2024年1月22日(月Iに東京・大手町三井ホールにて、舞台『ある閉ざされた雪の山荘で』が開幕した。本作は、東野圭吾によるミステリー長編小説を舞台化したもの。主演を室龍太が務め、今江大地らが出演する。
「ある閉ざされた雪の山荘で」は、1992年に講談社ノベルスとして単行本が発行され、1996年に講談社文庫から文庫本が発行された作品。1993年には第46回日本推理作家協会賞(長編部門)の候補に上がり、1月12日(金)から映画も公開されており、発表から約30年経った現在でも“傑作”として高い評価を得ている。
舞台版の構成・演出は世界の名作ミステリーを丁寧に舞台化するプロジェクト「ノサカラボ」の野坂実が務め、脚本は米山和仁が担当。
物語の舞台は「吹雪の山荘」。舞台役者としていくつもの劇団を渡り歩いてきた久我和幸(室龍太)は、演劇界でその名を知らない者はいない劇団「水滸(すいこ)」のオーディションを受け合格した。「水滸」の公演は出演をきっかけにテレビで活躍する役者も少なくない。
そんな人気劇団の新作に参加できると喜んでいた久我の元に、演出家である東郷陣平(声:山寺宏一)から1通の手紙が届く。その手紙は合格者のみが参加できるオーディションへの招待状だった。手紙の指示通りに久我は人里離れた山荘に向かう。そこには、久我の他にオーディションに合格した男女6人が集められていた。
集められたのは、女性メンバーのリーダー格である笠原温子(綾凰華)、奔放な言動が目立つ中西貴子(大野いと)、お嬢様かつ愛らしい容姿を持つ元村由梨江(本西彩希帆)、劇団の古株である雨宮京介(小南光司)、由梨江に好意を抱き猛アタックしている田所義雄(加藤良輔)、言動は粗暴だが気の利く本多雄一(今江大地)。全員「水滸」の劇団員で、久我は唯一の“部外者”だった。
そこで久我は、オーディションで目を引いた麻倉雅美(入来茉里)が選ばれていないことに気づく。いい芝居を見せていたが、オーディションには不合格だったらしい。彼女のことを聞くと、なぜだか劇団員たちの口は重かった。
到着早々、久我たちに奇妙な課題が出される。それは、「豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇を演じろ」というものだった。手紙やメモで次々に新しい指示が出される。そしてついに、オーディション参加者の1人の失踪と共に第一の殺人が起きる。残された6人は、陸の孤島と化した山荘で殺人事件の犯人探しに乗り出すのだが・・・。
公開ゲネプロ終了後に行われた会見では、まず、主演の室が「今までにやったことのない役に挑戦しているので、稽古の時から課題だらけでプレッシャーに押しつぶされそうなのですが、2024年はいろんなことに挑戦していきたいと思っていたので、この状況すらも楽しめるような強靭なハートでがんばっていきたいと思います」と挨拶。
共演の今江も「原作を読んで、この役を僕がやるの?!と思いながら、ちょうど公開された映画も拝見して、自分としてはどうやって演じていこうかと、野坂さんに相談しながら稽古場で作り上げてきました。自分ができることをしていきたいなと思っています」と語った。
演出の野坂は、室、今江ともに作品作りをしたことがあり、「2人のお芝居のことはよく分かっておりますので、このキャラクターを任せられる方としてキャスティングさせていただきました」と絶大な信頼を置く。座組の仲も良く、室は「田所役の加藤良輔くんが大好きなんです」と明かした。
本作が描かれたのは、1992年。野坂は「設定を現代に持ってくる、もしくは2000年代ぐらいに変更することも考えたのですが、原作の本がとにかくおもしろいので、これをブラッシュアップしたいと思い、時代感はそのままにチャレンジすることにしました。それに合わせて、役者さんたちのお芝居の仕方も全部変えてもらっています。今の若者たちは直接対面でぶつかることは少なくなっていると思います。ですが、本作では人と人とがぶつかり合うシーンがとても多いです。演出効果としては、エンタメ寄りになりそうなところを少し抑えて、あえてストレートプレイで勝負しています。役者さんたちの熱のこもったお芝居を、ぜひ楽しんでいただきたいって思います」とアピール。
映像化は不可能と言われていた作品ということもあり、劇中はきっかけや、立てなければいけない説明の言葉や台詞のオンパレードだ。稽古場でみんな頭を悩ませながら作品と向き合ってきたという。「小説を読んだ方が観て、おもしろかったと思っていただけたら一番いいですし、読んでいない方にも楽しんでいただけると思っていますが、受け止め方は人それぞれ。いろんな意見が出るように、この公演をがんばっていきたいです」と室。
最後に、室は「映画とは全く違う別物なので、どっちも楽しんでいただけるように僕たちもがんばりたいと思っています。僕の立場から一緒に推理をしても良し、いろんな登場人物の視点から観ても良し、いろんな角度で楽しんでいただけたらいいなと思います。よろしくお願いします」と締めくくった。
クローズドサークルの中に何重にも仕掛けられた人間ドラマ。ミステリー作品のため、ネタバレ厳禁だが、登場人物の細かな動き、視線一つ、至るところに“真実”が散りばめられている。役者たちが、“役者”としてぶつかり合う様からは、演劇ならではの自由な視点とライブ感で、作品の新たなおもしろさを味わえる。
舞台『ある閉ざされた雪の山荘で』は2024年1月22日(月)から1月28日(日)まで、東京・大手町三井ホールにて上演。上演時間は約2時間20分(休憩なし)を予定。
なお、千秋楽となる1月28日(日)12:00公演では、ライブ配信も実施される。詳細は、公式サイトにてご確認を。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
舞台『ある閉ざされた雪の山荘で』公演情報
上演スケジュール
2024年1月22日(月)~1月28日(日) 大手町三井ホール
スタッフ・キャスト
【原作】東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」(講談社文庫)
【構成・演出】野坂実
【脚本】米山和仁
【出演】
久我和幸:室龍太
中西貴子:大野いと
田所義雄:加藤良輔
元村由梨江:本西彩希帆
麻倉雅美:入来茉里
笠原温子:綾凰華
雨宮京介:小南光司
本多雄一:今江大地
公式サイト
【公式サイト】https://nosakalabo.jp/tozayuki/
【公式X(Twitter)】@tozayuki_stage
(C) 舞台『ある閉ざされた雪の山荘で』©東野圭吾/講談社