2023年4月から5月にかけて、東京・大阪・松本の3都市で『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』の上演が決定した。本作は、2021年4月に初演の幕を開けるも、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、わずか数公演で東京公演の中断、大阪公演の中止を余儀なくされた作品。主演に稲垣吾郎を再び迎え、再始動の時を迎える。
主人公は、18世紀のフランス・パリに生きた実在の死刑執行人、シャルル=アンリ・サンソン。時には忌まわしい存在として人々に疎まれながらも、国家と法を重んじ、職務を遂行し続けた男は、その内心には常に死刑廃止論者としての死刑制度に対する葛藤しながらも、敬愛した国王ルイ16世も含め、およそ3,000回もの執行を手がけたと言われている。
舞台『サンソン』では、そんな彼の眼差しを通して、王族、貴族、革命家、一般庶民にいたるまで、フランス革命にかかわった多くの人間たちの理想や挫折、生き様を鮮やかに描いている。
演出は白井晃、脚本は中島かずき(劇団☆新感線座付作家)、音楽は三宅純。白井と中島と三宅は、『ジャンヌ・ダルク』(2010年初演)、『No.9—不滅の旋律—』(2015年初演)、そして本作と、足掛け10年以上3度にわたり、実在の人物を題材とした歴史劇を創作してきた。なお、稲垣と白井は『No.9—不滅の旋律—』(2015年初演)でもタッグを組んでいる。
再始動に伴い、「アンシャン・レジーム」(旧体制)の打倒を目指す革命のドラマにふさわしく、キャストにはフレッシュな若手俳優が集った。ルイ16世役の大鶴佐助をはじめ、崎山つばさ、佐藤寛太(劇団EXILE)、池岡亮介が新キャストとして加わり、革命期の青年たちを演じる。初演キャストからは、落合モトキ、清水葉月、田山涼成、榎木孝明らが続投となった。
『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』は、4月14日(金)から4月30日(日)まで東京・東京建物 Brillia HALLにて上演後、大阪・松本を巡演する。
コメント紹介
◆稲垣吾郎
『サンソン』再始動の話を聞いた時は素直に嬉しく思いました。白井さん、中島さん、三宅さんという素晴らしいクリエイターの方たち、そしてフレッシュなメンバーも加わるキャストの皆さんと、改めてこの作品に向かい合えることに感謝しています。
“死刑執行人”という非情な宿命を背負ったサンソンに再び向き合い、彼のような人物がいたという事実を、舞台を通して皆様に伝え、未来に繋げていければと思っています。
色々なお仕事をさせていただく中で、舞台は自分が自由に羽ばたけるような貴重な場所です。初演時は中止になってしまった公演も多く、ご来場が叶わなかったお客様もいらっしゃると思います。今回は多くのお客様と時間を共有できることを楽しみにしています。
◆白井晃(演出)
2021年4月の突然の中断から2年。再び『サンソン』が動き出す。私は、今回の公演を再演とは捉えていない。あの日の憤りからこの作品はずっと続いている。だから、再演ではなく再始動である。2年間という時間の中で私たちは多くのことを学んだ。不安の蔓延、虚偽と真実の不確かさ、価値の変化。だからこそ、今、フランス革命の中心にいて、時代の波に翻弄されながらも、使命を全うすることで自己の存在を見出そうとした「サンソン」の姿が崇高に思えてくるのだ。
◆中島かずき(脚本)
『サンソン』が再始動する。2021年に唐突に中断され、その公演の大半を中止せざるを得なくなり、それでもなんとか神奈川公演で大千穐楽にだけはたどり着けた。だが、そこにいた誰もが不完全燃焼な思いを胸に「もう一度」と熱く願っていた作品だ。2年の時を経て、新しいメンバーを加えて、ようやく胸の燻りに火をつけることができる。暗く辛い時代の重い使命を抱えた男の物語だが、しかし、その炎があれば、闇の先の光にまでたどりつけると信じている。
◆三宅純(音楽)
世襲の『死刑執行人』という宿命、動乱の時代がもたらす過酷な試練、シャルル=アンリ・サンソンをめぐる数奇な史実を知って、僕は震撼した。彼が責務を執行した現場の多くは、パリの住まいから徒歩圏にあり、街が今までとは違って見えてきた。サンソンの生きた時代、カオスとデカダンス、彼の美学とリリシズムを、白井晃さんの音楽構成案に繰り返し登場する「重低音」というキーワードと、どのように交差させるべきか、試行錯誤したのが今回のスコアだ。
この作品の初演はコロナ禍に翻弄され、余儀なく中断されたが、僕にはそれすらも物語の背景にある動乱の時代の事象に見えてきてしまっていた。今回の再演に際しては、中断された悔しさのエネルギーが昇華され、さらに凄みのある舞台になることを期待している。
◆大鶴佐助(新キャスト)
フランスには友人も多く、実際にフランス人を演じたこともあり、縁深いものを感じています。フランス革命という歴史の象徴でもある題材、そして首を切られてしまうルイ16世の心情などまだまだ未知の部分も多く、改めて勉強してお稽古に入りたいと思っています。
