醍醐虎汰朗と阿部顕嵐が瑞々しい感情を読む『君の名前で僕を呼んで~5th anniversary~』朗読劇レポート

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醍醐虎汰朗と阿部顕嵐が瑞々しい感情を読む『君の名前で僕を呼んで~5th anniversary~』朗読劇レポート

2023年1月27日(金)から1月29日(日)まで東京・恵比寿ザ・ガーデンホールにて『君の名前で僕を呼んで ~5th anniversary~』が開催されている。本イベントは、映画『君の名前で僕を呼んで』の日本公開5周年を記念するもので、第1部では朗読劇『君の名前で僕を呼んで』、第2部では映画スペシャルトークショーが行われる。本記事では初日前に行われた公開ゲネプロの模様をレポートする。

映画『君の名前で僕を呼んで』は、80年代の北イタリアの避暑地を舞台に17歳と24歳の青年の初めて恋の喜びと痛みが描かれた作品。第90回アカデミー賞では主演のエリオ役を演じたティモシー・シャラメは演技が高く評価されアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。他にも作品賞、脚色賞、歌曲賞の4部門にノミネートされ、ジェームズ・アイヴォリーが脚色賞を受賞している。

第1部の朗読劇『君の名前で僕を呼んで』ではエリオ役を醍醐虎汰朗、オリヴァー役を阿部顕嵐が演じる。脚本・演出は「朗読劇 私の頭の中の消しゴム」などを手掛け、“朗読劇の名手”ともいえる岡本貴也が担当。また本作の劇伴はステージ上で生演奏され、音楽監督の土屋雄作がヴァイオリン、永田ジョージがピアノ、眞鍋香我がギターを奏で、感情に寄り添う。

ある冬の日、北イタリアの別荘にいたエリオ(醍醐)の元に1本の電話がかかってくる。オリヴァー(阿部)が遠く離れたアメリカからかけてきたのだった。二人は1983年の夏に過ごした北イタリアの避暑地での日々を思い出していく。

17歳のエリオは、毎年両親と共に夏休みと冬休みを北イタリアの別荘で過ごしていた。夏休みの期間は考古学の教授である父の手伝いに大学生がくるのだが、今年はアメリカから24歳のオリヴァーがやってきた。最初、エリオはオリヴァーを疎ましく思うのだが、徐々に惹かれ、オリヴァーもまたエリオに惹かれていくのだった。

少しの接触でも気持ちが抑えきれなくなった2人は、想いを確かめ合い恋に落ちていく。2人で過ごすことで今までになかった感情が溢れていくエリオに、オリヴァーは「君の名前で僕を呼んで、僕の名前で君を呼ぶ」とささやく。お互いの名前を呼び合い幸せな時間を過ごすが、オリヴァーがアメリカに帰る夏の終わりが近づく・・・。

朗読劇は、映画『君の名前で僕を呼んで』の良さが濃縮された仕上がりだった。映画と比べ本作の登場人物は2人のみなので、どのように物語が進むのかと思ったが会話やモノローグで周りの情景や登場人物を自然に表現。後半、エリオの父親とのシーンをどう描いているのかも楽しみにしていただきたい。また映画ではエリオの心情を中心に描かれているように見えたが、本作ではオリヴァーの心情も描かれており新鮮に映る。

映画では美しい北イタリアの風景が印象的だったが、本作も各場面での照明や電球のライトなどで舞台を美しく彩る。ステージの中心には、映画にも出てきた別荘のプール(噴水)モチーフ。その縁に醍醐と阿部が腰掛け、朗読劇は進行する。

基本的に二人は座ったままなのだが、二人が心を通わせる姿ではプールを使用した動きがあり、より効果的に心情を表現。また、醍醐と阿部が映画『君の名前で僕を呼んで』のポスターのエリオとオリヴァーをイメージした赤と青の衣裳を身にまとっているなど、細かなところまで映画へのリスペクトを感じた。

また生演奏で奏でられる音楽も素晴らしい。繊細に紡がれるピアノ、軽快にも情熱的にも姿を変えるギター、そして会場全てを抱きしめるドラマティックなヴァイオリンが「朗読劇」としての『君の名前で僕を呼んで』の世界観を構築する。エリオがピアノを弾くシーンでは実際にピアノの演奏が連動するのも楽しい。やはりピアノの音色はエリオ、ギターの音色はオリヴァーだろうかと考えてしまうのだが、曲ごとに様々な側面を見せるのも楽しい。

そして、何とていっても2人の俳優の、表現力の豊かさ。10代の時に新海誠監督のアニメ映画『天気の子』で主演を務めている。醍醐にとって本作は『天気の子』ぶりの“声の演技”に焦点をおいた作品だ。醍醐の青年だが少年さも残る声は、まだ大人になりきれていないエリオの危うさにはぴったりで、より庇護欲を掻き立てられた。

しかし本作で醍醐は声の演技だけではないことを証明した。朗読劇なので動きは少ないがエリオの溢れる感情が痛いほど伝わってきた。特にラストシーン、台詞が一切ないのに醍醐から目が離せなくなる。

そして終始、阿部の演技は醍醐に寄り添い支えていた。阿部の余裕ある包容力には、実際の年齢差以上に“お兄さん感”があった。余裕がありそうで、実際にはエリオへの恋に戸惑い浮足立つ阿部の等身大の青年像は、爽やかなときめきをもたらす。

第2部では『スッキリ』などでもお馴染みの映画ライター・よしひろまさみちの司会で、醍醐と阿部による映画スペシャルトークが開催される。第1部の余韻が残ったまま『君の名前で僕を呼んで』という作品に存分に浸れるだろう。

朗読劇を見て映画を鑑賞したくなったら、2月に1週間限定で映画『君の名前で僕を呼んで』が上演されるので、ぜひ足を運んでみては。

第1部の朗読劇は約70分、第2部は約20分を予定(途中休憩なし)。

(取材・文/一本柳歌織、撮影/エンタステージ編集部1号)

目次

『君の名前で僕を呼んで ~5th anniversary~』公演情報

上演スケジュール・チケット

2023年1月27日(金)~1月29日(日) 恵比寿ザ・ガーデンホール

<チケット>
ローチケ:https://l-tike.com/kimiboku5th

スタッフ・キャスト

【原作】君の名前で僕を呼んで
【脚本・演出】岡本貴也
【音楽監督】土屋雄作

【出演】
醍醐虎汰朗、阿部顕嵐

<演奏>
土屋雄作、永田ジョージ、眞鍋香我

内容

第1部:朗読劇『君の名前で僕を呼んで』
第2部:映画スペシャルトーク
【登壇】醍醐虎汰朗、阿部顕嵐 司会:よしひろまさみち(映画ライター)

映画『君の名前で僕を呼んで』あらすじ

1983年夏、北イタリアの避暑地。17歳のエリオは、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は大学教授の父の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮らす。はじめは自信に満ちたオリヴァーの態度に反発を感じるエリオだったが、まるで不思議な磁石があるように、ふたりは引きつけあったり反発したり、いつしか近づいていく。やがて激しく恋に落ちるふたり。しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく・・・。

公式サイト

【公式サイト】https://culture-pub.jp/cmbyn-5th/
【公式Twitter】@cmbyn_movie_jp

(C) Frenesy, La Cinefacture、(C) Culture Entertainment Co.,Ltd.
(C) Frenesy , La Cinefacture




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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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