2023年8月から9月にかけて福岡、大阪、愛知、東京で上演されるミュージカル『浜村渚の計算ノート』。その開幕を間近に控えた8月中旬に公開稽古が開催された。
『浜村渚の計算ノート』は、2009年7月より講談社Birthおよび講談社文庫(共に講談社)から刊行されている青柳碧人による日本の推理小説。作者が中学生からの「数学なんか勉強して、一体なんの意味があるの?」という問いへの答えに困り、自分なりの答えを見つけてみようと書きはじめ、読者からは「数学が苦手でも楽しめ、好きになる本」と言われている。
ミュージカル化という新たな切り口で、2021年に初舞台化されており、原作の面白さや数学の奥深さを魅力的な楽曲とともに表現した「数学ミステリーミュージカル」として、教育的価値も高い作品と好評を博し、2023年夏に再び上演されることが決定した。
主人公となる中学2年生の浜村渚は2021年の初演同様にオーディションで選出された桑原愛佳、渚と共に悪のテロ組織『黒い三角定規』に立ち向かう、数学には疎いが刑事としてのカンが鋭い武藤龍之介役で立石俊樹、武藤と共に事件を追う刑事・瀬島直樹役で藤岡真威人、同じく刑事・大山あずさ役で飯窪春菜が出演する。
渚と対峙する悪のテロ組織『黒い三角定規』のドクター・ピタゴラス役はダイアモンド☆ユカイ、ファントム役は朝隈濯朗、キューティー・オイラー役は井上小百合、モンキィ・ホール役はレ・ロマネスクTOBIが演じる。
最初に公開された稽古シーンは、渚のソロナンバー。桑原が渚の心情を柔らかい澄んだ声で歌い上げながら、学校の友人たちがアンサンブルとして登場してダンスを披露する。新しい未来へ進んで行こうとする前向きな渚の思いが真摯に伝わってくるミュージカルシーンとなっていた。
続いて公開されたシーンは、渚が警視庁からスカウトされる序盤のシーン。立石が演じる武藤が『黒い三角定規』に立ち向かうために、数学の得意な中学生を捜そうとするところからスタート。
数学をはじめとした理系の科目を学校教育から外された世界で、渚の数学が好きだという気持ちを訴える桑原の歌唱から始まり、そこから、数学オタクだけどそれ以外の科目はからっきしダメという渚のキャラクター像と、学校の友達との楽しい学園生活が描かれる。
そして、飯窪が演じるあずさにスカウトされた渚が、立石演じる武藤と藤岡演じる瀬島の2人へ紹介されるシーンへと続く。渚が数学の天才と納得できない自称スーパーイケメン刑事の瀬島が、「時限爆弾ゲーム」や「ナンバープレイス」で渚に挑むという、本作の見どころの一つでもある数学や計算を用いた対決のシーン。真面目な武藤、表情豊かなあずさ、瀬島のコミカルさという刑事3人たちの個性が出ている楽しいシーンとなっている。
そこから最後の公開稽古シーンとして、ダイアモンド☆ユカイが演じるドクター・ピタゴラスを筆頭とした『黒い三角定規』のメンバーを紹介するミュージカルシーンへとつながる。ダイアモンド☆ユカイが、杖をマイクスタンドのように見立てたイカしたパフォーマンスで魅せれば、ファントム役の朝隈が不敵に謎めき、キューティー・オイラー役の井上が凜々しく美しく、モンキィ・ホール役のレ・ロマネスクTOBIは存在感バツグン。『黒い三角定規』の個性豊かなキャラクターたちのらしさを感じさせるナンバーとなっていた。
初演から引き続き出演する桑原の磨きのかかった演技と歌唱に、渚らしい変わらぬ初々しさ、そして新たなキャストたちによる個性豊かなキャラクターの役作りを、短い公開時間であったにもかかわらず存分に感じさせ、開幕が待ち遠しいワクワクさせる公開稽古となっていた。
ミュージカル『浜村渚の計算ノート』は、8月26日(土)・8月27日(日)に福岡・キャナルシティ劇場で上演後、大阪、名古屋を巡演。東京公演は9月14日(木)から9月18日(月・祝)まで東京・サンシャイン劇場にて行われる。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
ミュージカル『浜村渚の計算ノート』公演情報
上演スケジュール
【福岡公演】2023年8月26日(土)~8月27日(日) キャナルシティ劇場
【大阪公演】2023年9月1日(金)~9月3日(日) 森ノ宮ピロティホール
【名古屋公演】2023年9月9日(土)・9月10日(日) ウィンクあいち大ホール
【東京公演】2023年9月14日(木)~9月18日(月・祝) サンシャイン劇場
【出演】
浜村渚:桑原愛佳
武藤龍之介:立石俊樹
瀬島直樹:藤岡真威人
大山あずさ:飯窪春菜
穴杉よしこ:隅田美保
久住:入来茉里
セチ:藤岡舞衣
アキ:西條妃華
南田:小日向悠 近藤匠真(Wキャスト)
スミレ:中谷妃那 中山美優(Wキャスト)
キューティー・オイラー:井上小百合
モンキィ・ホール:レ・ロマネスクTOBI
ファントム:朝隈濯朗
ドクター・ピタゴラス:ダイアモンド☆ユカイ
<出演ダンサー>
SNACK ASHITAKA SKAJUN MIKADOLPHIN ZENON LIL PINSCHER
【原作】青柳碧人「浜村渚の計算ノート」(講談社文庫刊)
【演出】植木護
【脚本】嘉納みなこ 植木護
ほか
あらすじ
これは、もうひとつの日本の物語。
急増する少年犯罪の原因は「情緒も何もない冷たい科目」にあるという専門家の意見に従い、ついに政府は、「数学をはじめとした理系の科目を学校教育から外す」ことを宣言する。
制度がスタートして1年が経過した頃、ドクター・ピタゴラスと名乗る数学者が結成した
テロリスト集団『黒い三角定規』より『犯行予告』が届いた。
「『数学教育』を止めるなどといった愚かなことを即刻に改めよ。さもなくば、とある数学の法則に従い、殺人をはじめる。人質は、日本国民全員だ。」
要求に応えないと、とある数学の法則に従い、テロ行為を始めるという。 次々と引き起こされる事件を止めることができるのは、数学を理解するものだけ――。
そこで、警視庁は、一見平凡な、しかし数学を愛してやまない中学2年生の浜村渚に協力を要請する。テロリストの洗脳を受ける心配のない中学生である渚は、数学の知識を使い、鮮やかに事件を解決。渚本人も自分の “好き” を肯定することで勇気を得る。
そして、テロ組織と対峙するなかでの渚の成長は、 同級生や大人である刑事たちにも前向きな力を与えていくのだった。 はたして渚は、彼女と同じく数学を愛するテロリスト集団に、どのように立ち向かうのか――。
公式サイト
【公式サイト】https://www.hamamuranagisa-musical.com/
【公式Twitter】@hamamuramusical
【公式Instagram』hamamuranagisa_musical
(C) 浜村渚の計算ノート