「ゆめくろ」の初のメディアミックスとして、まもなく上演される舞台『夢職人と忘れじの黒い妖精』。「舞台化」で、ナナシ役を演じるのが、橋本真一だ。ナナシと言えば、「ゆめくろ」の中でも特に謎多きキャラクター・・・橋本は、どのように役と向き合っていこうと思っているのか?また、「ゲームから舞台化」の場合の役へのアプローチの考え方から、橋本自身の“夢”の話など、様々な角度から話を聞いた。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
橋本真一、『夢職人と忘れじの黒い妖精』とのファーストコンタクトを振り返る
――ご出演が決まって、ゲームのことを知った時はどんな印象を持たれましたか?
キャラクターの数がとても多くて、それぞれがとても魅力的だなと思いました。職業の数もとても多く、実際にある職業もあれば、現実世界にはない職業もありますよね。それが個性になっているし、すごく興味を惹かれました。
物語を進めていきながら「このキャラクターはどのタイミングで出てくるんだろう?」とか、「このキャラクターはどんな話し方をするのかな」とか、いろいろ気になっちゃいました。ビジュアル面も含めて、キャラクターとしてみんな粒だっているなと思いました。
――橋本さんが演じられるナナシは、登場キャラクターの中でも特にトリッキーな存在ですよね。
もう本当に謎に包まれすぎていて(笑)!隠されている設定を知るまでは、どういうキャラクターなのか想像がつかなかったです。色彩的にも華やかなキャラクターが多い中、服がモノトーンで悪っぽい見た目だぞ?とか、考えるのが面白くて。役者としては演じがいがあって、ありがたい役をいただいたなと。
僕、今年で35歳になるんですけれど、キャリアを重ねてきたこのタイミングでこの役をいただいたことは、役者としても人としてもレベルアップに繋がるんじゃないかと思えて、楽しみでもあり、挑戦でもあるなと思いました。
――最近の橋本さんのお芝居を拝見していて、演じられる役に変化が出てきたなと思っていました。
僕も思ってました。20代はやっぱり元気な役や真っすぐな役、少しナヨッとしてる役を演じることが多かったんですけど、この数年は大人の役やミステリアスな役をいただくことが増えてきまして。ナナシというキャラクターも、まさにそうですよね。もちろん、どの役も違う種類の演じる難しさがあるんですけど、個性のある役を託していただけたということは、役者として信頼していただけたのかなと勝手ながら嬉しく思っておりました。ちゃんと期待に応えられるように、精一杯力を注いでがんばりたいです。
――キャラクターとの最初の接点はビジュアル撮影かと思いますが、どのようにアプローチされましたか?
写真でも、飄々としているというか、掴みきれない感じを表現したいなと思って臨みました。「笑う」にもグラデーションがあるじゃないですか。普通に笑うと子どもっぽくなってしまうので、絶妙なバランスの表情を作ろうと意識していました。
あと、衣裳の造形がすごくて!帽子の角度は、特にこだわりました。イラストどおりにやると目に影がかかってしまって顔が見えづらくなってしまって。でも、その雰囲気、影のある雰囲気は残したくて、クリエイトチームの方々が力を集結してくださってギリギリを狙って、絶妙なラインを目指しました。
――本作は、出演者発表前にビジュアルをチラ見せするおもしろいスタイルを取っていましたよね。橋本さんのところには、予想の声届いていましたか?
分かる範囲ですけど、僕がナナシ役になるって思っていた人はほとんどいなかったんじゃないかな・・・。そうそう、僕、メガネをかける役をいただくことが多くて。
――確かに!
僕は視力が良くて裸眼なので、プライベートでは度入りのメガネをかけたことないんですよ。橋本家、僕以外は全員視力が悪いのに、僕だけすごく視力がいいんです(笑)。でも、メガネをかける役を多く演じていたから、ファンの方からはメガネのイメージがあるみたいで。リッシュやエストを予想している方はいたみたいです。だからびっくりされたんじゃないかな。
――演出の西田大輔さんとご一緒されるのは初めてですか?
