2022年6月3日(金)より東京・東京ドームシティ シアターGロッソにてジュエルステージ「オンエア!」が上演される。出演するのはフレッシュな30名の若手たち。“宝石の原石”ともいえる彼らが、切磋琢磨する稽古場の様子と演出を手掛ける伊藤マサミを取材した。
本作は、株式会社colyから配信されたスマートフォン向けアプリゲーム、スター声優育成アプリ『オンエア!』を原作とした舞台作品。2020年10月にサービスを終了するも、プロジェクトを愛するファンは今もなお多く、新規書き下ろしシナリオでボイスドラマCDの販売が予定されるなど、広がりを見せている。
物語の舞台は、多くのスター声優を輩出してきた全寮制の名門高校・宝石が丘学園。20年ぶりの女子生徒として入学した「特待生」によって、30人の声優たちは一つにまとまり、伝説のイベント「グラン・ユーフォリア」の開催を目指していた。夢のステージで、【MAISY】【Prid’s】【Hot-Blood】【Re:Fly】【エメ☆カレ】【drop】とユニットごとの個性を発揮。順調だと思った矢先、思いもよらぬトラブルが・・・。
【MAISY】光城新多役にきたつとむ、【Prid’s】輝崎千紘役に今井俊斗、【Hot-Blood】雅野椿役に三原大樹、【Re:Fly】青柳帝役に長塚拓海、【エメ☆カレ】雛瀬碧鳥役に白石康介、【drop】橋倉杏役に坂下陽春と、各ユニットのエースはフレッシュな顔ぶれ。
このほか、北乃颯希(舞台『刀剣乱舞』、『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageなど)、吉澤翼(『テイルズ オブ ザ ステージ-光と影の正義-』、RICE on STAGE『ラブ米』など)、正木郁(5次元アイドル応援プロジェクト「ドリフェス!」、舞台『プレイタの傷』など)、川上将大(舞台『ギヴン』、ミュージカル『薄桜鬼』など)といった面々がカンパニーを支えている。
取材を行ったのは、初めて通し稽古が行われた日だった。人数が多い公演ということもあり、マスクだけでなく、ゴーグルも着用と、入念な対策をした上で出演者たちが集まる。換気もバッチリだったが、稽古場には緊張と期待が入り混じった熱い空気が流れていた。
舞台の隅々まで見ようと思ったら際限がないが、本作にはその際限のなさに拍車をかけるような、大所帯の舞台ではなかなかないチャレンジに満ちた演出が施されていた。ご覧になった方は、絶対にこう言いたくなるだろう。「目が足りない」と。こだわりを感じる試みからは、若手を“原石”と名付けた作り手からのエールと愛情を感じる。
通し稽古後に、演出の伊藤から全員に投げかけられた「ドラマを生み出そう」「お客様のワクワクを想像しよう」という言葉が印象的だった。模索する若者たちの歯車が噛み合った時、それは“群像劇”としての強度を増すのだと思う。通し稽古では、俳優たち、ユニット、ひいてはカンパニーができることの一歩先を目指して切磋琢磨している様子が伝わってきた。
オーディションをくぐり抜けて役を得るということは、ゴールではなくスタートだ。掴み取ったチャンスをどう活かし、観客の心の琴線に触れるのか。昨今、「推し」という言葉が定着してきたが、「推したい」と思う時はどういう瞬間に訪れるのか。未完成は可能性であり、希望だ。彼らの努力が、原作を愛するファン、舞台を楽しむ方の目にどのように映るのか楽しみだ。
本作の演出を手掛ける伊藤は、進戯団 夢命クラシックスを主宰し、演出家として様々な作品を手掛けてきたが、芝居への道の始まりは「声優になりたい」という夢だったそうだ。「“声優”という職業が、今でこそ華やかなイメージで注目されているのは、先輩の方々が強固な柱と立派な土台を築いてくださったからだと思うんです。更には、こうしてゲームの題材にもなっていることにも時の流れを感じますし、その舞台化も時代にマッチしたものになるんじゃないかなと思っています」と、『オンエア!』の舞台化について語る。
