークファンタジーに

『羽州の狐』舞台写真

本作は、2024年3月に上演した舞台『時をかけ・る~LOSER~』(通称:時る)のスピンオフ公演。『時る』公演の中で上演された2.5次元風舞台『ラブミュ★北の関ケ原』の中で、わずかな出番ながらも「可愛らしい」と人気を博した最上義光(通称:シャケ様)の物語を『ラブミュ★北の関ケ原』とは打って変わり、和製ダークファンタジーとして描く。

演出を務めるのは『時る』でも演出を手がけた平野良。自身が俳優として得たストレートプレイ、ミュージカル、2.5次元、落語など多彩なジャンルでの経験を生かし、『時る』公演でも見せていない新たなジャンルで独自の世界を創り上げる。さらに脚本も『時る』から引き続き赤澤ムックが務める。

主演は『時る』でも最上義光を演じた安西慎太郎。最上義光の甥・伊達政宗役に同じく『時る』で伊達政宗を演じた松田岳。伊達政宗の従兄弟・伊達成実役を木ノ本嶺浩。そして、演出の平野が最上義光のキーパーソンとなる謎の弟・中野義時を演じる。

さらに、松田、木ノ本、平野の3人は上記配役とは別に、最上義光の生涯にとっての重要な人物を一人二役で演じる。

ゲネプロレポート:愛に囚われた男の深淵に挑む安西慎太郎が更なる新境地を開く

『羽州の狐』舞台写真

山形に一匹の”狐”あり。狐の名は最上義光。賢くも日和見主義だった若き頃、彼に拭いきれない後悔が生まれた。その日から狐の傍らには”人ならざる者”が存在し、彼を冷ややかに見つめる。

慶長五年、九月。関ヶ原の勝敗を知った最上義光は、甥の伊達政宗に、東軍勝利を祝おうと一宿の誘いをする。互いに十数名の家臣を引き連れ、伊達と最上は、羽州のとある山道を馬でゆく。昼過ぎから降り出した雨が激しくなっていた。

『羽州の狐』舞台写真

雨宿りしようにも集落はなく、とりいそぎの木陰で、まずは両当主からと馬を降りたその矢先、最上義光、伊達政宗、そして伊達政宗の従兄弟の伊達成実は、地滑りに遭い、洞窟に閉じ込められてしまった。そこに最上義光の弟を名乗る中野義時が現れ、4人は洞窟の中で一夜を明かすことになるが、最上義光には何やら思惑があるようだった・・・。

物語の舞台は最上義光たち4人が閉じ込められた洞窟というワンシチュエーションの密室劇が基本となっているが、そこで4人のみの濃厚な会話劇が繰り広げられ、時に最上義光が人生を振り返り、過去に思いを巡らすことで場転していく。

『羽州の狐』舞台写真

本作における最上義光は、『時る』公演での『ラブミュ★北の関ケ原』とは打って変わり、演出の平野と脚本の赤澤によって、最上義光が抱えた悲哀を猛々しく、いっそう哀れに描かれている。

その最上義光を演じる安西は、次々と悲劇に見舞われ、それを機と自分を追い込んだ者たちを涼しい顔で嵌めていくという狂気を孕んだ怪演で、愛に囚われた男の深淵に挑み、俳優として更なる新境地を開く。

『羽州の狐』舞台写真

伊達政宗を演じる松田は奔放さを見せながらも、最上義光から向けられた強い殺意に真向から挑む。伊達成実役の木ノ本は泰然自若とステージ上に静かなる存在感を放ち、最上義光と伊達政宗との間で淡々と心理戦を繰り広げていく。さらに中野義時を演じる平野は、ミステリアスな姿で物語の展開にアクセントを加える。

