2022年7月4日(月)に東京・京建物 Brillia HALLにて音楽劇『クラウディア』Produced by 地球ゴージャスが開幕した。初日先立ちプレスコールと取材会が行われた。
『クラウディア』は、岸谷五朗・寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」によって故・本田美奈子らの出演で2004年に初演され、2005年に地球ゴージャス10周年記念の際にアンコール上演された作品。岸谷の「反戦三部作」の第1作目で、桑田佳祐が書き下ろした「FRIENDS」ほか、サザンオールスターズの数々の名曲で綴るジュークボックスミュージカルとなっている。
今回の上演にあたり、脚本を2022年版として書き直し、歌・ダンス・殺陣をふんだんに取り入れ、新たな美術・振付・演出で壮大なスケールに創り上げた。また、過去の公演ではファッションデザイナーの故・山本寛斎が衣裳を手掛けたが、今回、寛斎氏亡き後、そのクリエーションを引き継いだ山本寛斎事務所が再び衣裳デザインを担当し、装いを新たな『クラウディア』を生んでいる。
プレスコールには、開幕2日目となる7月5日(火)に初日を迎えるキャストたちが登場。物語の舞台は、戦いに明け暮れる「根國」と「幹國」という2つの民族しかいない世界。そこでは、神親殿(カシンデン/演:湖月わたる)という神によって「愛すること」を禁じられていた。しかし、「根國」一の剣豪・細亜羅(ジアラ/演:大野拓朗・甲斐翔真 ※Wキャスト)と「幹國」の歌姫・クラウディア(演:田村芽実・門山葉子 ※Wキャスト)は、掟に背き恋に落ちてしまう。
「幹國」の長・毘子蔵(ヒコゾウ/演:廣瀬友祐・小栗基裕 ※Wキャスト)とそして対立する「根國」の長・ヤン(演:上山竜治・中河内雅貴 ※Wキャスト)らは、日々ぶつかり合う。しかし、「幹國」随一の女戦士・織愛(オリエ/演:美弥るりか)は争い続けることに疑問を抱く・・・。
終わりの来ない戦いの日々に、龍の子(演:平間壮一・新原泰佑 ※Wキャスト)が目を光らせる中、民族を超えて密かに育まれる愛、そして、自覚せぬままお互いを想い合う愛。二つの愛はやがて、その「世界」そのものを揺るがすことになっていく・・・。
披露されたのはヤン(中河内)、毘子蔵(小栗)、織愛(美弥)が「♪恋のジャック・ナイフ」を歌い踊るオープニングシーン、細亜羅(甲斐)とクラウディア(門山)が一時の逢瀬で歌う「♪真夏の果実」、神親殿(湖月)と龍の子(新原泰佑)が圧倒的パワーを放つ「♪愛の言霊(こどだま)~Spiritual Message~」の3場面。サザンオールスターズの楽曲が持つパワーが、作品と共に新しい響きを持って昇華され、心に訴えかけてくる。
岸谷が「反戦三部作」の一つとして作り上げた作品が、再び幕を開ける時、世界情勢が混迷を極めている今、上演されるとは。偶然のタイミングが、本作に込めたメッセージ性をより色濃く浮き上がらせる。世界も国も、一つ一つの命と意思と想いが積み重なってできるものだ。誰かを大切に想う先にある、“平和”の形を考える。
取材会レポート
取材会には脚本・演出・振付を手掛けた岸谷と、出演する大野・甲斐(Wキャスト)、廣瀬・小栗(Wキャスト)、田村・門山(Wキャスト)、美弥、上山・中河内(Wキャスト)、平間・新原(Wキャスト)、湖月わたると、プリンシパルキャストがずらりと勢揃いした。
まずは、大野が「この作品は“和製シェイクスピア”こと五朗さんが深いメッセージ性を込めて書かれています。そんな強くてロマンティックで素敵な脚本を、アンサンブルのみんなが全身全霊で表現してくださっています。その熱量に触発され、ここにいる全員でもっともっと高いところを目指して熱を伝えていけたらいいなという思いでおります。ダンス・歌・殺陣、いろんなところを五感で楽しんで頂ける珠玉のエンターテイメント作品として昇華されていると思います。その思いをお客様に伝えられるように、突っ走っていきたいと思います」と熱く挨拶。
続く甲斐も「まだ地球ゴージャスの舞台に立つという実感がないくらい光栄な経験をさせて頂いております。地球ゴージャスという名のとおり、“地球”を“ゴージャス”にできるように、今を生きる僕らに向けて自分たちを称え合うような時間になればいいなと思っております」と語った。