芝居経験の浅いキャストが多かったが、「芝居のことだけでなく、演出補佐の友花さんが手厚くサポートをしてくれました。彼女と演出助手の長谷川さんが、この作品のMVPですね!もちろん他のスタッフも全員ベテラン揃いですから、縁の下の安定感は卓越したものでした」とスタッフを讃えつつ、「彼らも真摯に向き合って、稽古初日から考えると目覚ましい進化を遂げていますね。若いから吸収力もあるし、すごく成長を感じています」と、濃密な時間になっていることを伺わせた。
スタッフ一丸となって、若手を育成している中で、伊藤が投げかけていた「ドラマを生み出そう」という言葉。その裏には、伊藤の熱い想いがあった。「僕は、体の動きから、視線や歩数まで、出来うる限り僕自身で決め込んでしまいたいタイプの演出家なんです。でも、今回に関してはあんまりそういうことはしていません。彼ら自身が発見し、主体的に生み出す。僕が言ったことに対して動くのではなく、自分で発想して、仲間と一緒に関わり合って産みの苦しみの中から表現を見つける。その方が、絶対に財産になるから。これはもう、親心に近いのかも(笑)」。
もちろん、エンターテインメントな演出を得意とする伊藤ならではの、メリハリはしっかり効いている。「演劇って、どんな作品であれ、客席と舞台上が一緒になって作り上げるものだと思うんです。この作品のコンセプトと手法は、そこにばっちりハマったものになっていると思います」と、ショーとしての楽しい作りになっていることも匂わせた。
そして、「役者と一緒に、このジュエルステージも成長していけたらいいなという想いがあります。初めて舞台を観る経験をしてくださるお客様もいたら嬉しいです。今の時代、何かと元気がなくなることも多くあると思うんです。でも、生の人間が放つパッションには、見る人に元気を与える力があると僕は思います。だから、“元気をもらいに行う!”みたいな気持ちで、劇場に足を運んでいただけたら。きっと彼らが全力で迎えてくれます!“パワーもらえた!”と思っていただけたら嬉しいです!」と太鼓判を押した。
あなたの目は、どの原石のきらめきを捉えるだろうか。宝石として磨き抜かれていく未来を想像しながら、開幕を待ちたい。
ジュエルステージ「オンエア!」は、6月3日(金)から6月12日(日)まで東京・東京ドームシティ シアターGロッソにて上演される。
なお、初日の6月3日(金)19:00公演、千秋楽の6月12日(日)18:00公演では、ライブ配信が実施される(2週間のディレイ配信付)。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
ジュエルステージ「オンエア!」公演情報
上演スケジュール
2022年6月3日(金)~6月12日(日) 東京ドームシティ シアターGロッソ
スタッフ・キャスト
【原作】『オンエア!』/coly
【脚本・作詞】浅井さやか(One on One)
【演出】伊藤マサミ(進戯団 夢命クラシックス)
<キャスト>
【MAISY】
光城新多:きたつとむ
森重優那:嶋崎裕道
愛澤 心:大見洋太
黒曜 護:結城伽寿也
神谷 祈:藤希 宙
【Prid’s】
輝崎千紘:今井俊斗
一色 葵:野島大貴
櫻井百瀬:松井健太
吉條七緒:北乃颯希
輝崎 蛍:阿部冬夜
【Hot-Blood】
雅野 椿:三原大樹
加賀谷 蓮:野口友輔
鳥羽 霞:戸舘大河
橘 央太:吉田拓也
藤間 鈴:阿部大地
【Re:Fly】
青柳 帝:長塚拓海
夜来立夏:飯塚智基
浮間志朗:宮内伊織
辺見 宙:小椋涼介
天橋幸弥(コスモ):吉澤 翼
【エメ☆カレ】
雛瀬碧鳥:白石康介
見明佐和:正木 郁
小野屋あずき:大友至恩
天神陽人:大久保 樹
冠 嵐真:安部 瞬
【drop】
橋倉 杏:坂下陽春
白雪 零:赤間頼依
雨知祭利:北原十希明
美和 巴:中三川歳輝
【講師】
荒木 冴:川上将大
【公式サイト】https://onair-stage.com
【公式Twitter】@onair_stage
(C) coly/ジュエルステージ「オンエア!」製作委員会