はい。でも、事前にいろんなところからお話は聞いていて。殺陣の手数がすごいとか。お芝居の面でも、仲のいい役者さんや、個人的にこの人のお芝居好きだなって思う役者さんが、西田さんをすごく尊敬されてたりするので、とても楽しみですし、西田さんが「ゆめくろ」の世界をどう作るのか、それも楽しみです。
――西田さんとの出会いが新しい化学反応を生みそうですね。
アクションが好きなので、「舞台ゆめくろ」でもアクションがあったら嬉しいですし、今回をきっかけにご縁が繋がったらいいなと。演劇って、本当にご縁だと思うので。一つの作品で関わったご縁からまた新しい作品が生まれて、演劇を好きなお客さんも次から次へと出会っていくのって、素敵な形の一つだと思うんですよね。「舞台ゆめくろ」をきっかけに演劇に触れて、演劇ファンが増えてくれたら役者として本望ですし、演劇人としてはとても嬉しいことなので。
橋本真一が「ゲームの舞台化」時に考えること
――そうですね。最近、2.5次元舞台作品の中でも、ゲームの初のメディアミックスが「舞台」というケースが増えた気がします。
増えましたよね。「2.5次元舞台化」がメジャーになってきましたけど、原作がどんなメディアかによってぜんぜんアプローチが変わってくるんですよ。
お芝居を始める前は、台詞をどう発するかが大事なイメージがあったんですけど、いざ役者としてお芝居をしてみると、それよりも動きや表情、距離感とか、言葉を発していない部分がすごく重要で。無声映画みたいに、声がなくても成立させられるのが目指す先なのかなと思ったりするんです。
一方で、2.5次元舞台をやらせていただく時は、アニメがあればそれをめちゃくちゃ研究するんですね。喋り方はもちろん、どういう動きをするのか、このキャラとこのキャラの距離感はどうなのか。そういった部分を参考にするんですけど、アプリゲーム等の場合、立ち絵での表現が多くなるので、それが分からないんですよ。
設定や台詞から得られるキャラクターの印象から「こういう動きするかな?」と考えて作っていくのは、難しくも役者としてはとても楽しいものです。こうやって考えると、ゲームから舞台化される作品って、ある種ストレート舞台での役作りと近いのかも。
でも、ストレート舞台の役作りと決定的に違うのは、お客さんの頭の中には、個々が想像する正解があることです。ゲーム上では動いている姿はそんなに多くはないけれど、プレイしている方の脳内では「きっとこう動く」というイメージができているんですよね。
自分で想像して役を作っていくけれど、イメージから遠ざからないように、皆さんの頭の中にあるイメージも掬いたいと思っています。今、話しながら思いましたけど、もしかしたらストレート舞台よりも、アニメがある2.5次元舞台より、難しいのかもしれない。
皆さんの想像するものも多分ちょっとずつ違うだろうから、その集合知を探したいし、一方で「そうだったんだ」ってキャラクターの新しい魅力の発見にも繋がってほしいし。2.5次元舞台は、作品とお客さんの間にある「イメージの差」のようなものをどう埋めていくかが大事だと思うんですが、この差が、ゲームが原作の時はすごく広い気がします。
――橋本さんが「ナナシ」をどう作るのか、お話を伺ってますます楽しみになりました。
突き詰めていけば、より自分らしいもの、替えの利かないものが生まれると思うので、自分としてもすごく楽しみです。がんばります!
橋本真一に聞く「見た夢」と「叶えたい夢」
――「ゆめくろ」は“夢”がキーワードですが、夢にも種類がありますよね。橋本さんは、寝ている時によく“夢”を見ますか?何か覚えている面白かった夢などありますか?