廣瀬と小栗は、短いがそれぞれインパクトのある一言を。廣瀬が「本日はありがとうございます」と述べた後、キリリとした表情と一段と大きな声で「一生懸命がんばります、よろしくお願いいたします!」というと、小栗は「作品では愛が禁じられた世界が描かれていますが、このカンパニーは五朗さんはじめ、スタッフ、出演者の皆さん、本当に愛に溢れたチームです。その愛の力がお客様に届くように全力でがんばります」と一礼。
タイトルロールのクラウディアを担う田村は「今日に至るまで、自分のすべてをこの作品と役に捧げてやってきたつもりです。あとはカンパニーの皆さんと心を一つにして作品をお届けするだけです」と思いを溢れさた。
一方の門山は「いよいよこの作品を皆様にお届けできるのだと、とてもワクワクドキドキしています。作品を作っていく中で、五朗さんはじめスタッフ・キャスト皆さん、みんなの愛を感じて、私は初日を迎えるまでがんばってこれたと思います。その私たちの愛が皆様に届くように、心に何か残る作品をお届けできたらと思っております。
美弥は、ある思い出を語った。「実は4年前、地球ゴージャスさんの舞台を初めて観劇させて頂いた際に岸谷さんと寺脇さんの楽屋にご挨拶に伺いました。絶対覚えていらっしゃらないと思いますが、その時に『いつか地球ゴージャスで共演しましょう』と言ってくださったんです。夢のような言葉をかけてくださったことに感激し、『いつか叶うといいな』とひそかに夢を抱いておりました。その夢が叶って今日、初日を迎えられることをとても嬉しく思います。その時の気持ちと共に、このカンパニーのみなさんと千秋楽までがんばって参りたいと思います」と、念願の舞台に胸一杯の様子。
そして、上山は「五朗さんが熱い思いで反戦作品を作られたということで、自分も全力で戦うことで戦うことの儚さを届けていけるようにがんばります」、中河内は「世界平和と安全第一を目標にがんばります!」と役柄を想像させるまっすぐなコメントをした。
平間と新原は、アミューズの“ハンサム”先輩後輩。地球ゴージャス経験者でもある平間は「他の舞台をやっている時に『千秋楽って寂しいなぁ』と五朗さんの前で言ったことがあるんです。すると、五朗さんは『舞台は千秋楽がある、終わりがあるからいいものなんだよ』と言ってくださって、なるほどな、と思いました。千秋楽だけじゃなく、一日一日が終わっていってしまうものだと捉えると、一公演一公演を全力でやらなきゃいけないんだと、今回、五朗さんの顔を見て改めて思いました。『クラウディア』という世界観が一日一日、終わってしまうという寂しさを抱えながら、一つひとつの台詞を大事に、この公演期間を全力で挑みたいと思っています」と柔らかな口調で語った。
一方、地球ゴージャス初参加の新原は「こうして初日が迎えられたことを、とても嬉しく思っております。公演に関わるすべての皆様と、一公演一公演大切に作り上げられたいいなと思っております。よろしくお願いいたします」と深々と頭を下げた。
創造主という大きな役どころを担う湖月は「稽古場でこの作品の持つパワー、意味をひしひしと感じながら、18年前客席で受けた感動を何度も思い出しました。今回、稽古場で汗と筋肉痛と戦いながら・・・私は残念ながら戦っていませんが(笑)。劇場に入って、こんなに素晴らしいセット、照明、素敵なコスチュームをまとわせて頂いて、たくさんのエネルギーを得て、本日の初日よりお客様に何かを得て頂けるように心を込めて演じていきたいと思っております」と終始笑顔だった。
地球ゴージャス主宰、脚本・演出・振付を担当した岸谷は「つくづく役者ってすごいなと思っています。役とひと月以上対面し、背負い続けた役者はこんなにもかっこよく、人間として二倍も三倍も輝くんだと、日々感じ、初日を迎える今、改めて感動しています」と感無量のコメント。
「18年前には僕自身も出演しましたが、1日2回公演ができない芝居です。・・・美弥さんとわたるさんは1日2回やることになりますが、逃げ出さないように(笑)!」と檄を飛ばしつつ、「素晴らしい人たちが集まってくれて、『クラウディア』という作品が生まれ変わりました。新しいものになりました。2022年、今こそ発表しなければいけない作品だと思っています」とかみしめるように語った。
質疑応答では、まず大野・甲斐・田村・門山に「今回の役を演じるにあたり、大事にしていることは?」という質問が出された。すると、大野は「まっすぐ、熱く、純粋に、というところですね」と甲斐の顔を覗き込み、甲斐と目を合わせ「この3点が大きい気がします。純粋だからこそ、気付けることがあったのかな。真っ白なキャンパスだからこそ影響を受けやすかったし、受けられたかなと。周りのものを全部背負いながら、もらいながら、でも自分の意思を貫き通す。それは最終的に気付くというところもあるんですが、まっすぐさや純粋さがキーになるんじゃないかと僕は思っています」と話した。