『羽州の狐』舞台写真

そして、その3人が一人二役で演じる人物たちも含めた最上義光と対峙する登場人物たちとのやりとりによって“哀しくも美しい幽霊譚”が紡がれていく。

『羽州の狐』舞台写真

俳優たちの魅力を引き出す平野の演出に、それぞれの俳優への“あてがき”で書き下ろされた赤澤の脚本も見どころの本作。『時る』公演とはまったく毛色の違うスピンオフ作品が生み出された。

舞台『羽州の狐』は、10月24日(木)から10月27日(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!にて上演。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

あわせて読みたい
平野良×赤澤ムック『羽州の狐』に向けて――演出×脚本のクリエイター対談 2024年10月に上演が決定した舞台『羽州の狐』。本作は、今年3月に上演された歴史オムニバスストーリー『時をかけ・る~LOSER~』(通称:時る)のスピンオフ公演で、「...

『羽州の狐』舞台写真

『羽州の狐』キャストコメント

安西慎太郎

『羽州の狐』ついに開幕致します。
面白いキャスト、素晴らしいスタッフ達と共に手を取り合い大切に作って参りました。『時をかけ・る』シリーズ1があったからこそ、の今回。その作品を愛し待って下さっているお客様がいるからこその、第二弾スピンオフがあると思っています。
今回は内藤さんと前川さんは残念ながら参加できませんが、また全員で『時る』ができるように、今以上に『時る』が愛されるように『羽州の狐』愛を持って優しく丁寧に演じていきます。演劇というフィクションの世界でお客様の心の何処かに触れそれが何かの支えになれば嬉しく思います。
どうぞ宜しくお願い致します。

松田岳

松田岳です!時をかけ・るから約半年の期間で本作に出させて頂けるとは予想しておらず、びっくりしています。前作でのシャケ様、最上義光伯父さんにこんな背景があったなんて、その歴史の事実と慎ちゃんが演じる伯父さんに何度も心が締め付けられました。伊達政宗としては前作直江兼続との友情が芽生え、今作ではどんな活躍が見れるのか是非注目してみて頂ければ!演出の平野良さんは稽古後に毎回筋トレをされているのですが、それを見守る出演者3人の図が大好きです。こちらからは以上です!頑張ります!

木ノ本嶺浩

いよいよ初日の幕が開きます。
経験と実績と抜群の感性に裏打ちされた、演出家平野さんの言葉はこの物語を立体化するための大きな指針となり僕達を導いてくれました。
安西さんは深淵に光を照らし深く入り込み、突破口を掴んだ松田さんは生き生きと大きく躍動し続け、そんな心強い仲間と交わす台詞は驚愕と発見の連続で僕自身も今までとは違う演劇体験をしています。このような経験ができることに感謝です。
限られた空間の中で思惑と知略が絡み合い、夢と現実を縫い目なく飛び越え、
観ていただく方々とこの不思議な物語を共に体験できたら幸せです。
どうか狐に化かされませんように。

平野良

演出・出演を務めます平野良です。今年3月に公演した『時をかけ・る~LOSER~』のスピンオフになります。脚本の赤澤ムックさん、音楽のオレノグラフィティさんとの新作。『時る』は5作からなるオムニバスでした。その中でも一番ポップな作りだった「ラブミュ」に登場した、これまたポップな人物、最上義光に光を当てた今作。なんとテーマはダークファンタジーです。本編では垣間見ることの出来なかった彼の過去、そして想いが軸となった密室劇。土砂崩れで閉じ込められた最上義光、伊達政宗、伊達成実、中野義時の四人で繰り広げられる会話劇ですが、義光による化かし合いが始まります。彼はなぜ人を誑かすのか。思う存分振り回されてください。

『羽州の狐』公演情報(チケットなど)

2024年10月23日(金)~10月27日(日) CBGKシブゲキ‼

【脚本】赤澤ムック
【演出】平野良

【出演】安西慎太郎、松田岳、木ノ本嶺浩、平野良

【公演サイト】https://le-himawari.co.jp/galleries/view/00132/00702

『羽州の狐』舞台写真

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

目次