夢を見て「面白かったな~」と思って起きることあるんですけど、全部忘れちゃうタイプです。でも、一つよく覚えている夢があって・・・。2年ぐらい前かな?一時期、筋トレにハマっていた時期があったんです。今でもやるのですが、1番ハードにやっていた時期ですね。そんな僕の夢の中に、猫が出てきまして。僕は夢の中で、その猫をずーっと撫でていたんですね。で、起きたら・・・自分の肩の筋肉を撫でていました(笑)。
――筋肉が猫に(笑)。
筋トレがんばってたから、肩の筋肉が丸くていいカンジだったんですよ。それを、くるくるずーっと撫でてかわいがっていました。これは忘れられない(笑)。
――(笑)。では、もう一つ、橋本さんの役者として叶えたい“夢”はありますか?
僕、役者として舞台に立たせていただいて、それを受け取ってくれる方がいるという時点で、現在進行形で夢はずっと叶い続けているという感覚があるので、これがずっと続けばいいなっていうのが一番の夢なんです。コロナ禍があったりもしたし、いい時も悪い時もあって、なかなかお仕事ができない時期もありましたし。このままずっと舞台に立ち続けて、受け取ってくれる人がずっといてくれたらそれが一番嬉しいことです。
僕がお芝居を続けている理由って、自分のお芝居や表現に触れてくださった方の人生や心が豊かになったり、何かいい影響が生まれてくれたり、それを僕自身も実感できたらすごく幸せで。過去にそう思えた経験があって、そのためにお芝居を続けていこうって思ったんです。だから、一つ夢として掲げるとしたら、その影響がよりたくさんの方に届けばいいなと思います。
もう一つは、お芝居から少し離れちゃうんですけど、ずっと思っている“夢”があって。
僕、15歳の時に父親を病気で亡くしたんです。その父が生前、母と二人の夢として「子どもたちが独り立ちしたら夫婦でカフェをやりたい」と言っていて。父は亡くなってしまったけれど、母は今もそれを夢として持っているんですね。だから、僕が今やりがいを持って向き合っているこのお仕事でちゃんと成功して、「母の夢を叶えてあげたい」っていう夢を、20歳の頃から持ち続けています。これはまだ叶えられていないので、がんばりたいなと。
――素敵なお話をありがとうございます。橋本さんのこれからのご活躍も楽しみにしております。まずは「ゆめくろ」、ですね!
橋本:そうですね!演劇が好きで「ゆめくろ」に出会った方もいれば、原作のアプリが好きで舞台に初めて足を運んでくださる方もたくさんいらっしゃると思います。「作品」に触れて、キャラクターへの愛が高まったり、日々の楽しみになったと思ってもらえたり、舞台で役者が演じることで、皆さんの想いに「+1」を上乗せできたら本当に嬉しく思います。
夢の溢れる劇場空間と時間にできるように、精一杯がんばりますので楽しみにしていてください!
DMMTVにてライブ配信が決定!配信日時:8月11日(日)17:00公演
舞台『夢職人と忘れじの黒い妖精』公演情報
<上演スケジュール>
2024年8月2日(金)~8月12日(月・休) シアターH
<スタッフ・キャスト>
【原作】「夢職人と忘れじの黒い妖精」(株式会社ジークレスト)
【脚本・演出】西田大輔
【音楽】TAKA
<メインキャスト>
クロウ:武子直輝 イツキ:佐野真白 グランフレア:川上将大
ルージュ:古谷大和 ノア:新谷聖司/
カイ:若林星弥 シオン:熊谷魁人
カミュ:小野健斗 セブン:吉原雅斗 ユミル:梶田拓希
ヴィクトル:田内季宇 レン:武本悠佑/
ナナシ:橋本真一 ジョー:伊勢大貴 エース:内田将綺 マム:田中良子/
テスタメント:矢田悠祐
アンサンブル:毛利光汰 千枝義人 粂川暁典 平井颯太
<チケット>
【料金】全席指定:11,000円(税込)
【一般発売】
https://l-tike.com/stage_yumekuro/
舞台『夢職人と忘れじの黒い妖精』公式サイト・SNS
【舞台公式サイト】https://www.marv.jp/special/stage_yumekuro/
【舞台公式X(Twitter)】@stage_yumekuro
【舞台公式Instagram】stage_yumekuro
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