一方、甲斐は「個人的にというよりは作品全体に物語をどう届けようかというところで、愛を禁じられた世界をどう皆様に感じてもらうか。愛が禁じられているからこそ、愛が欲しくなったりするという、五朗さんが作られたフィクションの世界だけれど他人事には思えない自分がいます。人や愛は僕らとは変わらないのに、ただ文化や思想が違う世界でこんな悲劇が起こってしまうという。そして愛の持っている可能性を感じられたらいいなと、感じてもらえたいいなと思っています」と回答。
田村は、慎重に言葉を選びながら「愛のない世界で愛を知っているクラウディアですが、この作品の稽古の中で“愛=心だ”と感じています。稽古場や台本を開いているとき以外も、いろいろなことに心を動かして肌で感じることをとても大切に、世の中のいろんなことをキャッチしよう、感じようと今日まで生きてきました」と話すと、その生真面目すぎる口調に微笑ましいと笑いが起きた。
門山は「クラウディアがときめく心、ときめく瞬間を大切に演じたいなと思っています。もちろん、神親殿様への愛もそうだし、この愛を禁じられた世界で愛を知った時の喜び、ときめき、その愛を知ったからこそ新たな発見があって、そこに心の高鳴りを感じた。クラウディアが感じた心の高鳴りを、ときめきを一緒に捕まえて忘れないようにクラウディアと一緒に舞台で生きられたらなと思っています」と話し、その口調に「元気!」と声が上がった。
廣瀬・小栗には「2003年・2004年の公演で同じ役を演じた岸谷から稽古場でかけられた印象的な言葉は?」という質問が投げかけられた。廣瀬が「役に対しての細かい指示やアドバイスはたくさん頂きましたが一番印象に残っているのは、毘子蔵が二幕後半、クライマックスに向かっていく中で、かっこよくおいしい登場の仕方をするシーンがあります。稽古場の最終通しが始まる直前だったかな?五朗さんが(僕たち)W毘子蔵に寄って来て『あそこのシーン、最高に気持ちいいぞ!』と最高の笑顔で言ってくださったのが、本当に気持ちよかったんだろうなと思いました(笑)。だから僕らもそのシーンで気持ちよくなれるように板の上で生きたいと思います」と話すと、小栗も「ね~、気持ちいいよね」と言って、廣瀬と二人で頷き合った。
さらに小栗は「僕はシーンごとにやっていく中で、毘子蔵として必要なのは何よりも長としての強さや熱量、民衆たちを率いていくパワーだと言われたので、それを忘れないために、台本の表紙にでっかく赤いペンで“エネルギーMAX”“声を大きく”と書いて常に思い出せるようにしております」と話し、その台本を見たことがあるのだろうキャストたちの笑いを誘っていた。
宝塚歌劇団を退団して初のラブシーンに挑戦している美弥は「言われてみて初めてだなと思いました。ですが、そのシーンがかなり必死な状況なので、ラブシーンという意識があまりなかったというのが正直なところではあります。相手となるのは毘子蔵役の廣瀬さんと小栗さんですが、どちらも全く異なる役作りで、実際のおふたりの温かさなどがにじみ出ていて、どちらもすごく素敵な毘子蔵さんなので、おふたりとそのシーンを一緒に大切に作っていけたらいいなと思っております」と廣瀬、小栗と顔を見合わせながら話した。
稽古場での様子を聞かれた中河内が、「(役柄が)長なのでひっぱっていかなきゃと思って・・・見た目も強いイメージがいいなと思って引き出しの中から一番小さいTシャツを選んでピチピチで筋肉を強調して稽古に挑んだんですが」と話し出すと、他のキャストたちは爆笑。
上山は「ひっぱっていこうと思ったら、タップも歌も殺陣もあるし、思いのほかたくさん、覚えることがあって、逆に足をひっぱる形になってしまって。でもちゃんと稽古して、それが全部通った時には楽しくて、早く舞台に立ちたいという気持ちでいっぱいになっております」と話し、「どうですか?」と反対側に立つ中河内に尋ねた。
これに対し、中河内が「竜治のヤンは、根国のみんなに支えられて稽古場でいい感じのチームワークを出していたなと思います。僕は元からこういう感じ、オラオラの俺についてこいタイプなので・・・いや、仕事は、です。プライベートは全然ですけれど」と言うと、キャスト陣は再び爆笑。