◆崎山つばさ(新キャスト)
お話をいただいたときは喜び、不安、緊張、楽しみなどが入り混じり、背筋が伸びる思いでした。18世紀という特別な世界観に入り込めることにワクワクしています。多くのことを吸収して1日も早く馴染めるように稽古に励んでいきたいと思っています。
◆佐藤寛太(新キャスト)
『銀河鉄道の夜』でご一緒させていただいた白井さんの演出ということで、演目を聞く前に「やりたいです!」と伝えました。初日から千穐楽に向けて変化することを楽しみながら、たくさん怒られて成長していきたいと思います。
池岡亮介(新キャスト)
今回のような時代の作品に出演するのは初めてですが、物語の裏側を探ることが好きなので“死刑執行人”という題材に隠されている見えない部分を追求できればと思っています。
役者の心情までしっかり見てくださる白井さんの期待に応えられるよう、嘘のない演技をお見せしたいです。
『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男-』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2023年4月14日(金)~4月30日(日) 東京建物 Brillia HALL
【大阪公演】2023年5月12日(金)~5月14日(日) オリックス劇場
【松本公演】2023年5月20日(土)~5月21日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
<チケット>
【一般発売日】
東京:3月26日(日)10:00~(予定)
大阪・松本:4月9日(日)10:00~(予定)
※まつもと市民芸術館チケットセンターの発売は4月15日(土)10:00を予定
スタッフ・キャスト
【演出】白井晃
【脚本】中島かずき(劇団☆新感線)
【音楽】三宅純
【原作】
安達正勝「死刑執行人サンソン」(集英社新書刊)
坂本眞一『イノサン』に謝意を表して
【出演】
シャルル=アンリ・サンソン:稲垣吾郎
ルイ16世:大鶴佐助
トビアス・シュミット:崎山つばさ
ジャン=ルイ・ルシャール:佐藤寛太
ナポリオーネ・ブオナパルテ:落合モトキ
ルイ=アントワーヌ・サン=ジュスト:池岡亮介
エレーヌ:清水葉月
デュ・バリー夫人:智順
マチュラン・ルシャール:春海四方
アントワーヌ・ルイ博士/グロ:有川マコト
ラリー=トランダル将軍:松澤一之
ジョゼフ・ギヨタン:田山涼成
シャルル=ジャン=バチスト・サンソン/マクシミリアン・ロベスピエール:榎木孝明
今泉舞 岡崎さつき 小田龍哉 加瀬友音 木村穂香 久保田南美
熊野晋也 斉藤悠 髙橋桂 チョウ ヨンホ 中上サツキ 中山義紘
奈良坂潤紀 成田けん 野坂弘 畑中実 古木将也 村岡哲至
村田天翔 ワタナベケイスケ 渡邊りょう
あらすじ
1766年、フランス。その日、パリの高等法院法廷に一人の男が立っていた。
彼の名はシャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。パリで唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者 “ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる誇り高い男だ。市中で最も忌むべき死刑執行人と知らずに、騙されて一緒に食事をしたと、さる貴婦人から訴えられた裁判で、シャルルは処刑人という職業の重要性と意義を、自ら裁判長や判事、聴衆に説き、勝利を手にする。
父・バチスト(榎木孝明)の仕事を受け継ぎ、処刑人としての使命、尊厳を自ら確立しつつあったシャルル。おりしもルイ15世の死とルイ16世(大鶴佐助)の即位により、フランスは大きく揺れはじめ、シャルルの前には次々と罪人が送り込まれてくるようになる。将軍、貴族、平民。日々鬱憤を募らせる大衆にとって、処刑見物は、庶民の娯楽でもあったが、慈悲の精神を持つシャルルは、自身の仕事の在り方に疑問を募らせていく。
そんなある日、蹄鉄工の息子ジャン・ルイ(佐藤寛太)が、恋人エレーヌ(清水葉月)に横恋慕した父を殺める事件が発生。その死は実際には事故によるものだったが、「親殺し」の罪は免れず、ジャン・ルイは車裂きの刑を宣告される。しかし、職人のトビアス(崎山つばさ)、後に革命家となるサン=ジュスト(池岡亮介)ら、彼の友人たちは、刑場からのジャン・ルイ奪還を目論み、成功する。この顛末を目の当たりにしたシャルルは、いっそう、国家と法、刑罰のあり方について、思考を深めることとなる。
さらに、若きナポレオン(落合モトキ)、医師のギヨタン(田山涼成)ら、新時代のキーマンとなる人々とも出会い、心揺さぶられるシャルルがたどり着いた境地とは——。
公式サイト
【公式サイト】https://www.sanson-stage.com/
【公式Twitter】@sansonstage