2022年8月30日(火)に開幕するミュージカル『ピピン』。森崎ウィン主演で、再び日本版『ピピン』の物語が始まる。その稽古場より、レポートが届いた。
『ピピン』は、ボブ・フォッシー(ミュージカル『シカゴ』、映画版『キャバレー』など)による演出と振付で1972年にブロードウェイで初演された傑作ミュージカル。2013年には、フォッシーのスタイルを踏襲したダンスや、シルク・ドゥ・ソレイユ出身のアーティストが手掛けたスリリングなサーカスアクロバットなどを取り入れた新演出版で同年のトニー賞ミュージカル部門・最優秀リバイバル作品賞を含む4部門を受賞した。
日本では、2019年の日本語版を初上演。本作でトニー賞最優秀演出賞を獲得したダイアン・パウルスが演出を手掛け、城田優が主演を務めた。2022年夏の再演には、森崎に加え、キャサリン役に愛加あゆが新キャストとして参加。このほか、今井清隆、霧矢大夢、岡田亮介、中尾ミエ、前田美波里らが続投する。
『ピピン』あらすじ
若き王子ピピンは、美しくカリスマ的なリーディングプレイヤーが率いるアクロバットサーカス一座に誘い込まれる。一座が披露するのは、人生の目的を探し求めるピピンの壮大な物語。ミステリアスな陰謀、心温まる笑いとロマンス、奇想天外なイリュージョンに満ちた、永遠に忘れられないドラマが幕を開ける(Magic to Do)。
大学で学問を修めたピピンは、人生の大いなる目的を模索中。広い空のどこかに自分の居場所はあるのかと自問し、輝かしい未来を夢見ていた(Corner of the Sky)。父王チャールズが統治する故郷に戻ったピピンは、父に認めてもらおうと、戦への同行を志願する(War Is a Science)。しかしピピンは戦の空虚さに気づき、もっと別の<特別な何か>を求めて旅に出る。
「悩んでばかりで大切な時間を無駄にせず、人生を楽しみなさい」と説く祖母バーサ(No Time at All)。彼女に感化され旅を続けるピピンは、さまざまな愛のかたちを知るが、やがて心を伴わない愛は無意味だと悟る(With You)。戦に出ても、空虚な恋愛に耽っても、心は満たされないと知ったピピン。旅の最後に全てを捨てて彼がようやく見つけた本当の幸せとは・・・?
『ピピン』稽古場レポート
本番仕様の仮セットが組まれた稽古場に入ると、そこはまさにサーカス小屋のよう。至るところでトレーニングが行われている。息を吸うように繰り広げられるアクロバット。サーカス・レプリケーターのKai Johnson-Peadyが中心となって、技がブラッシュアップされていく。
最初に行われたのは、クリスタル・ケイが演じるリーディングプレイヤーのソロナンバー「SIMPLE JOYS」。サーカスチームによるバランスボールとフラフープを使ったアクロバットを、クリスタルの歌に併せて確認していく。クリスタルは「体が覚えていて結構スムーズに進んでいる」と余裕がありそうな様子。
次は、戦闘場面をナイフ投げと殺陣などで表現する「CAPERS」。ピピンを演じる森崎ウィンら全員で鼓舞しあい集中してスタート。ナイフ投げの間に入っていくタイミング、位置、順番を確認する。この場面の大技は人間縄跳び。プレイヤーのひとりが縄のようにぐるんぐるんと回されていて、それを別のプレイヤーが飛び越える。森崎も飛ぶ側のひとりだ。技が見事成功すると、全員でハイタッチ!
見ているだけで心拍数が上がる。森崎が自分の稽古以外に、腕立て、逆立ち、懸垂など、常に身体を動かしている姿も印象的。「待っている時間がもったいなくて、何かしていないと落ち着かない」という。
続いて、音楽スーパーバイザーのRyan Cantwellによる歌稽古。「Magic to Do」など全員コーラスのディレクションを行った。国王になったピピンを迎える「Morning Glow」について、Ryanは「みんなが一体になる、一番美しく歌えるナンバー。天国から降りてくる声のような」と説明。森崎の柔らかくしなやかな歌声と、コーラスの美しさと力強さがひとつになる。
次の稽古では、演出補Mahlon Kruseを中心にステージングが進められた。リーディングプレイヤーに見せられた新聞記事をきっかけに、父チャールズに反旗を翻す場面。 ピピンは農民たちを鼓舞して、革命へと促していく。「農民はひとり100人分演じると思って」とより熱量を求められる。続く場面は、ファストラーダがチャールズとピピンが対立するように企む場面。大きなBOXを使ったイリュージョンや、ナイフ投げも見どころで、よりスムーズに展開してメリハリがつくように、ブラッシュアップしていった。
最後の稽古は、ピピンとキャサリンの場面のステージング。森崎とキャサリンを演じる愛加あゆは新キャストなので、初めての場面を一から作っていた。2人から生まれてくる芝居がとてもナチュラルで引き込まれる。初演の芝居から変化する箇所もあり、どんなピピンとキャサリンになるのか楽しみになった。
稽古を終えた森崎は「楽しい!一番身体を使う舞台かもしれない!」と高揚していた。「今はパートごとにバラバラにやっているので、はやくみんなで一緒にやりたい。クリスタルさんとはいい関係性も出来てきているし、これからいい意味で、いろいろと仕掛けていきたい」と意気込んだ。一方、クリスタルは「ウィンピピンはかわいくてナチュラルにピュアさが出ていて、遊び心があるから本当にぴったり」と太鼓判を押す。「ピピンが変わることは私にとっても大きく、リーディングプレイヤーの見え方も変わるかも」と期待が高まる分析だ。2週間後の開幕が待ち遠しい。
ブロードウェイミュージカル『ピピン』は、8月30日(火)から9月19日(月・祝)まで東京・東急シアターオーブ、9月23日(金・祝)から9月27日(火)まで大阪・オリックス劇場にて上演される。
(取材・文/岩村美佳)
ブロードウェイミュージカル『ピピン』公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2022年8月30日(火)~9月19日(月・祝) 東急シアターオーブ
【大阪公演】2022年9月23日(金・祝)~9月27日(火) オリックス劇場
スタッフ・キャスト
【脚本】ロジャー・O・ハーソン
【作詞・作曲】スティーヴン・シュワルツ
【演出】ダイアン・パウルス
【振付】チェット・ウォーカー(in the style of Bob Fosse)
【サーカス・クリエーション】ジプシー・シュナイダー(Les 7 doigts de la main)
【出演】
ピピン:森崎ウィン
リーディングプレイヤー:Crystal Kay(クリスタル ケイ)
チャールズ:今井清隆
ファストラーダ:霧矢大夢
キャサリン:愛加あゆ
ルイス:岡田亮輔
バーサ:中尾ミエ/前田美波里(Wキャスト)
テオ:高畑遼大/生出真太郎(Wキャスト)
加賀谷真聡 神谷直樹 坂元宏旬 茶谷健太 常住富大 石井亜早実 永石千尋 伯鞘麗名 妃白ゆあ 長谷川愛実 増井紬
<スペシャルゲスト>
ローマン・ハイルディン ジョエル・ハーツフェルド オライオン・グリフィス モハメド・ブエスタ エイミー・ナイチンゲール
【公式サイト】https://www.pippin2022.jp