中河内は続けて「プライベートはすごく温厚で優しいです。仕事は戦場だと思っているので、こういう役でもあったので厳しめに稽古場を過ごそうかなと思っていたのですが、根国の皆さんの、個々の能力が高過ぎて『あ、そういうの要らないな』と思いながら稽古途中からみんなと打ち解け合って、今ではダンス・芝居・殺陣のことと、いろんなことを話し合って作品を高めるために切磋琢磨しています。なんとか、この作品が自分たちの力でももっと良くなるように努めているので、自分の役柄が長だからというのは関係なく、一人ひとりがリーダーシップを発揮してやっているのがすごく素敵な光景で、いいカンパニーになりつつあると思っています」と語った。
龍の子を演じる平間・新原には「龍の子を演じる上で、気を付けていること、大切にしていることは?」との質問が出た。平間が「総合芸術ということで、芸術とは人が考える時間を与えられることだと読んだことがあります。お芝居を見て、舞台セットを見て歌を聞いて衣装がこんなので・・・と、お客様にそれについて考える時間が芸術ということ。台詞には出てきませんが、同じとげとげのマフラーみたいなのをみんなが付けていて『それってことは神親殿が与えているのかな』とか、お客様の想像がどこまでも広がる舞台だと思います。龍の子を演じる上で、感情の押し付け、ストーリーはこうなんだという押しつけにならないように演じようというのは意識しています」と話すと、キャストたちもマフラーを見ながら口々に「確かにね」と反応。
新原は「お稽古で試行錯誤はしてきたのですが、劇場に入ってセットを見て気持ちが変わったりもしました。龍の子という異質な存在、正体が分からないようなキャラクターを演じる上で、体の動かし方や指先にいたるまで意識を強く持とうと思って大事にしています」と話した。
湖月からは、「岸谷さん新演出のもと、役者一人ひとりのエネルギーが炸裂する姿が大きな見どころだと思います。その中の愛の物語ということで・・・見てください、細亜羅とクラウディアの身長差カップル!このおふたりが繰り広げるまっすぐな愛!胸キュンポイント、満載です。そして、かっこいい毘子蔵と織愛の切ない愛!心をぎゅっとわしづかみにされます。必見です!そして、ヤン様。大人の男の色気漂うふたりが、チラッっと見せるお茶目な姿、どうぞお見逃しなく!竜の子のふたりの身体能力を活かしての研ぎ澄まされた演技にもぜひ、ご注目頂きたいと思います」と見どころを紹介。その完璧なコメントにキャストたちからは自然と拍手が沸き上がった。
最後に岸谷が「ほんとにドキドキです。怪我が無いように、みんなでがんばりましょう。ここまでの稽古でとっても幸せな作品になっています。この『クラウディア』という作品で山本寛斎さんとも初めて仕事をし、僕にとって演劇の天使・神様となった本田美奈子さんが最後に演じた作品でもあります。新しい演劇をやる時に空を見上げて『ふたりに恥じないものをつらなきゃ』といつも自分に喝を入れ進んで参りました。素晴らしいスタッフ・キャストのおかげでいい作品になっています。是非劇場にお越し頂きたいと思います。よろしくお願いいたします」と呼びかけた。
音楽劇『クラウディア』Produced by 地球ゴージャスは、7月24日(日)まで東京・東京建物 Brillia HALL、7月29日(金)から7月31日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。上演時間は第一幕60分、休憩20分、第二幕85分の計2時間45分を予定。
(取材・文/犬塚志穂、写真/オフィシャル提供)
音楽劇「クラウディア」Produced by 地球ゴージャス 公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2022年7月4日(月)~7月24日(日) 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【大阪公演】2022年7月29日(金)~7月31日(日) 森ノ宮ピロティホール
スタッフ・キャスト
【脚本・演出】岸谷五朗
【主題歌】サザンオールスターズ「FRIENDS」
【楽曲協力】タイシタレーベル/ビクターエンタテインメント
【衣裳】山本寛斎事務所
【ヘアメイク】冨沢ノボル
【振付】原田薫 大村俊介(SHUN) 藤林美沙
【殺陣】島口哲朗(剱伎衆かむゐ)
【出演】
大野拓朗/甲斐翔真(Wキャスト) 廣瀬友祐/小栗基裕(Wキャスト) 田村芽実/門山葉子(Wキャスト)
美弥るりか 上山竜治/中河内雅貴(Wキャスト) 平間壮一/新原泰佑(Wキャスト) 湖月わたる ほか
【公式サイト】https://www.claudia2022.com/